俺は謎が解きたい。
「俺は謎が解きたい」
昼休み。目の前に座る友人、赤城一は宣言する。
「でも、謎なんてないだろうが」
俺は赤城に真顔で返す。
そう、実際に謎なんてものはない。だがしかし、目の前の男は学園に蔓延る謎を解いてみたいらしい。
「なぜだ。なぜ俺の周りには謎が現れない。クラスで普段目立たない非凡そうな俺が、突如として現れた謎を解明する、そんな学園ミステリーの主人公に俺はなりたいというのに」
そんな赤城の言葉にキョトンとした顔で俺は答える。
「いや、そもそも前提条件が間違ってるだろ。お前、クラスでめちゃくちゃ目立ってるからな。主に頭のおかしいやつとして」
「それは新しい謎かけか何かか?」
「いや、謎かけでも何でもなく、ただの事実だ。そりゃあ、いつもぶつぶつ謎が解きたいだの何だの宣っていたら、頭のおかしいやつとして見られてもしょうがない」
俺は曇りなき眼で赤城を見つめながら言う。
実際問題、赤城は変わっている。こいつとは中学からの付き合いだが、昔からどこかおかしかった。自分が納得できないことに対しては異様に食いつくし、分からないことを分からないままにするのが気に食わない性分らしい。しかし、勉学に対しての興味はあまりないようで、成績は中の下あたりだ。決して地頭は悪くないはずだが、非常に残念な好奇心の持ち主だ。
「なるほど。なら先ほどの前提条件は取り消そう。俺はただ謎を解きたい。頭がおかしくてもいい。俺は身近に起きた事件に対して推理がしたいんだよ」
「そうかよ。ならこの学園に探偵部でも開くか?」
俺は適当に思いついたことを適当に呟く。
すると、赤城の中で滾るものがあったのか、急に立ち上がって言葉を発した。
「よし、やるか!」
声のボリュームと所作の大きさから、教室内の人間の視線が一気に赤城に集まる。
「馬鹿野郎。飯時に騒ぐな」
俺は立ち上がり、赤城の頭にチョップを入れる。
クラスの人間からしても、もう見慣れた光景のようで、一瞬こちらに目をやっただけで、もはや何も気にしていない様子だ。
「すまない、探偵部という響きが非常に良いものでな。興奮してしまったようだ。それで、椎名は探偵部というものを実際に起こすつもりはあるのか?」
「いや、ねぇよ?冗談に決まってるだろ」
誰がそんな面倒くさいことをやるか。というか、そんな部を作ったところで、こいつの謎解き欲を本当に満たせるのか甚だ疑問である。探偵部とやらで、先ほどと同じような会話を放課後にまたして終わりなだけだ。
「そうか、残念だ」
赤城は意外と聞き分けが良かったりする。逆に赤城の思考が一度ロックされると誰の言うことも聞かなくなる。今回の件は前者にあたるようだ。先ほどの熱量とは裏腹に、あっさりと引き下がった。
「ところで椎名、次は体育だ。あまり教室を出るのが遅れると教室で着替える女子に睨まれるぞ。早く荷物をまとめて体育館の更衣室へ行こうじゃないか」
「へいへい」
◇
午後の授業をこなし、帰りのHRが終わった。俺は家路に着こうと身支度を整えていたのだが、そこにクラスメイトである女子が一人、俺のもとへ訪ねてきた。
「ね、椎名くん、ちょっと相談したいことがあるんだけど、ちょっといい?」
「ん、なんだ?」
目の前の女子は町田由依。あまり話したことがないが、何やら話したいことがあるらしい。
「昼間に赤城くんと椎名くんの会話をちょこっと聞いたんだけどね、探偵部の二人に私の謎を解いてほしいの!」
町田は何を言っているんだろうか。探偵部の二人?そんなやつクラスのどこにもいないはずだが…。
「いや、探偵部ってのはな…」
俺が町田に言葉を返そうとすると、赤城が颯爽と目の前に現れた。
「うむ、話は聞いた。解けない謎があるなら僕ら探偵部が解いてみせようじゃないか」
話は聞いたって、こいつもさっきまで対岸の廊下側の席で帰り支度をしていたと思うのだが。どれだけの地獄耳なんだろうか。
「本当!?ぜひお願いしたいんだけど!」
「あぁ、俺たちに任せろ。ここじゃなんだから場所を変えよう。まずは探偵部の部室に来てもらおうか」
探偵部が存在していないのだから、部室も当然存在してないはずなのだが。一体こいつはどこに案内するつもりなのだろう。
赤城は俺たちを教室の外へと連れ出し、迷いもなく歩いてゆく。
こうなった赤城は止められない。これは長年の付き合いでよく分かっている。だから俺は口を挟まず、黙って赤城の後ろをついて行った。
そして、着いた場所は…。
「ここが俺たちの部活だ」
着いたのは特別棟の屋上踊り場横の備品室。
「結構遠いのね…」
赤城の歩調は普段に比べて倍早く、それに着いて行った俺たちは息切れしていた。当の赤城は余裕の表情だ。
「何をしている。早く中へ入れ」
俺と町田は急かされて中に入る。すると、備品室のはずなのに物は少なく、あるのはそこそこの大きさのテーブルとそれを挟むようにして置かれた二つのソファ。加えて、何やら色々書き込みがされているホワイトボード。
「へ〜、ここが探偵部の部室なんだぁ!」
町田は探偵部の部室とやらに感動しているようだが、俺はなぜこのような部屋が用意されているのか分からず、ただただ困惑していた。
「おい、赤城。この部屋はなんだ」
俺は率直な疑問を赤城にぶつける。
「このような時が来ると思ってな。部屋を作っておいた。今日からここは探偵部の部室だ」
「あのな、教師陣の許可なしにこんなことしていいわけないだろ」
「安心しろ。この部屋の使用許可はもう得ている」
自信満々に宣う赤城。
俺はなぜこんな状況が許されているのかを考えると、即座に合点がいった。
「はぁ、またお前の二世パワーか」
そう、赤城はこの赤城学園の学長の一人息子だった。
「その言い方は気に食わないが、椎名の考えている通りで間違いない。それに、正しくは三世だがな」
「へー、赤城くんって学園長の息子さんだったんだ!」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。とりあえず二人とも座ったらどうだ」
そう言いながら赤城は片方のソファに腰を下ろす。町田はそんな赤城の言葉に従い、対面のソファへと座る。町田の一緒のソファに座るのは少し躊躇われたので、俺は赤城がいる方のソファに座る。
「それで、俺たち探偵部への相談というのは?」
赤城は対面の町田へと問いかける。
こうしていると、本当に俺たちが探偵のようで少しむず痒い。探偵部なんてものは存在しないというのに。
「そう!それがね、本当に大したことじゃないんだけど、うちの妹の方が絶対に家に帰るのが早いの!それも決まった曜日だけ!」
「なんだそれ」
俺は思わず、思ったことを口に出してしまった。
「いや、私も自分で言っておきながらそう思うんだけどね?」
「あぁ、いや、すまん。続けてくれ」
「この高校って学年で授業時間とかの差はないはずでしょ?なのに一個下の学年の妹は決まって金曜日だけ私より帰るのが早いのよ」
町田の言う通り、学年で授業時間の差はない。
「それは絶対なのか?」
赤城が町田に問う。
「えぇ、私が家に着く頃には妹が必ず家にいるから」
「なるほどな。確かにそれは謎だ」
念願の謎に頭を悩ませる赤城。
俺はそんな赤城を横目に、町田に疑問を飛ばす。
「単純に担任の差じゃないか?HRを手短に終わらせる
教師なんだろ」
「いやでも、他の曜日だと私の方が帰るのが早い日もあるし、それは関係ないと思う。今日は水曜よね?先週は確かに私の方が早かったわ」
なるほど。
「ふっ、やはり椎名は短絡的だな」
赤城は俺を小馬鹿にして笑みをこぼす。
「なら俺を短絡的というお前は何が原因だと思うんだ」
「俺か?そうだな、俺はあれだ。あれが関係していると思う」
「あれって何だよ」
「あれはあれだ」
探偵がこんな抽象的な発言をしていていいのだろうか。そんなことを考えていると、ふと俺はあることに気づいた。
「そういえば、金曜は予鈴が鳴らないな」
町田は両の手をパチンと合わせて呟く。
「あー確かに!」
我が校では、生徒が時間を各自で確認し、規律よく行動ができるようにと、あえて予鈴を鳴らさない日が存在する。それが毎週金曜日に定められている。
「そう、俺が言いたかったのは予鈴のことだ。よく分かったな、椎名よ」
いちいち鼻につく物言いだ。
しかし、こんなことにいちいち突っ込んでいては赤城と一緒にいることはままならない。俺はいつものようにスルーした。
「でも、予鈴が鳴らないことがどう関係するのかしら」
町田の問いに赤城は何か思いついたのか、得意げに話を始めた。
「俺が思うに、きっと妹のクラスの時計に答えはあると考えている」
「というと?」
「時計の時間がズレているということだ」
「な、なるほど…」
赤城の推理の解説が乏しかったのか、町田の頭の上にはクエスチョンマークが見え隠れしていた。
そんな町田を見かねたのか、さすがの赤城も言葉を付け足して話を続けた。
「教師は授業の終了時間を常に気にしながら授業を進行するだろ?つまり、時計が針が早く進んでいれば必然的に授業は早く終わるはずだ」
「え、でも待って。授業が早く終わってもHRは早く終わらなくない?だって担任の先生がHRをしに来るのは定刻なはずじゃない?」
先ほどまで自信満々に推理を披露していた赤城だが、町田の正論に動揺し始める。
「いや、待て。俺の推理は間違っていないはず…。必ず理由がだな」
全く、頼りのない探偵だな。ここは助け舟を出してやるか。
「六限の担当がクラスの担任と同じなら、そのままHRが始まるんじゃないか?」
俺の回答に納得がいったのか、手を叩く町田。
「それだ!」
「ふっ、そういうことだ町田。今すぐ答えを確かめに妹の教室に確認しに行こう。時計もそうだが、掲示されている時間割で六限の担当教師が誰なのか分かるはずだ」
「うん!行こう!」
またこの特別棟から校舎の方へ戻るのが面倒くさいが、結論が出るなら行くとしよう。
◇
そして、俺たちは町田の妹が所属する一年A組のクラスにたどり着いた。
「赤城くん、時計はズレてないみたいだね…」
「あ、あぁ…。いや、時計はひとまず置いておこう。時間割はどうだ?」
俺たちはクラスのどこかに貼られているであろう、時間割を探す。すると、町田が発見したようで、声を上げた。
「あ、あったよ!月曜は一限が体育で、二限が現代文…」
「おい、月曜は関係ないだろ」
「たはは。ごめん、赤城くん…。えーっと金曜日はっと」
俺は読み上げようとする町田の後ろから時間割を覗きこんだ。
そして金曜の六限の方へ目を移す。
昼休み
五限 体育 担当:鈴木先生
六限 数学 担当:広瀬先生
SHR
「町田、広瀬はお前の妹の担任なのか」
赤城も町田の言葉を待たずに自身で時間割を確認したようで、町田に質問を投げかけた。
「そう!広瀬だったはず!あの先生、煙草臭くて苦手なのよね〜。休憩時間の度に吸ってるのか分かんないけど、毎回教室に来るの遅いし」
時計の時間はズレてはいなかったが、六限の担当教師が担任と同じだということは分かった。
「確かにな。俺もあの匂いは苦手だ」
赤城は鼻を抑えながらそんなことを宣う。
「でもホームズは煙草吸うよな。探偵を志すものとしてそれはどうなんだよ」
俺は少し赤城に意地悪を言う。
「俺は別にホームズに憧れているわけではない。俺は殺人事件なんていう物騒なものより、学園に蔓延る些細な謎をしがなく解いていたい。それが俺の憧れる学園ミステリーの主人公だとも」
「そうかよ。それで?時計のズレはなかったようだが、新たな見解はあるのか?」
俺は赤城に質問を振る。
しかし、赤城はまたも頭を悩ませるばかりで、言葉は返ってこない。全く、学園ミステリーの主人公が聞いて呆れる。
「なぁ、赤城。時計のズレが一時的なものだとしたらどうだ?」
「ズレが一時的なものだとしたら?いや待て。そんなの誰かが意図的に針をズラさなければ…。そうか!時計は何者かの手によって金曜六限の間だけズレていたんだ」
赤城は閃いたとばかりに興奮して言葉を続ける。
「正確には金曜六限から月曜の一限の間までか」
「どういうこと?」
例の如く、赤城の言葉たらずな推理についていけない町田は疑問を投げる。そんな町田に話す目もくれず、赤城がぶつぶつ独り言を垂れ流しているので、俺が代わりに補足することにした。
「さっきも見たかもしれないが、金曜六限の前は体育だ。生徒の移動が伴う。おそらく、体育の授業開始前に一番後に教室を出た人間か、体育が終わったあとに一番早く教室に来てる人間のどちらかが、誰も見ていないそのタイミングで時計をズラしてる。ズラしてあるのは金曜六限から月曜の一限の間まで。このクラスの月曜一限は体育だ。同じようにまた時計をズラせる」
「確かに…。でも広瀬は時計がズレてることに何で気づかないんだろう。月曜の朝のHRとか金曜六限が始まるタイミングで時計見ないのかしら。そしたら教室の時計がズレてることなんて分かるのに」
「だそうだ。赤城から説明してもらっても?」
俺は赤城の方へ視線を移す。
「いや、それは分からん」
探偵役が言い切るなよ。
「さっき、その答えを町田が言ってたぞ」
「え?私?」
町田が間抜けた声を出して自分を指差す。
赤城は町田の言葉を遡って、答えを見つけたらしく、ここぞとばかりに口を開いた。
「そうか、タバコだ。広瀬のあのキツい煙草の匂いは授業前に吸っていないと香らないだろう。今思い返せば、町田の言うように広瀬は教室にくるのが毎回遅い。ともすれば、自分がギリギリで教室に駆け込んでいるのだから開始の時間など気にならないだろ。それに、金曜以外はチャイムが鳴るわけだしな。月曜の朝も確認していないんだろ」
町田もようやく合点がいったのか、ゆっくりと頷きながら話す。
「なるほどねぇ。確かに、そもそも広瀬が毎授業時計を確認する人間なら、こんな異変すぐにバレてるはずだし。ていうか、この説が正しければ体育の授業前後のどっちかに犯人は現れるわけだ」
俺は町田に言葉を返す。
「まぁ、そういうことになるな。犯人が誰か気になるのか?」
「そりゃあ、少しは。もしかして椎名くんは誰が犯人か目星ついてるの?」
俺たちが会話している裏で赤城はまた一人でぶつぶつ呟いている。思考に溺れて周りが見えなくなる赤城の悪い癖だ。
俺はそんな赤城を横目に町田からの質問に答える。
「あぁ。俺は、犯人は町田の妹だと考えてる」
「え?依織が!?なんでよ」
俺は自身の考えを町田に伝えることにした。
「俺は、そもそも町田が妹が自分より決まって早く帰る曜日があるなんてことを気にしていることを疑問に思った。普通の人間はたとえそんな決まりががあったとしても、気づかないからな。きっと町田家には、町田姉妹には、それをわざわざ記憶するような家のルールみたいなものがあるんじゃないかってな。それが何なのかは分からないが、おそらくそれが妹が時計の針を動かしている動機だ。早く帰ると何かしらのメリットがあるんだろう。それに、体育の授業前後で時計を動かしているとすれば、教室で着替える女子の犯行に違いないからな」
町田は俺の言葉を受け、少し間を置いてから言葉を発した。
「…椎名くんの言う通り、私の姉妹には決まりがあってね、早く帰って来た方が母親が買って来たプリンを食べていいってルールがあるのよ。だから私は金曜だけ必ずプリンにありつける妹を疑問に思ってたんだ」
プリン、か…。
「え、じゃあ椎名くんの推理が正しければ、妹は金曜日のプリンのためだけにこんな大それたことを?」
「…そ、そうなるな。妹のしていることがそこまで大それたことだとは思えなかったが、プリンのためだけにと思うと、大それたことなのかもな…」
ミステリーもので起こる殺人事件の動機がほんの些細なことであったりするように、これが学園で起こるささやかな事件の場合、動機はもっと些細なことになるらしい。まさか、プリン一個のためにとは。いや、まだ町田の妹が犯人と決まったわけではないが…。
「ありがとう、椎名くん。ちょっと今日帰ったら妹に問い詰めてみる!」
「あぁ…」
動機のしょうもなさから、本当に自分の推理が正しいのか自信をなくしていたところ、赤城が我に返ったのか、こちらの会話に口を挟んできた。
「二人とも何を話していたんだ?」
「いや、なんでもないよ」
そう返したのは町田で、赤城に今の会話を聞かれるとまた面倒臭いことになることを予感したのか、淡々と場を濁した。町田、赤城適正ありそうだな。
「そうか。なら今日はもう帰ろう。早くこの推理が本当か確かめたいところだが、犯人が現れる金曜になるまでは時間がある。さっさと寝て、金曜になるのを待とうじゃないか」
「ふふっ、そうだね」
「あぁ、そうだな」
そして、今日のところは解散する運びとなった。
◇
その日の夜、自分の部屋でくつろぐ俺のスマホに一本の電話がかかってきた。表示名を見れば、町田由依。きっと、犯人の答え合わせが終わったのだろう。
「もしもし、椎名くん?」
「町田か」
「そう、私。やっぱり犯人、私の妹だった」
どうやら俺の推理は無事的中していたらしい。
「それで、赤城が解いたトリックは当たってたのか?」
「えぇ、当たってたわよ。本当にそのまんま。広瀬が授業開始前に時計を見ないこととか、金曜六限の前の授業が体育だったこととか、諸々思いついて実行してたみたい。我ながら末恐ろしい妹だわ」
「思いつくだけじゃなく、それを実行に移すところがまたすごい。妹のこと、ちゃんと叱ったのか?」
「もちろん。不正なんかするな、プリンは私のだー!って怒っといた」
「おいおい…」
プリンを不正で奪われたことじゃなくて、倫理的に良くない行動をしたことに対して怒れよな。
「ていうか、椎名くん。さっき赤城くんが解いたトリック〜とか言ってたけど、ほとんど椎名くんが解いたようなものよね?いつから分かってたの?」
「赤城とそこまで変わらないと思うよ。ヒントに気づくのがあいつより少し早かっただけだ」
「またまた〜。ま、椎名くんがそう言うならそういうことにしとくけどさ。私はてっきり、椎名くんは赤城くんの助手的ポジだと思ってたけど、実際は先生ポジだったんだねー」
「誰が助手ポジだ。先生ポジってのも些か気持ちが悪いが」
「ははっ。なんか二人のこと見てると面白い!私も探偵部入っちゃおうかな、なんて」
「町田のようなお転婆は御免被る。というかそんな部活ないから入部なんてできないからな」
実際俺は町田ような陽気な女子は少し苦手なのである。こちらの気力がもたん。
「ちぇっ。椎名くんの意地悪。ま、いいや。何はともあれ、今回はありがと!助かったよ」
「どういたしまして」
「じゃ、また明日ね」
「あぁ、また明日」
俺は電話を切り、座っていたデスクから移動してベットに寝転がった。
俺は今日の出来事を思い出して考える。
「ま、学園ミステリーの主人公とやらも案外悪くないのかもしれないな」
いや、俺は町田の言う通り、主人公の助手ポジ程度が性に合っているか…。
久々に赤城以外の人間と関わったせいか、頭を働かせたせいなのかは分からないが、疲れていた俺はそのまま眠りに落ちてしまった。
◇
翌日の木曜日。登校した俺は朝から赤城に絡まれていた。
「おい、椎名。俺は早く例の事件の現場を押さえたくて辛抱たまらん。いっそのこと犯人と思わしき人物を片っ端から捕まえて自白させないか」
「うるさい。つか、それのどこが学園ミステリーの主人公なんだよ。ていうか、もうあの時計の針が故意的に動かされることはないぞ」
「それはどういうことだ!何か知っているなら教えろ!」
「ったく。だから、主人公志望なら自分で考えろよ!朝からやかましい!」
俺たち二人が言い争っているところに町田由依が割って入ってきた。そして、いたずらに町田は呟いた。
「やっぱ二人見てると面白いや。今後とも頑張ってね。ホームズとワトソン君」
それに俺と赤城は言葉を返す。
「「誰がホームズだ!」」
「おい、椎名!お前はワトソンだろうが」
「は?うるせぇ!お前がワトソンだろ!」
「ははっ、この二人最高〜」
こうして俺たち探偵部、初の謎解きが幕を閉じた。




