エレベーター!
『まず、話を進める前に言わなければならない事がある。いや、俺じゃない。ナレーション、及び作者と、こんなオチを、面白いかも! とか思ってしまった奴らに……言っておこう。
あの終わりは無いだろ。鍵かっこの後ろ、付けないってある? 話をしているんだぜ? 最中だったよな? 強制終了だぜ? パソコンだって、ユーザーに怒る時代なんだよ。分かるか? オイ。それにな、俺は良かれと思って話をしていたんだ。それをあんな形にするなんてな。
大体だぜ? 俺は主人公だろ。そりゃあ間違いねぇよな? ようし、皆もそう思うな。よし、ならいい。
だがな、一つ注意して見てもらわねーと。しっかり言わねーと。この作者、馬鹿だからまーた同じことやっちまうんだよ。三歩歩いたら忘れるような鳥頭なんだよ。いや、この例えじゃー鳥さんに悪いな。訂正しよう。このイエスマンが! あぁ? 脳(NO)無しって意味だよ。分かれよ!
まぁな、最近思ってたよ。こんな感じで進めて大丈夫なのかってな。そんな事だからお気に入り件数も、アクセス数も伸びないクソ作品になっちまうんだよ。え? メタ禁止? 知るか!
はぁ〜。いい加減イイ歳なんだから分かれよって事なんだが、言わなきゃ分からないほど作者は馬鹿なのか? 違うだろ。期待してるからこそだろ。汲んでくれよ。俺の気持ちをよォ。
誰だって失敗する。これは当然の事だ。俺だって心得てるさ。作者が、理不尽に終わらせてみようとした。そのチャレンジ精神は確かに褒めてやるべき点だろう。だがな……だが、どんな時でも、どんな些細な事でも……こだわりを無くしちゃお終いなんだよ。分かってんのか?
本当に分かったのか? よし、だったら再開しようじゃーねーか』
終わりましたか?
「終わりましたか?」
『ああ、分かってもらえた筈だ。安心したよ』
では、気を取り直して……。
自動ドアをクリアした主人公の目の前に、新たな敵が現れた。
『これは……!』
主人公の目の前には、カードキーが無ければ起動しないエレベーターが立ちはだかっていた。
『むむむ、ここでも足止めを食らうのかよー!』
嫌に棒読みな主人公ではあるが、目の前の状況に頭を悩ませていた。
「さぁて、これをどうクリアしてみせる?」
『畜生、作者め! なんて設定を考えやがるんだっ!』
「わざとらしすぎるだろ」
『しかし、本当に困ったな。カードキー式にしてくるとは……。今回は真面目に頭を使わないとクリア出来そうにないな』
主人公はエレベーターの前に仁王立ちし、左上を向いて考えた。
『うーん、まぁ大体答えは出てるんだよ』
「ほう? 優秀だな。聞こうか、その答え!」
『階段で行く』
作者に電流走る……!
「階段は無しっ! 無しだっ!」
『考えてなかったのか……。階段の存在感の無さに合掌だな』
「とりあえず、階段は無しだ! いいな!」
『全く、しゃーねーなぁ。で? どうすりゃいいんだ』
「とりあえず、そこにあるボタンを押してくれ」
主人公は言われるまま、上矢印が描かれたボタンを押した。
「ふふふ、主人公……ここから楽しみだな」
『不気味に笑いやがるなぁ、作者。一体何が待っていやがるってんだ』
「ふふっ、驚くなよ!」
エレベーターが一階に到着し、ゆっくりとドアが開く。主人公はエレベーターの中を確認しながら言った。
『何も……無さそうだな』
「さあ、進め。主人公」
『アイアイ。了解了解』
主人公がエレベーターに乗り込むと、ドアが急に閉じた。びっくりした主人公は、咄嗟に「開く」ボタンを押すが、ドアは御構い無しに閉じていった。
『おいっ! どうなっていやがる……はっ!』
主人公は「開く」ボタンの上辺りに目をやった。普通のエレベーターなら行き先の階を示すボタンが、階数と同様にあるはずなのだが、このエレベーターは違っていた。
『ボタンが……無い!』
「さて、どうしようかな」
『作者! いきあたりばったりすぎるぞ!』
「まあ、今回は演出を頑張るつもりでの創造だからな」
『理由になってねーんだよ!』
「しかし、話は変わるがアレだな……。二十四時間ATMってカードの種類によっては二十四時間じゃ無いんだな」
『いきなりなんの話だ!』
「昨日さ、会社の帰りにコンビニに寄ったんだよ。でさ、面白そうな雑誌見つけたからレジに持って行ったんだよ」
『てめー作者ァ! 無視すんなよ!』
「財布開けて支払おうとしたら、残金二百円だったんだ。それで--」
『金を降ろそうとしたら、降ろせなかったと?』
「実は店員が知り合いで、『こんな本読むのかよ』って馬鹿にされてさぁ」
『あ、あれ?』
「面白いと思うんだけどなぁ……。オレンジページ」
『お前は主婦か!』
「ああ! こっちの店の方がネギが安い」
『だから主婦かっての!』
「私は汚れた女」
『娼婦か!』
「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」
『グフか! 正しくはランバ・ラルだが!』
「本日のスープには最高級の--」
『シェフか! もういいわ! 作者、認めろ……無理してつなぐ必要なんてないんだ』
主人公は優しく微笑みながら、作者に言った。作者は少し沈黙してから、エレベーターに「5」と描かれたボタンを創造した。
主人公はボタンを押して、エレベーターが動き出してから口を開いた。
『馬鹿め、作者よ。あんな台詞に騙されるとはな! 俺は図ったんだよ。いつもは言わねえような台詞を使ってお前を騙したのさ! ふははっはははははっははは!!!』
「……ふっふっふ。貴様こそ騙されたようだな」
『なっ、何ィィィ!?』
「貴様が、ボタンを押すことはもう分かっていた。だからそのボタンは俺が「押させた」んだよ。分かるか? 主人公」
『おい、まさか……。すげー地下に落ちて、チンチロリンとかやって人生を逆転させる有名な漫画の展開か!?』
ざわ……
ざわ……
「ふっふっふ……。もしそうだとしたら……?」
『ひいいいいいい! やめろっ! やめてくれええぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!』
エレベーターは普通に、すんなりと、何の誤作動も無く、五階に止まった。
『…………』
「……どうした?」
『いや、何かよ……言ってて恥ずかしくなっちまってさ』
「奇遇だな。俺もだ」
『今回は、じゃあ、痛み分けってことで』
「次回からはいよいよ魔王だな」
『だから、今言うなよ!』
「次回からはいよいよ魔王だな」
『何故二回言った!?』
「次回からはいよいよ魔王だな」
『三回目!? まあ、いいか。そろそろキリがいいみたいだし、次回は魔王登場するのか』
無理やりまとめ始めた主人公は、ずんずんと五階の廊下を進んだ。目の前には『501号室 魔王』とある。
主人公は唾を飲み込み、インターホンに手を伸ばした。
『次回へ続く!』