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作者、創造中!  作者: 闍梨
第一章 主人公と荒くれのファンタジー
4/14

仲間を作るにはフラグを立てなければならない!

 前回の未公開シーン。


『うおおおおお! 足早ぇぇえ!』


「抑えて走れ」


『どーぉやってぇぇぇぇぇーーーー!』


「お前は、アレだな。博士のトンデモ発明品に振り回される、ドジっ子助手みたいだな。どーだぁぁ? 助手よぉぉ」


『助手助手言うなー!』


「ああ、後アレだ、お前は飛べる」


『アイキャンフライ?』


「イエース」


 飛べた。



 そして話は現在へ戻る。


『おい! コレ毎回入れるのか!?』


「うるさいな。メタ発言は作風を崩す」


『今の発言、一話目の時のお前に聞かせてやりてぇよ』


 決まりきった呆れ顔で、主人公はため息を漏らす。王様を城に連れ帰った後、朝日が空に顔を覗かせた。全て作者の創造おもい通りだ。


『朝だな』


「そうだな」


 主人公はそれから静かに街まで歩いた。城下町に着いた所で、主人公はようやく口を開いた。


『で、次に向かうのは何処だ?』


「魔王を倒しに行け」


『唐突だな、オイ』


 シュビッと手の甲を天に掲げ、主人公は作者にツッコミを入れる。


『いいのか、作者? 登場人物少ないぞ。ああ、後、文字数も』


「こっちでどうにかする」


『なんてダメ作者……』


「いいじゃないか。難しく考え過ぎだ。主人公」


『うう……んー。まぁ、いいか』


 そうして主人公は魔王の居る城へと向かう。


『ぜってー展開はえぇって……』


 トボトボと歩く主人公の背中にはいい具合の哀愁が漂っていた。


『ボカすなよ。ナレーション』



 南の城下町シュルドゥから少し西に位置する『懺悔ざんげの森』に一人の少女が居た。少女は狼の頭と蛇の尾を持つ獣数匹に、追われていた。


『ハァハァハァハァ、あっ! うぅぅ。ああ……!』


 少女は沼に足を取られた。後ろからは獣達がジリジリと近づいてきている。


『グルルル……。ガァウ!!!』


 もうダメだ。そう思った瞬間。獣の頭がごとごとと音を立てて落ちる。


『なんだー? 人間が居るじゃーねーか。大丈夫か?』


 ヒョイっと少女の首根っこを掴み、沼から引き上げる。


『危ない所を助けていただいて、ありがとうございますっ! 私は見習い魔法使いです』


『なんと!』


「新キャラ登場だな」


『仲間になるパターンの奴だな。これで少しは楽な旅になるな……多分』


 目の前で首をかしげている少女に対して、主人公は優しく話かける。


『やあ、おじょーちゃん。俺は主人公だ』


 我ながら特異な自己紹介だと思いながらも、主人公は続ける。


『まあ、物騒な所だし、行動を共にしようじゃーねーか』


 すっと右手を差し出す主人公。しかし、主人公の予想に反し、彼女はその手を払った。


『ふざけないでよ! 何? ナンパ? 馬鹿なの死ぬの?!』


『…………?』


『まっ、まぁ! アンタが私と行動したいってゆーなら、そっ……そのっ、あぁの……一緒に行動してもいいけど』


『…………』


『かっ、勘違いしないでよねっ! 別に、獣に襲われて怖かったとか、命を助けられて感謝してるとか、そんなんじゃ、ないんだからー!!!』


『ツンデレ、乙』


 右手を軽くあげて、『分かりました』というポーズをとる主人公。


『じゃあ、さっさと森を抜けようじゃーねーか。ジメジメして気持ち悪りぃんだ、ココ』


『ええ、そうですね』


 こうして主人公に仲間が出来た。



『へぇ、じゃあ、お姫様を助ける為に旅をしているんですね。男らしいですね』


『いやぁ、乗せるのが上手いね〜。おじょーちゃん。褒めても何も出ないぜ』


 二人は歩きながら、他愛もない会話をしていた。主人公は始めて出来た仲間に嬉しそうな顔をしていた。ニヤニヤしている顔は本当に気持ち悪い。


『うるせーよ!』


『……! ど、どうか、したんですか? 急に』


『ああ、悪い。幻聴だったみてーだ。あれ? そんなに怯えて……どうした』


『いえ、ゴメンなさい。昔の事、思い出しちゃって……』


『昔の事? 訊いてもいいのかい』


 見習い魔女は首肯し、ゆっくりと話し始めた。


『昔、今から六年前です。私はとある街に父と二人で暮らしていました。今は、違う所に住んでいるのですが……。その、昔ですね。

 私と父は借金取りに追いかけられていました。毎日毎日、返せるはずもない借金を取り立てに来て、大声で怒鳴り散らして……。私達の家を荒らして……。だから、私が稼いでどうにかしよう。そう考えたんです。

 私には生まれつき不思議な能力があったんで、それを生かした職についたんです』


『へぇ、そりゃあ……大変だったな』


 主人公は、魔法使いって金稼げるんだなどと細かいことを気にしていたが、次第に馬鹿馬鹿しくなり、考えるのをやめた。


『あっ、出口だ』


 そう言って駆け出す見習い魔女。彼女は森の出口付近で振り返り、主人公に言った。


『では、また機会があれば会いましょう。さようなら』


『ゑ……?』


 彼女は走り去る。太陽に輝く草原を駆けてゆく。その後ろ姿は大きく、逞しく、希望に満ち溢れて----。


『ちょっっっとまてぇぇぇーーーーい!』


「せからしかね」


『急に方言使うな! お前、九州出身じゃねーだろ! てゆーか何?! あの子! 仲間になったんじゃねーの? 何でどっか行っちゃったの?? フラグビンビンだったじゃん! 回収したじゃん! 助けたじゃん! 過去編終わらせたじゃん! 俺は--』


「いやぁ、なんてゆーか。創造してて、つまんなかった。俺、ツンデレ嫌いだし」


『じゃあ……何故ツンデレキャラに!?』


「いやあ、流行ってるから……」


『時間返せーーーー!』


 結局また一人になってしまった主人公の目には、キラリと光る何かが----。


『泣いてんだよーーーー!!!!』


 主人公に仲間が出来る日は、まだ先のようだ。

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