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Making*Summer

 

 ざわざわ……。がやがや……。

 浜辺の周りも騒がしくなってきた。


 どうやら姉ちゃんの出した花火の影響で、親子連れなどの人々が集まってきたようだ。

 その花火だが。

 先ほどまで数発上がっていたが、今は宙にそれはなかった。


「あれぇ? ママー。はなびおわっちゃたの?」

「そうみたいね、帰りましょうか」

「やだー! もっとはなびみたーい」


「……!」

 ふと見れば姉ちゃんは、そんな親子の何気ないやりとりを見つめていた。


「……しょうがないですね!」


 ぽいんっ! ぽいんっ! ぽいんっ!

 ぽいんっ! ぽいんっ! ぽいんっ!


 姉ちゃんは無数の魔法陣を出すと。

 ――空へと解き放った。


 ヒュ〜〜〜ドドドッ!!!


 ドン!! ドン!! ドーーーーン!!!

 ドン!! ドンドン!! ドーーーーン!!!

 パラパラ! ドン! パラッ! パララッ!!


 無数の、大輪の花火。

 それがこれでもかと咲き誇り、上がり続ける。

 先ほどの親子連れも目を輝かせる。


「わぁっ。はなびでおそらがかがやいてるね」

「綺麗ね。でも変ねぇ、こんな8月最終日に。今夜は花火大会だったかしら?」


「ママ? そんなのどうだっていいじゃない――とびきりのよぞらが、さいているのだから」


 親子連れだけではない。

 周りを見れば、カップルや老夫婦など、様々な人達が笑顔で宙を見上げている。


 歓声と、ため息。

 あと1日で9月に。

 晩夏になろうとしていたが、夏真っ盛りの雰囲気となっていた


 皆、姉ちゃんの作り出した【夏】に夢中だった。


 千輪(せんりん)(やなぎ)、スターマインにナイアガラなどなど。

 様々な花火が舞い上がる。


「ふふ、みんな笑顔になっていきますね。夏は作れるんですよ? ……蒼司のおかげです」


 ――俺?

「え、どゆこと?」


「ふふ、なんでもありません。さて、もう9時です、わが家に帰りましょうか?」


 帰る。うん。小腹もすいてきた。

「そう、だな家に帰ろうか姉ちゃん」


「はい。いつきとあずさも女の子なのですから、野宿はアレですよ? 桜日家に泊まっていってください」

 姉ちゃんはそう(うなが)す。


「あ、そういえば二人とも出禁中とか言ってましたね。蒼司? 二人の出禁を解除してください」


「お、おう。解除だ!」

「! やったにぁ! いざ。エアコンの効いた部屋なんだぞ!!」

「ふむ。ならば、テント周りを片付けて支度をするのさ」


「! おっと、不要ですよ? めんどくさい片付けも今は置いておくとしておいて、うちの庭にテントごと……そうですね。ワープしちゃいましょう!」


 姉ちゃんは、またとんでもない事をのたまう。


「ワープ!? 大変興味深いのさ!」

「そだねぃ。ってかそんな事も出来るぬぉ?」


 ツキ姉とアズ姉は興味津々となる。


「今は、なんだって出来ちゃう気がしてますよ? せっかくチートを(さず)かったのですから、色々試してみるのも一興(いっきょう)というものです」


 なるほど、俺もワープはしてみたい。

 しかし、浜辺には多くの人がいる。

 俺は、人の目が気になっていた。


「あのさ姉ちゃん。仮にワープ出来るとして、その瞬間とか人に見られたりしない? 大丈夫?」


「! 確かに。でもたぶん大丈夫ですよ。皆花火に夢中なのですから」

 はあ。

 本当に大丈夫かなぁ? ……まあいいか。


「では! いきますよ!?」


 ――ぽいんっ!


 魔法陣が俺たちを包み込んでいく。


「そいえばこの魔法陣、柔らかな匂いがするにぇ」

「ふむ、柔軟剤……? とも違うのさ」


 不思議がるアズ姉とツキ姉。

 だがしかし、俺にはわかるぞ。


「これは姉ちゃんの、肌と汗の匂いだ!!」

「ゔぇっ!? 魔法陣から私の匂いがするってマジですか!?? あまり嗅がないでくださいぉ!」


 いいや嗅ぐね!

 スーハー。スーハー。

 俺は深呼吸をする!


「蒼司ぃ!?」

 わちゃわちゃしかかっていると次の瞬間、景色が変わった。


 ドン ドン ドーーーン

 少し遠くの浜辺からは花火の音がしている。

 小さく映る花火。


 気づけば。

 俺たちは我が家、桜日家の庭に転移していた。


「あ……っと、問題ない、みたいですね? ワープ成功です」

 キョロキョロと現状確認する姉ちゃん。


 ともあれ俺たちは容易くワープしたのは事実だ。

 ははは、なんでもありすぎて感覚が麻痺してくるぜ。


「うーやっぱり蒸し暑いんだぞ? エーアコン! エーアコン!」

 アズ姉は涼しい部屋を御所望(ごしょもう)のようだ。

 かくいう俺もである。


「我がデータによれば今夜は30℃、熱帯夜なのさ」


 そう言うツキ姉を見てみれば――下に着ていたのか服を脱いで競泳水着になっていた。

 そして颯爽と白衣を羽織る!

 ツキ姉は身長あるし、謎のカッコよさがあるなあ。


 ◇◆◇◆


『コンバンハ。今日ハ、八月三十一日、デス』

 これは、エアコン起動の電子音声。だが。


 フォーーン……!

 ガガガッ ゴッゴッゴ

 クォウォンクォォォ……プシュー……!


 部屋に来てみてエアコンの電源を入れてみたものの、それはそのような音と共に無言になった。


 エアコンが壊れた……?

 ウンともスンとも言わない、最悪の事態。


『コンバンハ。今日ハ、八月三十一日、デス』

 再起動してもカタコトの電子音声が喋るのみだった。


「そんなっ! 20万のエアコンさんがお陀仏(だぶつ)となってしまったのですか!?」

「む、このタイミングで壊れるとはね……!」

「夏だにぇ」


「しかぁし、アレです! エアコンがお釈迦(しゃか)になってもなんのその! 私達には機械に強いお方、藤堂いつきがいますからね!? いつきぃ、直してくださいよお!」


「む、確かにサイエンス・ネオ研究団CEOの我ならば、エアコンを魔改造する事も容易(たやす)いともさ――が、我はもう少しいづるくんのチートを見てみたいのさ」


 ツキ姉は姉ちゃんの胸を見ている。

 アズ姉も視線を送る。無論、俺もである。


「! みんな。チートを見たいのですか? ま、まったくです。しょうがありませんね、大盤振る舞いなのですよっ」


 ――ぽいんっ!


 姉ちゃんの魔法陣がエアコンの中に入っていく。


 フォーーン……!

 ガガガッ ゴッゴッゴ

 クォウォンクォォォ……プシュー……!

 プシュー! プシュー! プシュゥゥゥ……!


 物々しい音と共にエアコンから煙が出ている……大丈夫だろうか?

 すると――!


『あ、テステス。こんばんは、本日(ほんじつ)は8月31日です』


 えぇ……。

 なんと、エアコンは流暢(りゅうちょう)に喋りはじめた。


『こんばんは。私は室温の支配者、エアコン。私が生誕(せいたん)したという、この罪深き日に――総員、祝福せよ!!』


「あれ? 普通にエアコンを直すつもりでしたが、なんだかちょっと違いますね……妙な性格を付与(ふよ)してしまいましたよ!?」


 姉ちゃんのその言葉に――この時、俺は気がつくべきだったんだ。


 全知全能でなんでもできるはずの、おっぱいに秘められたチート。

 姉ちゃんはそれを、万全に使いこなせていないという事を――。


読んでくれて感謝です

もしよかったら応援よろしくお願いします


次話はエアコンが赤面します

またみてね

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