酔いに勝てる者なし!
酒屋でおじさんを見失った後、主人公は浴びる様に酒を呑んだ。
『そんなに呑んでねえよ。いい加減普通に進めらんねーのか、ナレーション』
うるさい。
『てめー! ナレーションの癖に主人公に刃向かうとはいい度胸じゃーねーか! 表出るかぁオラァ!』
「全く、酷い絡み酒だな」
『うっせー! 大体な、作者ぁ。おめー本っ当に--』
二時間に渡る主人公の愚痴は面白くもないので全面的に割愛。
そして、翌日。
『頭痛ぇから今日パス』
という事でまたその翌日。
『さて! 気持ちを切り替えて、話を進めよーじゃーねか』
「やってくれたな」
二日酔いで動けない主人公に、くどくどと説教している作者の声は、呆れが大半を占めていた。
『分かったから。行くから! 今日行くから! 今行くから! 魔王倒しちゃうから!』
「本当だな?」
『あと二、三話までには……』
「今すぐだ!」
そして主人公の目の前に、悍ましく、禍々(まがまが)しい城が現れる。
『急過ぎる! まずはポカリくれ、ポカリ!』
「三日酔いかよ。タチが悪いな……ほれ」
作者が創造ったのはラベルが薄い水色の飲み物だった。
『これ、コンビニとかでたまに見るけど、誰も買わない方のポカリじゃーねーか!』
「ちなみに2Gな」
『金取るのかよ!』
「当たり前だ」
『鬼め』
「鬼で結構」
稲妻が鳴り響き、暗雲立ち込める中、作者と主人公はうだうだといつものやりとりをする。
『まぁ、いい。いきなりだが……。ここが魔王の居る城なのか?』
「恐らく……」
『あー! てめー作者! 俺に散々言ったくせに、自分はこんな行き当たりばったりな創造かよ。自分のぼた餅だけ棚に上げて!』
「そのぼた餅は落ちてきそうだな……」
作者は、主人公の言葉を、口の中で溶ける、きな粉がかかったお菓子の様に、ふんわりと皮肉った。
『細けーこたぁいいんだよ!』
そう言って強がる主人公の顔は熟れ過ぎたトマトの様に真っ赤だった。
『人の顔色を歯槽膿漏みたいに言うなっ!』
「まあ、行き当たりばったりなのはさておき……」
『棚に上げやがった』
「行けー! 主人公ぉー!」
『はぁ、はいはい。了解しましたぁー』
そう言って、主人公は自分よりも大きなドアを開く。ろうそくの明かりで、中がぼんやりと照らされている。
『暗くてよく見えねーなぁ、オイ』
入り口近くの内壁を手で確かめながら、中に入ろうとすると、主人公の手に何かが当たった。
『ん? これって』
何かのボタンの様だ。主人公は興味本位からボタンを押す。主人公にあるまじき行動だ。
『るせー!』
カチッと言う音と共に、主人公はまばゆい光に包まれた。光は主人公に突き刺さるように溢れている。
『なんだ……これは……』
光源を確認すると、そこには最新であろうこうこうと輝くLEDが----。
『ちょーいまてーえええ!!!』
「お前は本当、つくづく、リアクション大きいのな。出川◯哲朗みたいだぞ」
『ちゃんと隠せよ! つのだ☆ひろの☆を隠してるみたいになってるから! つのだ◯ひろ状態だから!!!』
「出川に☆はつかないだろ」
『彼は間違いなくスターだよ!』
「うまく無いぞ」
『そりゃ、どーもねー!!!』
一通りの茶番を終え--。
『茶番言うなー!!!』
ともあれ、電気がついた城のロビーは圧巻と言う他ない。圧巻、圧巻。
『本当に、それしかねぇのか! って、ん? 誰だ、あれ』
主人公はロビーの中心に、人が倒れているのを見つけた。すかさず駆け寄る主人公。
『どうした! 誰がこんなことを……。おい、爺さん喋れるか?』
倒れていたのは今年で八十歳くらいになるであろう、老人だった。老人は血まみれだったが、かろうじて息がある。助かるかもしれない。爺さんは主人公に対して、立派な顎鬚を震わせる。
『おおお、ワシを倒しても、第二、第三の魔王が--』
『てめー、魔王だったのかよー!!!』
主人公はこの後『優しさを返せ』と言いながら、魔王を十三回踏みつけた。
こうして、主人公は魔王を倒し、世界には平和が戻った。
かに思えた! しかし、新たな悪の芽は、すぐそこに芽吹いていたのだった。
『いきなり張り切り過ぎだろ……』
予告
主人公を取り込んだまま凍結する◯ヴァ初号機。
廃棄される作者脳内。
幽閉される創造中!関係者。
想像へと投下されるエ◯ァ6号機。
胎動する主人公とそのパイロット。
ついに集う、運命を仕組まれた主人公達。
果たして売れることを望む作者の物語は何処へ続くのか。
次回 作者、創造中!Q
Quickening
さぁ〜て、この次もサービスサービスぅ。
『てか、エヴァネタはそろそろ辞めろ。訴えられっぞ』