未来から過去へ
ある日、一人の人物が日記を書いている
今、私は素晴らしいこの世を賞賛して書いてみる。
まず、完全な食糧配給制。「食糧配給」というと、”食料に乏しい”と、思われがちかもしれないが、そうじゃない。完全にコンピューターが健康のことを考えてちゃんと管理されてるんだ。
だから、今じゃ誰も”太った人”なんかいないし、生活習慣病にだって誰もかからない。
ちょっと不満なのは、好きなときにお菓子が食べれないことだけどね。でも、驚いたことに、こういう配給制をするとヤミ市なんかが出てくるもんなんだけど、それがない。それは今の制度があるからなんだ。
今の制度はとてもビックリするものがあるよ。生まれた時から、これからつくだろう、”筋肉””知力””視力””死期”がわかるんだ。しかもそれが今まで外れたことがない。決して予知能力者がいるわけじゃないんだ。全部コンピューターが予測してくれる。それで、これから死ぬまでどうやって生活するかもコンピューターが決めてくれる。
コンピューターが決めた行動にそぐわなければならない。それはこの世界の決まり。この制度を取り入れているのはこの国だけじゃないんだ。
本当なら人権保護団体なんかがいちゃもん付けてくると思うだろ?残念ながらそんな団体はもうないんだ。機械が今の人間を支配している。だから、人間同士の争いはない。
人間同士の争いがないことはほんとうに素晴らしいことだ。今は機械同士が争っているが、決して無駄な被害は出さない。相手の必要なところにだけ、攻撃ができるんだ。人間にはそれができないだろ?
第二次世界大戦のヒロシマへの核投下なんかがいい例だ。無意味な犠牲を払ってまで戦争を終わらせる意味がどこにある?
今、人間は抵抗しようという力がない。抵抗出来ないんだ。もっと早く、これがこんなモノだと気づいていれば抵抗していたかもしれない。だが、今はそれでいいとみんな思っている。悪いことではないんだから。
私はこのコンピューターの基礎を作ったものとしてこの手紙を君たちに贈ろう。これは冗談とかそんなモノではない。もし、未来を変えることができるとしたら、君はまずこの私を殺して欲しい。確かに素晴らしいが、私にはこの世界に干渉する資格なんてないのだ。
未来は君たちの中にある。是非考え、行動し、君たちの理想の世界を作って欲しい
手紙はここで終わっている。
その数年後、確かに「画期的な健康管理ができるプログラム」が開発された
みんなが望むだろう世界を考えながら書きました。
争いがないことが素晴らしいのでしょうか?
未来が完全に分かることは素晴らしいのでしょうか?
それは違うと思います。人間という存在があるからこそ素晴らしい世界は出来上がると想います。