大体わしのせい
新しい魔法に関しての情報は得られ無かった。
貴族の位を使っても得られる魔法の情報は中位までだった。
シシリーにも頼んだが、上位以上の魔法書の管理は彼女と同等以上の精霊がほぼの割合を占めている。
そのため悪用されないようにこちらの名前と信用に値するかを調べられるのだ。
小さい子供が趣味で上位の魔法を調べている。
当たり前だが、許可を出すわけなんて無い。
こうして新しい魔法への扉は閉ざされたのである。
それはさておき、今日は街へ買い物に来たのである。
初めて来た100年後の街に驚きつつも、興奮を隠せずにいる。
本来ならリリィも一緒に来る予定だったが、急な用事が入ったので一人で回ることになった。
8歳の子供が一人で街を練り歩くのも安心されているのには理由がある。
まず一つ目としては、この街が父さんの領地だからだ。
貴族の次男として生まれながらも、前世からずっと魔法一筋と言えるほど魔法に夢中だった僕には領地の治め方なんてほぼ知らないけれど、父さんは市民から愛されているようだった。
行く先々の店で父さんの息子だというと、おまけなどをしてくれる。
父さんが良い領主というのも街の雰囲気で分かる。
二つ目としては、どうやら「冒険者ギルド」とやらが存在し、揉め事が起きると、解決に掛け合ってくれるのだ。
もちろん大きな事件や犯罪などが起きるとそれこそ騎士団の出番になるのだが。
しかし正直それに期待してはいない。
というか暴力や揉め事はぼぼ自力で解決できる。
これでも大魔法使いと呼ばれているほどだからな。どうしよう、この呼び名結構気に入ってる。
では「冒険者ギルド」とは一体何をするのか。とシシリーに聞いてみる。
街の中では服の中に隠れてもらっていたのだが、色んな店について聞いていた所「疲れた」と言って、耳元に移動していた。
「冒険者ギルドっていうのは文字通り、冒険者を束ねるための団体なんですよ。冒険者はギルドからクエストを受けて達成すると、お金をもらえるんですよ。一種の職業と考えるといいと思いますよ」
「へー。じゃあ例えばどういうクエストがあるの?」
興味本位に訊いた質問だった。
「そうですねー。一般的には雑用や採掘とかが多いですが、変わったものになると魔物討伐なんてのもありますねー。」
「魔物?」
聞きなれない単語に思わず繰り返す。
んー、と難しそうな顔してから答えるシシリー。
「エル様が100年ちょっと前に魔王を倒した出来事ですけどね、あれを『第一次魔災』って呼ぶんですよ。最初の魔王が齎した災害でしたからね」
「それは知っているな」
本で読んだからだ。
「それでエル様と魔王が相討ちした時にですね、魔力が暴走したんですよ。その際様々な生物が魔力を制御できなくなり、変異してしまったのが魔物です。動物、植物、人間、精霊、ほぼ全ての種類の生物に魔物が出来ました。姿形が変わり、猛烈な変化が起こるんですよ」
「でも姿形が変わっただけで討伐されるようになったのか?」
「もちろんそうではないですよ。未だに共存している魔物もいますから。しかしその中には暴れるものもいました。魔力が暴走しているだけに力も強大なものでした。そして、自我が無くなり、欲望のままに活動するものらが討伐対象とされました」
「魔物でも色んな奴がいるってことか。でも百年ちょいも魔物は生き延びたのか?」
「交配ですよー。自我がなくなっても子孫を残すことはするものが多かったので未だにひっそりと生きているんですよ」
へー、と呟く。
ん?
ちょっと待て、そもそも魔物が生まれる原因を作ったのって、
「僕のせい?」
「そうですねー。まあ、仕方なかったと考えるしかないですが」
うわぁ、なんか罪悪感を感じるぞ。
「せっかくですし、入ってみますか?」
そうだな、と頷いて扉を開けた。