詩 彼が塾に通うって
「あ」
「どうしたの?」
下校途中、急に彼が足を止めたので、私は驚いて見つめる。
二重まぶたの大きな瞳。
自分ては意識していないのだが、彼の瞳に吸い込まれそうだった。
そんな彼がとある場所を指差し、答えてくる。
「俺、塾に通うことになるかもしれない」
「え…塾!?」
私はびっくりし、うさきが飛び跳ねたみたいに、身体を反応させる。
彼は鋭い目つきで周りを見回してくれたが、注目する人はおらず、ほっとする。
「ここの塾、この前、親と見学に行ったんだよ」
「そ、そうなの…? でもそんなにテストの点が悪いわけじゃ…」
「そうなんだよな」
2人で塾を凝視する。
国公立大学進学率1位と書かれた文字に、何故か不安がわきあがる。
彼は文系が得意らしく、よく名前が貼り出した紙にのっているのだが、数字や化学といった理数系が苦手のようだった。
私的には、答えが出てすっきりす理数系のほうが得意なのだが。
「私が教えようか?」
勝手に口が動いたのだが、彼は静かに首を横に振る。
「駄目。お前には、お前の勉強法があるだろう? 俺に合わせるな」
「でも、その、2人の時間が…」
「大丈夫。夜だから、下校は一緒にできるし」
「そうなの? それならいいけど…」
私は答えると、長い髪を指に巻きつける。
本当はずっと2人でいたかった。
「どうした? 不安か?」
「不安に決まっているでしょう!! 私、その、あなたとの時間を大切に、楽しみにしているんだから!! …あ」
言い過ぎたかと思い、顔を真っ赤に染める。
彼は嬉しそうに破顔すると、頭をぽんぽんと叩いてくる。
「そうか。そんなに俺といたいか?」
「いたいに決まっているでしょう!!」
ずるい質問に、正直に答えると、肩を抱かれる。
驚いたが、私も彼を感じたくて、ゆっくりと背中に腕を回す。
頑丈な身体。彼女としては、最高のパートナーである。
塾もいいけど、私を淋しくさせないでね。




