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最強魔導士の星婚《ステラリガーレ》~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~  作者: 源朝浪
第一部・第一章 伝説の英雄エルフに求婚された

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第八話 海上の戦闘

 文字通り船員に叩き起こされた俺たちは、眠い目をこすりながら甲板(かんぱん)に向かう。


 何か、俺の身体からウィルテイシアのにおいがするような気がするけど、近くで寝ていたからにおい移りでもしたのだろうか。においが移るほど傍で寝たつもりはないのだけど……。


 ともあれ、途中ですれ違った船員は(みな)、大慌てで船内を駆け回っていた。この様子だと、船長の指示も、まともに機能していないだろう。


 それは仕方ない。船長とは、多くの船員をまとめ上げ、安全に船を運行させるプロであって、水上戦闘のプロではないのだから。


 どこもかしこも、この話題で持ちきりだったので。ここに来るまでにある程度情報は伝わっている。


 現れたのは魚型の魔物で、数は複数。それもかなりの数だと言う。いつも安全に航海しているルートに、突如として魔物が現れたのだから。船員たちが混乱するのは当たり前だ。


 しかしまさか、魔王領からだいぶ遠い、こんな海域にまで魔物が現れるとは……。まったく想定外だった。


 魔物とは、魔族の発する暗黒の魔力によって生物が変容して生まれる怪物の総称。この付近であれば魔王の魔力に当てられた強力個体である可能性は低いものの、放置できるはずもない。


 慌てふためきながら走り回る船員たちを(かわ)し、何とか廊下を駆け抜ける。


 廊下の曲がり角などで、何度船員と衝突しそうになったかわからない。壁駆(かべが)けや、素早いサイドステップを駆使して彼らを(かわ)しながら、入り組んだ廊下を走り抜けた先。ようやっと辿り着いた甲板(かんぱん)で待っていたのは、まるで世界の破滅を(うかが)わせるような。船員たちの混乱と絶望の坩堝(るつぼ)だった。


 魔物が甲板(かんぱん)に乗り込んできている訳ではないものの。船を取り囲んでいる無数の魚型の魔物を前に、船員たちは(おび)え。何も対処できないでいる。


 致し方ない。魔物を前にした一般人など、こんなものだろう。見た目の恐ろしさもそうだけど。魔物化した生物は気性が荒く、何より攻撃的で危険なのだ。


 だからこそ、それらの駆除を担うことで生計を立てる稼業もあるし。その根源的な元凶である魔王を討伐することが急務。そういう大義名分を掲げて。各国、各種族が、魔王討伐競争を繰り広げているのが現在の状況。


 こんな時に種族間で争っている場合ではないと思うのだけど。俺とて、魔大陸という新天地に、興味がない訳でもない。どんな生物がいて、どんな生態系が広がっているのかとか。魔大陸特有の魔法的な技術体系があったりするのだろうかとか。考えれば考えるほど、好奇心は膨らむ。


(いやいや! そんな妄想に浸ってる場合じゃない!)


 この海域に魔物が現れたのなら。真っ先に対処するべきは、同じ海路(かいろ)を通ったであろう俺が元居た勇者パーティーのはずだけど。そのような話があれば、前もって船員が話してくれたはずだ。


 あの目立ちたがりのハヤトが、この手の手柄を放置するとは思えない。ならば単純に、彼らがここを通過した後に、魔物がはびこるようになったと考えるのが自然だろう。


(それにしたって。この数は……)


 見渡す限りの海面に浮かぶ魚影。時々水面の跳ねては、船底に体当たりを続けている様子。



 俺は、すっかり怯え切った様子の船員たちの安全を確保するべく。甲板(かんぱん)に残っている者たちに声をかける。


「船員は全員船内へ! それと、少しでも戦力になりそうなやつを甲板(かんぱん)に集めてくれ! 急ぎで頼む!」

「わ、わかった! あ、で、でも! 今日は乗船客も少ないし、あんたみたいに武装している奴はいなかったぜ!?」

「それならそれで、大人しく隠れているように伝えてくれればいい!」

「そうか、わかった! あんたも死ぬなよ!」


 俺の風貌と言葉を受けて、戦力には違いないと納得したのか。船員たちは思い出したとばかりに、船内逃げ込んでいった。


 混乱状況にあっては、まともな判断ができないのは当然のこと。残られても戦闘の邪魔になるだけなので、非戦闘員は早々に立ち去ってもらうのがいい。例え、追加の戦力が集まらなかったとしても。


「そっちはどうだ!?」


 俺が船員を逃がしている間に、状況確認に向かっていたウィルテイシアに声をかける。


「すっかり囲まれている! 数は……、数えたくもない!」

「俺たち二人で何とかできると思うか!?」

「何を言っている! 貴方と私がいて、できないことなどあろうものか!」


 勇者パーティーにいた頃は、終ぞ言われたことがなかった言葉。


 たった一晩一緒にいただけで大した信頼関係があるでもないなのに。それでも彼女の言は、確かにこの胸に刺さる。


 結婚云々(うんぬん)は置いておいたとしても。ウィルテイシアは天下の大英雄だ。これに応じないのであれば、男が(すた)るというもの。一介の黒魔導士としても、この状況を放っておくことはできない。


 俺は杖を構えて、彼女に応じた。


「船が沈んだら元も子もないからな! 大魔法は使えないぞ?」

貴方(あなた)と私なら! そんなもの使わなくても、この状況を打破できるだろう?」


 お互いの手の内もまだ明かしていないのに、この言い(よう)。しかし、今はそれが心地よくすらある。


「一応確認だけど、ウィルテイシア泳ぎは?」

「泳げはするが、水中戦を求めているなら無理だぞ?」

「いいや、泳げるならいい! やってもらうのは水上戦だからな!」


 俺は船の右側面に向かって氷属性の魔法を放つ。流石に海面を全て凍らせるまではできないが、足場として不足がないくらいには安定した氷塊(ひょうかい)を作ることくらいはできる。


 俺は何度も魔法を連発して、足場をいくつも作った。


 そうなれば、直接言葉にせずとも俺の考えは伝わったようで、ウィルテイシアはすぐさま氷塊(ひょうかい)に飛び移って戦闘を開始する。完全な陸地とまではいかない氷塊の上でも、彼女の動きに揺らぎはない。凄まじい速度で、次から次に魚型の魔物を撃破して行く。


「やっぱりきれいな立ち回りだ……。先代魔王を一人で討伐したって伝わってるだけのことはあるな……」


 その立ち回りの見事なことと言ったら。見ていて惚れ惚れをするような美しい剣捌(けんさば)きだ。鍛え抜かれた肉体に、研ぎ澄まされた精神、そして磨き上げられた技。その三つが調和しつつ、相乗効果も相まって、高い戦闘力へと昇華(しょうか)されている。


 近くにいる敵は右手の剣で。離れたところから自身を狙う敵には、投擲(とうてき)武器を的確に使用している。しかも、投擲(とうてき)武器も投げっぱなしという訳ではなく、鎖分銅(くさりふんどう)で見事に回収していると来た。


 なるほど。これが彼女本来の戦いという訳か。全方位かつ、距離をものともしない、独特な戦闘技法。この戦闘技術があったからこそ、かつて彼女はたった一人で先代魔王を討伐せしめたのだと、思わず感嘆(かんたん)の声を上げてしまう。


(でも、精霊術を使わないのは何でだ? 使った方が効率は良さそうなもんだけど……)


 エルフというと、得意な精霊術を基盤とした戦闘法を多用するのが一般的と、書には記されていた。彼女が何故、それに(なら)わないのかは気になるものの。これだけ強いのだから、この場は問題なさそうだ。


 となれば、俺が向かうべき場所は自ずと決まる。


「それじゃあ、俺は反対側をやりますか!」


 対多数相手の戦闘は、黒魔導士の領分(りょうぶん)。ここで腕を見せずにいる訳にもいかない。


 ウィルテイシアが俺を戦力として大いに評価し、更には好意まで向けてくれるのだから。俺には、それに(こた)えるだけの振る舞いが求められるはず。


 俺は即座に甲板(かんぱん)を横切り、逆側の海面に視線を向けた。


 こちらも右側面と同様。凄まじい数の魔物の(むれ)。また(むれ)。ここまでくると、数を数えることに意味がない。早く対応しなければ、船底が食い破られるのも、時間の問題だろう。


 そうなってしまえば、水中での動きで劣る俺たちは、魔物の餌になるしかないのだから。ここは最初から全力で行くべきだ。


「ようし、お前ら! まとめて相手してやるから、覚悟しやがれ!」


 昨晩の戦闘ではウィルテイシアに向いていた苛立ちを、今度は魔物にぶつけるだけのこと。


 恨みつらみが戦う理由ではないとしても。救える命は救うのが、一流の魔導士だと。師匠が言っていた。


 ならば、その一番弟子として。大いに暴れ、魔物相手に殺戮の限りを尽くそうではないか。黒魔導士としては、この戦場こそが晴れ舞台。目にもの見せてくれよう。


 俺は背負っていた杖を構えて、さっそく魔法発動の準備に取り掛かった。

読んでいただきありがとうございます。


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