2 学校の怪談の話
2 学校の怪談の話
ありますよね、学校の怪談。
近所の高校にはテケテケが出るという地元では有名な怪談があったんですよね。
社会人になってからその高校の卒業生と知りあったので、聞いてみたんです。
××高校ってテケテケが出るって聞いたんですけど、見た事ありますかって。
そうしたら、テケテケって何?ですよ。拍子抜けです。
有名な怪談も実情はそんなものかと思っていたら後日談。
テケテケは知らないけれど、廊下を疾走する上半身は見たことがあると。
また、その目撃談は多数あったと。
たぶん、それがテケテケだと思われます。
通っていた中学校にもありました。呪われた机が職員室に。
その場所に配置されると大病をしたり、怪我をしたり、事故にあったりするそうです。
知っているだけで5・6件はあったと思います。もしかしたら知らないだけで被害者はもう少し多いのかもしれません。
実際に在学中、その場所をあてがわれた教師が交通事故にあって足の骨を折っていました。
その机の正確な場所は有耶無耶にされていましたが、その前にだけ、うじゃうじゃとお札が貼ってあるので一目瞭然でした。
その席って代々、生徒指導の先生が座っていたのですが、お札張ってある時点で何かあるって認めているようなものですよね。
しかも、四月には当たり前のように神主さんが来て祈祷あげてました。
ちょっと待って。そんなことをする前に、もっと本質的な解決方法があるだろうにと思っていました。
卒業してから、風の噂でその席は常に空席となることに決まったと聞きました。遅いよ。
小学校の時、暑い時期に担任に怖い話をねだったことがありました。
暑くて集中力が切れていたんですね。担任も渋々話をすることに同意をしてくれました。
しかしながら真面目な人で、語って聞かせるような子供だましの怪談なんて知らなかったんでしょうね。
ポツリポツリと語ってくれたのは本物の死体発見の体験談。
求めていた怖い話とはベクトルの違う怖い話でした。
曰く、子供の頃に友だちと川遊びをしていて、渦を巻く水の中に浮き沈みする足を発見したと。
曰く、サークルの合宿中、先輩が富士の樹海で自殺する前に眠っていた担任に一言あいさつに来た話。ちなみに幽霊ではなく生身だったとのこと。
期待した怖い話とは違う怖い話に凍りつく児童たち。
しかしながら、本当の恐怖はその後に来たのです。
雰囲気を盛り上げるために締め切った窓、カーテンをかけ電気を消した仄暗い教室。
そよとも風の吹かないその教室の後ろにあった掃除用具入れの上に置かれていた教師用の安全ヘルメットが、ガタンと音を立てて落ちました。席を立っている子供はだれもおらず、一体なぜそれが落ちたのかは未だにわかりません。
数瞬の静寂の後、盛大に悲鳴が上がりました。
そして、その悲鳴を聞きつけて駆けつけた見回り中の校長。
教室のドアががらりと開き、あなたたちは何をやっているのですと一喝されました。
その時、一番怖かったのは担任でしょうね。
案の定、校長にこっぴどく怒られたらしく、その後担任は何度ねだっても二度と怖い話をしてはくれませんでした。
これもまた、小学校の出の話。
図工室の扉は、他の教室の扉と少し形が違っていて、上のガラスは大人でないと覗けない高さにあり、足元のあたりはすりガラスになっていました。
授業中に廊下をパタパタと軽い足音を立てて誰かが歩いていました。聞くともなしに聞いていると、パタリと足音が止みます。
最初に見つけたのは教師でした。図工室の扉は児童たちの背後にあったので。
そこにいるのはだれ?今は授業中でしょう。
声をかけながら、教室を縦断します。つられて背後を見やると確かに扉のすりガラスに足が見えました。
まぁ、教室を抜け出して徘徊する児童は少なからず居ましたし、特に不審にも思わなかったのですが。
がらりと教師が扉を開けました。
そこには誰もいませんでした。誰もいませんでした。
ほんの数瞬前に、そこに足を見ているのです。立ち去った足音も聞こえませんでした。
他にも足を見ていただろう児童たちがざわめきます。察しが悪いのか、足を見ていないのか、事情が分からぬ児童が近くの子供に問いただす声も聞こえました。
しかしながら、教師は強し。
ぴしゃりと扉を閉め振り返った教師は中断する直前に話していた本日の課題についての説明を再開しました。
えぇ、一連の出来事全てをなかったことにしたのです。
あのスルースキルは見事でした。子ども達が何を言っても笑顔でスルー。
その後、その授業中に何度か廊下で足音がしたのですが、誰も扉をあけることはありませんでした。