壱 no happiness
最初の話は、とても暗めに
いつもの朝。
いつもの朝日。
いつもの場所。
そして、
いつもの血生臭い匂い。
戦場には、虚ろな目をした少女が一人。
残りは皆屈強な男共である。
時は拾七世紀。
まだ魔女狩りなどが行われていた時期。
そんな世の、この場所。
イギリス辺りのこの場所。
この場所には、まだ魔術信仰が残っていた。
そんなこの場所には、ある戦争が起こっていた。
今で言う民族紛争。
<ニンゲン>と<星の子>との、戦争。
実際の所、<星の子>には何の非も無いのである。
<星の子>は、この場所で行われている魔術信仰の中でも、特に星空を魔力の源と考え、信仰している種族のことである。
彼らは、他の信仰者を非難したりだの、巡礼妨害だのはせず、ただひっそりと暮らしていた。
なのに、<ニンゲン>は<星の子>の魔力は我等と比べて高いからいつか皆殺しにされる、と全面戦争を押しかけたのだ。
身勝手にも程がある。
話を戻す。
戦場の少女には、名前が無い。
いつの間にかこの場所にいて、この場所で戦わせられていた。
彼女は、<星の子>と戦う、否、殺し合いをすることを嫌っていた。
いつか分かり合える、彼らもそれを望んでいる。
そう言った時も彼女にはあった。
しかし、彼女に帰ってきたのは、暴力と罵声。
いつしか、彼女は口を開かなくなった。
彼女は泪を流さない。
彼女は弱音を吐かない。
だけれども、心は泣いている。
心は弱音を吐いている。
彼女は壊れていく。徐々に、そして徐々に。
彼女は<星の子>を見つける。
殺し合いを始める。罪悪感を心にしまいこんで。
少女は身の丈に合わないほどの大剣を振るう。無表情で、しかし心は今にも泣きそうになりながら。
相手の顔なんて判らない。
吐き気しかしない。
大剣を振るう。
前さえ見えない。
「……い…たい……」
少女が口を開いたのは、首の付け根から鎖骨の辺りまでを切り裂かれた時である。
続けて横腹から腹のど真ん中まで。
鮮血が辺りに飛び散る。
ここら一帯は森だが、今その森を見たなら、緑より紅の方が目立つくらいに。
意識が朦朧としだす。
他の<ニンゲン>は、彼女の周りにはいない。他の相手を見つけたからか。
彼女は、笑っている様に見えた。
さあ、気分が悪くなるなら逃げましょう。評価ヨロです。