神様のような姉と、ぽいんっ!
「で、です。どうして二人は、突如あのバス停に現れたのですか?」
「それはねぇ。そーちゃんに今夜、桜日家出禁をくらったからにぇ。いつきと、この浜辺でテント立ててキャンプをしてたんだぞ?」
俺たちはバス停から少し移動し、アズ姉の言う浜辺のテントへと来ていた。
なるほど、炊事の痕跡がみられる。
ツキ姉からも説明が入る。
「我らはここで、ウィンナーとジャガイモとパスタを食していた。するとどうだろうか、バス停の方からそーくんの声が聞こえてきたのさ」
「んでね? コソコソと近づいてみたら、途中からね。づっちの声もするようになってきたんだぞ?」
聞き耳を立てていたとは、全くこの二人は。
しかし――という事は。
徐々に姉ちゃんの存在が、この世に顕現できていたという事だろうか?
!!
そういえば、今日あった事を思い返す――!
「……姉ちゃん。今日の事を思い返してみれば、四十九日法要に、変な美少女僧侶にも遭遇したよな?」
「は、はい。確かに」
「神社にも行ったし、霊的存在にとっては、逆境な状況が続いていたんじゃないか?」
「え、えぅ。そうみたいですね……私の決意はなんだったんでしょうか」
「ケツがどうかしたぬぉ?」
「なな、なんでもありませんよなんでも……! あずさ今、私のケツがデカいって言いましたぁぁ!??」
「言ってないょ。んで、本題に入るんだけどさ。づっちのその超弩級おっぱいは何なんだよぉ!? 揉んでいいの?」
アズ姉の発言は、まともではない。
「我も気になっていた。いづるくん! 我の研究の為に、そのおっぱいを揉ませるのさ!」
ツキ姉の言動もまた、まともではない。
しかれども、俺もまた――姉ちゃんの大きくなったおっぱいと、チートに興味がある。
先ほど突如として夜空に咲いた花火。
一万円札が入る自動販売機。
ラムネ瓶から取り出されるビー玉。
あの奇想天外な現象の数々は、姉ちゃんのチートによって引き起こされた。
それになにより、謎の現象が起こる際の音。
――ぽいんっ。
俺は、その音の出所が気になっていたと同時に、だいたいの見当がついていた。
おそらく、あの音は姉ちゃんのおっぱいの辺りが関係しているに違いないという事を。
「はぁ。この胸の辺りについて、カミングアウトする時が来たようですね。蒼司には一度言いましたけれど、私は異世界帰り……それが関係しています」
姉ちゃんは神妙な顔つきで語り始めた。
「そして、更なる事実を伝えましょう! この胸はですね? 私が異世界で、魔王を討伐した際――特典で入手したチートおっぱいなんです!!」
……は?
困惑する俺たちだが、姉ちゃんは続けるーー。
「曰わく、全知全能。曰わく、始まりと終わり。曰わく、至高にして究極――つまりは、このおっぱいはですね? 神に匹敵するチートおっぱいなんです!」
「はぁ」「ふむ」「カニ?」
「カニじゃありませんよぉ!? 神です! なんなら概念改変だって世界構築だって、やろうと思えば出来るみたいです。つまり私は、言うなれば神? いや、女神!?」
みたいですってなんだ。
その大きなおっぱいに手を当てながらも、ウチの姉はなにを言っているのだろうか?
話の規模が大きくなり過ぎて、全くわからない。
「ふふ、私から溢れ出る神の気がわかるでしょうか!?」
姉ちゃんはバカみてぇな主張を重ねる。
はぁ、神の気ね。
姉ちゃんが還って来たという出来事はまあいい。
大変よき、だ。
だが魔王を倒しただの。
概念や世界を作り出せるだの。
挙げ句の果てには神の気だのと、あまりのスケールの大きさよ。
いずれにせよ荒唐無稽なカミングアウトの数々。
俺もそうだが、ツキ姉とアズ姉も困惑顔をせざるを得なかった。
「むむむぅ、みんななんて顔をしてるんですか。信じ込みていませんね? だったら、なにかチートを実践して見せましょう――蒼司。喉が渇いていませんか?」
「え? いや俺さっきラムネ飲ん――」
「蒼司? 喉が渇いていませんか?」
姉ちゃんの圧が強い。
ここは屈する事にしよう。
「あー、うん。コーラが飲みたいな」
「むー。炭酸ばかりではアレですよ? 飲み過ぎると骨が溶けると言われています。ここはお姉ちゃんが、夏にふさわしい液体を用意するので!」
炭酸で骨が溶けるなど、あろうはずがない。
都市伝説か何かだろうか。
それに、夏にふさわしい液体といえばそれこそ炭酸ではなかろうか?
俺の思惑をよそに、姉ちゃんは何やら深呼吸をしている。
「ふぅ。さて、チートをご覧にいれましょう! さあさぁ、お立ち合い。種も仕掛けもーーまぁあるんですけどねぇー?」
謎の小芝居の後、姉ちゃんが指を鳴らす。
するとその豊満な胸の辺りから――。
――ぽいんっ!
謎の効果音と共に、小さな魔法陣が出現した。
さらにその魔法陣からヌッ! とコップに入った液体が現れる!
姉ちゃんはそれをすかさずキャッチした。
ふざけた手品みたいだったが、よくよく見ると氷入りでコップには結露まである。
「麦茶です。飲んでみてください」
そう言われ、渡されると実際に冷えている事がわかる。
ひとくち含むと、麦の香りと冷たさが心地いい。
次の瞬間には、俺はもう一気飲みをしていた。
ゴク……ゴク……!
「くっはぁぁぁ! 凄え。姉ちゃんのおっぱいから麦茶が出たぞ!!」
「い、言い方が妙ですよ!? 正しくはアレです、胸から出た魔法陣が! 麦茶とコップを顕現させただけですぉ!!?」
なんで胸から魔法陣が出るんだよ!!?
「じゃあ訂正してもう一度言うぞ! 姉ちゃんのおっぱいから! 魔法陣with麦茶が出たぞおぉぉ!!!」
「あんまり変わって無いですよぉ! ウチの弟はもしかしてバカじゃないんですかぁぁ!!??」
そうだ、バカにもなろう。
俺がボケて姉ちゃんがツッコミ役をできるこの状況が嬉しくて。
テンションが高くなる! しょうがないね。
俺は改めて姉ちゃんを見る。
おっぱいがバカでかいのもそうだが――。
姉ちゃんはフワフワ浮遊し、スカートヒラヒラさせている。
黒ストに包まれた脚、太ももが見える!
つまり、弟としては目のやり場に困るんだが?
俺はふとした疑問が浮かび上がる。
「そもそも、姉ちゃんはなぜ浮遊してるんだ?」
「うゅ、私にもわかりません……でもほら。こうして実体はあるのですから、幽霊ではないですよ?」
ごく自然に俺の手を握る姉ちゃん。
! 確かに暖かい。
うん、あたたかああああああああい!!
ツキ姉が興味深げに姉ちゃんの爆乳を凝視している。
「ふむ、浮遊……か。我の分析だが――おそらくそのチートおっぱいには、反重力的な力場が発生しているのではないだろうか!?」
「わわ私の胸は反重力エンジンじゃないですよ!?」
「反重力!? すっご! アズも浮遊したいんだぞぉ。ねぇねぇづっち! おっぱい少しちょうだぁーい!?」
「やはり研究せねばならないとみた。我の手で、そのチートおっぱいを揉みしだかさせるのさ! 桜日いづるくん!!」
「ななな、なんなんですかぁ!? アレです! あなたがた全員バカじゃないんですかぁぁ!!??」
騒がしい姉ちゃん達を見て俺は感慨に浸る。
このわちゃわちゃ感は、本来の俺たちだ。
――姉ちゃんが死ぬ前の、俺たちだ。
その姉ちゃんが還ってきて。
夏休みも最終日になって、ようやく日常が戻ってきた感じがした。
夏休み残り数時間、姉ちゃんのチートおっぱいを悪用して思い切り楽しむぞ!
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バカな作品にできるようがんばります
またみてね