夏の風物詩
熱射を包んだ大気に嬲られ
沸騰した土瀝青のみち泳ぎ
褪せゆく意気に抗いかねて
恨めしさに仰げば
饐えた空があった
薄水色の濁る天幕
微動もせずに無言で佇み
そよ吹く風すら見当たらぬ
どうせなら
全てを焼いて灰にして
空に撒いてみたいなと
雲に願いを懸けたくも
一切れの望みもなく
ただ項垂れて熱林を抜け
家路を急ぐしかなく
小径に迷い心許なく
粘板屋根を見上げれば
あれどうしたことか
青空にっこり微笑んでた
なにを今更笑うのかと
憤りながら思うたは
「お前も灰になりなさい」
呪詛の言葉が口を突き
真白な夏を思ったよ
だけれども
色鮮やかに茂る緑と
その向こうの青空と
厚き白雲こそ
夏の風物詩かな