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話の進まない赤頭巾ちゃん

掲載日:2010/05/26

「ねえ、どうしておばあちゃまの耳はそんなに大きいの?」


「それはね、お前の声をよく聞く為だよ」


「じゃあ生まれた時から大きかったわけじゃないの?」


「ああ、そうだよ。お前が生まれたから大きくなったんだよ」


「何をしたら耳が大きくなるの?」


「何もしないよ」


「何もしないのに大きくなったの?」


「お前の声を聞きたい聞きたいと願い続けていたら、耳が大きくなったんだよ」


「願うだけで大きくなったの?」


「そうだよ」


「他の要因はないの?」


「ないよ」


「どうしてそう言い切れるの?」


「特別なことは何もなかったんだよ。お前が生まれたこと以外はね」


「じゃあお母さんは? お母さんの耳はどうして大きくならないの?」


「お母さんは願わなかったんだよ」


「なんで?」


「その必要がなかったからさ」


「私の声が聞きたくなかったの?」


「そうじゃないんだよ。お母さんはお家でいつも一緒にいるから、耳が小さくてもよく聞こえるんだよ」


「おばあちゃまは遠くに離れているから、声が聞こえなかったの?」


「そうだよ。お前の声を聞きたいと思っても、遠くて聞こえないんだよ」


「じゃあ、耳が大きくなったら聞こえるようになったの? 私が森の向こうのお家でお話してることも、全部聞こえてるの?」


「そこまでは聞こえないんだよ」


「大きくても、やっぱり聞こえないの?」


「やっぱり聞こえないんだよ」


「じゃあ、意味がなかったの?」


「意味がなかったんだよ」


「ふーん」


「そろそろ目にいってもいいかい」


「待っておばあちゃま、おばあちゃまの願いは、私の声が聞きたい、なんでしょ? 耳を大きくして欲しいなんて願ってないんでしょ?」


「そうだねえ」


「なのに、耳は大きくなったけど、私の声はやっぱり聞こえなかった。そうよね?」


「そういうことだねえ」


「それじゃ、話が違うじゃない。私、文句言ってくる」


「待つんだよ、お前、誰に文句を言う気だい」


「誰って、願いをかなえた妖精か何かよ」


「そんなもの、どこにいるかもわからないよ。おやめよ。済んだことは仕方ないさ」


「泣き寝入りしちゃダメよ。今からでも遅くないわ。地獄耳を手に入れるのよ」


「赤頭巾や」


「なあに?」


「お前、話を引き伸ばそうとしてないかい」


「ところでおばあちゃん、耳が大きくなっちゃった、という一発芸をする芸人、何て名前だったかしら」


「マギー伸司だね」


「そうだったわね。彼は今何をしているのかしら」


「ところで赤頭巾や、おばあちゃんの目は大きいだろう?」


「待っておばあちゃま。司郎のほうも見ないのよね」


「マギー一派の話はどうでもいいんだよ」


「でも」


「あたしの目が大きいのはね、」


「あら、おばあちゃまの目はそんなに大きくないわ」


「よく見るんだよ、赤頭巾や。こんなに大きな目をした人間はいないよ」


「いいえ普通よ普通。最近は珍しくないわ。都会へ行けばきっとたくさんいるわよ」


「うそおっしゃい。とても人間の目じゃないよ」


「いるわよ。いるいる。気にすることないわ。それに、目が大きい方が魅力的よ」


「こんなに大きいのはお前をよく見るためなんだよ」


「聞いてないってば。それはありがたいけど、そんなことよりマギーの話をしましょう」


「あとほら、鼻も尖っているだろう」


「近い近い近い」


「そして口が」


「あ、こんな時間。私帰るから。楽しかったわ。じゃあね」


「あ、これ待つんだよ赤頭巾や」


バタン


「助けてください! 誰か! あ、猟師さん、ちょうど良かった! 撃っちゃって、早く! ねえ早く!」


「赤頭巾ちゃんじゃないか。落ち着きなさい。ずいぶん慌てて家から飛び出して。どうしたんだい」


「オオカミよ! おばあちゃまの家にオオカミが……あ、ほら出てきた! 早く撃って!」


「あ、これはどうも奥さん。お久しぶりです」


「はぁ!? ちょっとよく見てよ、人間の振りしたオオカミよ!」


「あらあら、すみませんねえ、お騒がせして。何か孫が寝ぼけたみたいで」


「いやいや、このくらいの年の子にはよくあることですから」


「ちょっと! どこが人間なのよ、あんたの目、節穴なんじゃないの!?」


「こら、自分のおばあちゃんに何てこと言うんだ」


「すみませんねえ、口の悪い子で」


「なっ……あんた、あの大きな耳が見えないの?」


「大きな耳? ああ確かにちょっと大きいかな。奥さん、どうかしましたか」


「あらいやだ。猟師さん、これは、この子の声をよく聞く為ですのよ」


「ああなるほど。そらぁそうでしょうなあ」


「はぁ? なんで納得すんのよ。あの目は? 鼻は? あれが人間だってんなら動物園は廃業だわ」


「ばか言っちゃいかん。あの目はお前を良く見る為に決まってるだろう。鼻だってお前の匂いが嗅ぎたいからさ、ねえ奥さん」


「あらよくおわかりで。その通りですのよ」


「……え? 何言ってるの?」


「おじさん、何かおかしなことでも言ったかい、赤頭巾ちゃん」


「そうだよ、赤頭巾や。猟師さんは何も変なことを言ってないよ」


「……あれ? そういえば深い帽子で顔が隠れてるからわからなかったけど……」


「どうかしたかね?」


「猟師さん……その耳……鼻も……口も……なんで……そんなに大きい……の……?」


「ああ……これかい? これはね……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後ぞわっとしたw
[良い点]  テンポが超絶いいところ。赤ずきんの口の上手さも好感。 [気になる点]  マギー一派が世界観にそぐわないこと。 (ハッピーエンド好きな私的には、赤ずきんがあんなに頑張ったのに救いがないこと…
[一言] 笑い転げました。ありがとうございました。
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