表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

要塞と艦隊 3話

 目を覚ますとそこは……。

 軽く見まわすと薄暗い洞窟の中かと思ったが。

 俺は石造りの寝台のようなところで寝ていた。

 あえて言えばなんとなく牢屋みたいな感じだな。

 夢からリアルに復帰したと思ったが……まだ夢だった。

 そんな感じか……。


「どう? 調子は?」

「おお!?」


 いきなり背後の死角から声を掛けられた。


「はい?」

 そこに立っていたのは、見たこともない。

 なんだか見た目が戦闘的な女だった。

 俺をみて微笑みかけている。


 だいたい、なんで薄暗い洞窟チックな部屋で黒い軍服みたいな服着た女が……。

 とか俺が思ったときに、その女はいきなり言った


「……割と簡単だったでしょ? 赤ちゃん出来ちゃう事とか」

「ええ!?」


 なん? ……だと?


「ここは……。まぁ、スタート地点だと思って。」

「ちょっとまてい! なんだ赤ちゃんとか。サラッと流すなッ!」

「えー? だってマリスとゴニョゴニョしたじゃん。だからマスターはここにいるんだよ」


 女は浮かべていた微笑みを、にやけ顔に変化させながら俺に近づいてくる。

 なんだこの女!?

 なんなんだこの状況は?

 と言うか、知らんうちに赤ちゃん出来ちゃうような事をしたような発言をされるのも怖い。

 ……確かに、なんだか夢の中で初対面の女子と何かあった気がするが。

 ……いや大丈夫だ。

 いま下半身的に確認した。


 出してない。


 ……たぶん。

 

 と、言うか。なんで俺はパンツ一丁でこんな所にいるんだ?


「なに? どうした黙っちゃって」

「ちょ、ちょっと待て。いま考えをまとめる」


 俺は考えた。

 状況を整理しないとダメな夢とか困ったことだが、仕方ない。

 ①ゲームしてた ②眠くなった ③夢を見た ④……今

 ……ダメだ。訳が分からない。


 夢であることがベストだが。

 そろそろ夢のせいにするには生々しすぎる全ての感覚が怖い。

 この空間は、なんだかヒンヤリする。 

 そして匂いもする。薔薇なのか百合なのかしらないが、そんな感じの花の香。

 どうやらそれは目の前の軍服女から漂ってくるようだ。

 俺は、地面を見ながら足を踏ん張ってみた。

 固い地面。これは石材ではなく踏み固められた土に見える。

 ……これがひょっとして、アニメとかで言う所の異世界転移ってやつなのか?


 しかし。

 何かがおかしい。


 俺は、異世界に転移した経験は無いが。

 何らかの違和感を、嫌な予感をともなって感じている。

 その違和感がなんなのか俺自身に説明できずに。なんだかモヤモヤするぜ。


「……」

「でも。マスターは只者ではないはずだよ。選ばれたのだから」


 なにが『でも?』なんだ? 

 で、なんで選ばれたとかなんだ?


「あ! 私はラグナロク。 ごめんなさいマスター自己紹介がおくれて」

「ん……んー」


 俺の思惑とか完全無視でこのラグナロクとかいう女は話してくる。

 よく見ると、この女は夢にでて来たマリスカレンと外見が少し似ている。

 バラ色の瞳が俺を見て揺らいでいる。

 髪の色は、ややこちらが濃いが同系統の銀髪だ。それを短くポニーテールにしていた。

 そして黒を基調に銀やブルーの装飾が散りばめられた軍服チックな装い。


「……どこかで」

 そう。

 俺は、このラグナロクをどこかで見たような気がして来ている。


 どこだ? なんだ? だいたいラグナロクとかいう名前は、北欧神話ベースの名前だろたぶん。

 わからん。

 とにかく情報が足りない。俺はラグナロクからの聞き取りを決めた。

 この女と不必要な接触をしたために夢から目覚めることが出来ないとか。

 異世界から帰ることが出来ないとかのリスクが恐ろしいが。

 このままでもマズイ気がする。


「ここは何処だ? なぜ俺をマスターとか呼ぶんだ? というか。俺は誰なんだ?」

「んー?」


 今度はラグナロクが考えはじめた。


「初対面の俺を、いきなりマスターとか呼び。そしてマリスカレンの事を言っていたな?」

「うん」

「順番に説明してもらおう。まずはここは何処なのか、それからだ」

「えーとね。ここはワスレナの森にある古い神殿の遺跡の中」

「……」 


 期待した答えではないが。地名らしき名称が出てきた。

 それとこの洞窟めいた空間はどうやらなんらかの遺跡らしい。

 突っ込んで聞きたいことは山ほどあったが。俺は次の質問に移った


「で。次は俺をなぜマスターと呼ぶんだ? それと俺は誰なんだ?」

「マスターはマスターだよ?」

「……説明が難しいが。なんだか記憶が混乱している。俺は自分の名前も思い出せない」


 ラグナロクは少し困ったような顔をして回答してきた。


「それは。あれだよマスター! きおくそうしつ ってやつだよ」

「そうなのか? と言うか、日本語上手いな」


 そういえば、なぜ日本語で話せているんだ俺たち。


「いや、わたし言語日本語にして話しているし」

「……どういうことだ?」

 俺は即座に説明を求めたが。ラグナロクはとぼける様に言った。


「と、とにかく。記憶喪失……じゃ、ないかなぁ? たぶん? 知らないけど」

 あいまいな表情で答える女は、いつもなにか怪しい。

 謎は深まるが、記憶の混乱についての可能性が一つ提示されてきた。


 記憶喪失なのか?

 俺が俺であることを自覚している。

 性別は、下半身的にたぶん男だ。

 ラグナロクとかいう名前が、北欧神話由来ではないのかなどの知識を使った推測も出来る。


 だが名前が思い出せない。というか、俺に関する情報が思い出せない。

 親や兄弟という言葉を知っていても。俺の、親や兄弟の名前も記憶もない。

 俺自身の年齢や身の上も思い出せない。

 子供ではない気がするが、大人なのかと思うと俺自身なんだか心もとない。

 鏡も無いので自分の外見も確認できない。

 その上に記憶がほとんど無いのだ。


 しかし。俺はフォートレス&フリートというゲームをしていたのは覚えている。

 自分の部屋にいたことも覚えている。ゲームのパスワードも覚えている。

 なんだか。

 

 誰かに記憶を部分的に引っこ抜かれているような気持ちだ。


 怪しすぎる。

 しかし藪をつついて何も得られない場合も考慮して、ここは深く突っ込むことを俺は避けた。 


「わかった。仮に俺が記憶喪失としてだ」

「うん」


 ラグナロクは今は真剣にこちらを見ている。

 ……なにかボロを出さないように気を付けているようにも見える。

 なにか騙されているような気もするが。とにかく情報を集めよう。

 疑っていてはきりが無い。


「マスターとは、なんだ?」

 考えろ俺。

 この質問に対する答えをよく吟味して状況を把握したい。

 これを曖昧にすると、あとで後悔しそうな気がした。


「うーん? うーん んー……」

 ラグナロクは真剣に困った顔をしはじめる。

 なにを困っているのか、ぜひ聞き出したい。


「言っていいのかなぁ?」

「何?」

「いやいあ。ちょっと待って聞いてみるから」


 誰にだ? と俺が聞く前にラグナロクは目を閉じ。

「……Ёα……Vier en twintig……」

 不思議な言葉を話し始める。英語とかでは無いな……。


 そういえば。

 なぜ、見た目絶対に日本人じゃないだろ的なラグナロクは日本語が堪能なのか?

 言語日本語にしているとか言っていたが。

 コスプレ好きの帰国子女とかのオチであって欲しいが、すでに無理な気がする。

 そもそも、ワスレナの森は日本のどこなのだ? 

 いや。やっぱり異世界なのかここは? 

 せめて地球であって欲しい……。

 など考えはじめたとき。

 ラグナロクが目を開けて俺を見た。


「なんだ? どうだった? 誰に何を聞いたんだ?」

「ごめんなさい悪い知らせ。いま敵が来ている。戦闘準備だよ!」

「はっ?」


 ……日本とか地球とかではなさそうな気がしてきた。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 現在連載中とのことで、まだ世界観やマス君こと『俺』が置かれている状況も依然不明ですが、マリスカレンと再会出来るのかや名前を取り戻せるのかなど、先がとても楽しみな内容になっていました。 微課…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ