転生したみたい
不定期連載ですがよろしくです。
「……!」
「・・・・・・!」
周りが騒がしい。歓喜と期待の声が聞こえる。
安心感がこみ上げてくる。暖かい雰囲気に包まれる。
あぁ、そうか。ここが死後か。なかなかどうして悪くは無い。
そんな思いで目を開けると・・・。
「・・・・・・」
女の顔があった。
青い髪と瞳。神秘的に美しく、整っていながら幼く見え、可憐に思える顔立ち。見た目からして10代だと予測できる。
だが、そんなことよりも真っ先に気づいたことがあった。
(な、なんていう大きさだっ!)
わしの身長は決して小さい方ではない。いや仮に小さい方であったとしても、この大きさはおかしい。まるで巨人を見ているようだ。
そんな風にわしが驚いていると。
「・・・・・・!」
目が合ってしまった。
この娘がきょとんとした顔でこちらを見る。
すると急に驚いた顔になり、
「た、大変です奥様ぁ!この子産声すらあげませんよ!」
と大声で叫び始めた。
耳元で大声を上げるとはか弱い老人をいじめる気なのか、この娘は。
「なんだって!?リリィ!叩いてでも声を出させなさい!このままじゃまずいわ!」
「わ、分かりました!」
もう一人の女性と会話したと思ったら本当に背中を叩かれた。しかも手加減ができていないのかかなり痛い。
「おぎゃあおぎゃあ!」
なぬ、抗議したつもりがただのうめき声になってしまった。しかも声がおかしい。
「やった!やりましたよ!ついに産声を上げましたよ!」
リリィが涙ぐむほど喜んでいる。
老人を叩いて喜ぶとはなんたる鬼畜か。
なんて思っているうちにリリィがわしをもう一人の女性に手渡した。
抱きかかえられている状態なのでどうしようもない。
「あぁ、かわいい坊や。やっと産まれてきてくれたのね。」
そういうと頬をすりすりと擦り付けてくる。
くすぐったいが嫌な気分ではなかった。
「エル、あなたの名前はエルよ。大魔法使い様から取った名前だから大切にしなさいね」
溢れる涙をとうとう抑えきれなくなったのか号泣し始めた。しかしながらも安堵しているようにも見える。
リリィが再度わしを受け取ると、違う部屋に入っていった。
風呂場というべき部屋に入ると、わしを仰向けに寝転がせた。
すると嬉しいのか、笑顔のままわしに少量のお湯を掬い取って掛ける。
この行為は洗っているとみるべきだが、この洗い方ではまるで・・・。
ん?
そういえばわしの髪はどうした。
肩の下まで伸ばし、まさにわしの象徴とも呼べるあの髪じゃ。
それをリリィがあたかもそこには何もないとばかりに頭部に触れる。
恐る恐る首を下げてみる。
あっ。
分かった。
わし赤ちゃんになっとる。