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一歳児の召喚魔法

 衝撃的な出来事からはや一年。

 この一年で状況整理した結果、どうやら転生したらしい。

 らしいというのも根拠も無い上に、そう考えるしかないからである。

 降霊術や死霊術を見たことはあるが、あれはここまでできる代物でもないしな。


 一年は長かった。

 食事も何もかも、身体の制御が聞かないもんだからリリィにやってもらった。

 そのおかげか今では少しだけなら喋れるくらいに、一人立ちもできるようになった。

 最初に「ママ」と言って母さんを驚かせたのは記憶に新しい。

 エル。産まれた時にくれた名前。正確にはエル・アスミス・アルフォード。

 アルフォード家の次男として育てられているのだ。


 話は変わるが、先日めでたく1歳になった。

 そこそこ大きな誕生会を開いてもらい、一人部屋を与えられたのだ。

 これを機に魔法を使ってみようと思う。これまでやりたくなかったわけではないが、一人になることがほぼ無かったので色々試してみたいのである。

 夜静かになるまで待ってから、実験開始だ。

 今回に関しての大前提はばれない事だ。1歳児が魔法を使うなんてばれたにはどうなるかなんて想像できない。つまり、静かにかつ影響力の少ないものに限られる。

 その中で打ってつけの魔法が召喚魔法だ。

 触媒はないのだが、魔力を多めにこめることでその条件を無視できる。

「召喚の儀により、我に忠誠を示したまえ『召喚』」

 部屋に漏れないくらいの小さな声で詠唱した。滑舌が心配だったがうまくいってよかった。

 しばらくすると何も無い場所から光が漏れ始めた。召喚成功の合図だ。

 召喚魔法自体は結構魔力を要するから、元々持っていた魔力は引き継いでいるみたいだ。光の輝き具合がその証拠である。


 光り始めてから約5秒後、そこには全長15センチメートルほどの妖精が現れた。

「やっほー!みんな大好きなシシリーちゃんだよー!」

 翡翠色の髪をまとい、群青色の瞳でこちらを見つめてくる。

 その背中には蝶のとうな透き通った撫子色の羽が生えてあり、慎ましやかな胸は威張っているかのようにこちらを向く。

 慌てて右手でシシリーを掴み取り、黙らせる。

 ばれていないかと心配もしたが、杞憂だったようだ。

 耳を済ませても何も聞こえない。


「なんでこんな小さい子が・・・?まさか召喚に何かしらの不具合が起きたのかな?うーん・・・」

 顎に手を据え、ぶつぶつ言いながら悩んでいるところが愛らしかったが、今はそれどころではない。

 下手に騒がれたくないので、シシリーの目線の先を壁に合わせ字を映し出した。一種の魔法であり、対象物の表面を光らせることができるものだ。

 喋れないことを考慮した選択である。しかも簡単な類の魔法なので無詠唱でできるのも利点だ。


『シシリー、静かにして』

「わ、なんで私の名前知ってるの?」

 さっき自分で言ってただろう。

 しかし静かにしてといった傍から騒ぐとは痛い目を見たいようだ。

 右手で掴む力を強くしてみる。

 一歳児の握力なんて高が知れてるが、せめてもの反攻だ。


『しずかに』

「わかった、わかったから放してくるじい」

 理解してもらったので、放してやると空高く飛び上がった。

 掴まれるのが痛かったからだろうか。少し怯えている。

「ほぇー、すごいねー。こんなに小さいのに魔法を二つも使えるなんて」

 先ほどよりも幾分か声を落としてくれた。これなら喋らせても大丈夫だろう。

『シシリー、わしを覚えているか。エルダー・アルテスミスだ。色々あって今は赤ん坊に戻っているようだがな。』

「えっ!?こんな小さい子がエルダー様を名乗ってるの?かわいい~」

 宙を舞うように飛び、わしの頭に座って撫でてくる。

『本当だ。証拠を見せてやろう。お前エリスのデザートを勝手に食べて怒らせたことがあっただろう、散々なじられた挙句漏らした事を知っているぞ』

 あの後からひどく怯えると漏らす癖ができたそうだな、と付け加えておく。


 ご機嫌でわしの頭を撫でていたシシリーだったが、途中から羽をパタパタさせ宙に浮いていた。

 もっとも、顔は真っ青に変わっていたが。

 全てを読み終わるころには顔は真っ赤になっていた。よっぽど恥ずかしかったからなのか、それとも秘密を知られたからだろうか。

「うそっ・・・。本当にエルダー様!?だってあのことはエリスとエルダー様しか知らないはずだから・・・」

 エリスとはエルフの少女だ。

 昔、と言っても前世なのだが、面倒を見たことがあり、シシリーと出会うきっかけもエリスだ。というのもシシリーは元々エリスの従者だったからだ。


『これで分かっただろう?シシリーを呼んだのは知識を伺うためだ。まだ産まれてから一年、色々教えてもらいたい。』

 するとシシリーはわしが転生しても膨らまない胸を誇らしげに張る。


「ふっふーん。まさかエルダー様に教えを請われるとはね。これはもう階級を上位から最上位に格上げしてもらわなくちゃ。」

『階級?』

「階級っていうのは強さや影響力に応じて6種類に分かれいているの。魔法と同じようにね。」

『魔法と同じ?』


 んー、と身体を反らしてから説明する。

「エルダー様が死んじゃった後にできたんだけどね。魔法を威力や消費魔力量などで6つの階級に分かれたのよ。低い順から順番に初級、中級、上級、中位、上位、最上位の六つよ。」

 その内、初級、中級、上級の全ては下位に分別されるそうだ。

 その中でも召喚魔法だけは特別との事だ。

 使う魔力量で結果が大きく変わるので、それに応じた階級を召喚魔法にも適用されたそうだ。シシリーは上位に属しているので相当優秀ということだろう。

 さて、シシリーと再開したことだし、一番聞きたいことを聞こう。


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