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麦茶の雨のちザリガニ日和

 

「えっへん、ブイですよ。ピースピース」


 麦茶と魔孔ザリガニの体液で構成された雨が降りしきる中、勝利宣言する姉ちゃん。


「勝利です――って臭っさ!!!!」

 喜びも束の間、鼻を押さえる。

 この世界は匂いまでも再現されている。


 いかなゲーム世界であろうとも、ザリガニ臭まで再現するとはあんまりでは?

 だが、何はともあれ勝利だ。


 ――ん?

 スキル透明化が解けた姉ちゃんを見てみると、違和感があった。


「姉ちゃん、おっぱい減ってね?」


「ふえ、なにを言って……えっ? そんなっ! 私のチートおっぱいがぁぁ!!?」


「そういえば我も少し減ったがするのさ」

「アズもアズも☆」

 ツキ姉とアズ姉も主張する。


 姉ちゃんだけではない。

 二人も、見た目上のおっぱいが減っていた。


「こっこここ、コレは一体どういう事ですか!?」


 姉ちゃんの疑問。

 俺はそれについて、先のガチャで気付いた事を話してみる。


「もしかして姉ちゃんたち、ガチャ回す時や能力強化する時、有償おっぱいをかなり使った……?」


「は、はい」

「そうだね」

「アズも☆」


「やはり……そういう事なのか?」

 俺はひとりごちる。


 姉ちゃんたちは、与えられた無償おっぱいだけでなく――有償、自らのおっぱいをもガチャに費やしていた。


 俺は独自の推理を展開する――。


「俺の名推理だが、おっぱいptを使用すると、連動して実際のおっぱいが減ると考えられるんだよ。この世界」


「えああ!? だっ、だとしたらなんらかの注意書きが無いと理不尽ですよ! だいたいこの世界作ったの誰ですか!? 抗議しますおぉ!」


 作ったのは姉ちゃん自身だよね……。

 いや、チートおっぱいが作った世界か。

 しかし、この仕様は罠くさい。どこかに注意書きがあってしかるべき。


「……あ!」

 ふと俺は気づく、もしかして、だが。

 ゲーム開始時の利用規約に、書いてあったりしたのか?


「あのですね、私はチートおっぱいでこの世界構築した神なのですよ!? いわば創世神でGM(ゲームマスター)です、減るなんておかしいじゃ――」


 ピンポンパンポーン。

 姉ちゃんの抗議の途中だが、チャイムが鳴った。


『戦闘 お疲れ様でス 利用規約にあったようニ この世界 世界的おっぱいサマーを利用するにあたリ あなた方ノ おっぱいは この世界に還元させて頂いておりまス』


 デスゲーム風音声はそのように言う。

 やはり利用規約に明記してあったのか。


『更に先の戦闘で消費しタ おっぱいモ 回収させて頂きまス ありがとうございまス』


 は? 何言ってんだデスゲーム風音声。


 ――ぽいんっ!

 間をおいて、お決まりの効果音がした。

 だが姉ちゃんの方からではない。

 この世界に響く効果音。


 次の瞬間である。

 姉ちゃんたちは先ほどより胸がーー無かった。


「そんなっ!? さらに私のおっぱいがぁぁ!?」

「くく……我もツルペタ」

「アズは開放的だヨォ☆ ヤハッ☆」


「な、なんて事だ」

 男の俺も、少し減ったのだろうか?

 先の戦闘では俺は、おっぱいptを消化した覚えはないが、男なのでよくわからん。


 胸に手を当ててみる。

 見ればツキ姉とアズ姉も、俺と同じ動作をしていた。

 ほう、以心伝心というやつ! とりあえず揉んでみるとしよう。


 モミモミ……。


「うーん、わからん」

「ないのさ」

「ないヨォ☆」


「ちょ! あなたがた! 自らの胸を揉んでる場合じゃないでしょおぉ!?」


 姉ちゃんのツッコミはさておき、事態は深刻だった。


 胸がない女性陣。

 各々のおっぱいptが枯渇しているならば、モンスターに対応しづらいと考えられる。

 それとは別に、特に姉ちゃんは、せっかくのチートおっぱいを妙な形で失ってしまっていたのだ。


 いざという時に、チートおっぱいでなんとかしてもらうという保険は暗礁に乗り上げた。


「ぐぬぬ……ちょっとこのゲーム世界、離脱してみましょうか!?」


 フヨフヨ弱く浮遊しながらもそう言う姉ちゃん。

 微弱ながらスキルが発生しているのだろうか。


「チートおっぱい発動です! 私達を現実に返してください! ――もしくは、私にチートおっぱいを返してください!!」


 人差し指を立てながら、チートおっぱいを頼りに叫ぶ姉ちゃん。

 しかし何も起こらなかった。

 うんともすんとも、ぽいんっ! とも言わない。


「ふえぇ、そんなぁ……」


「魔法? アズもやるヨォ☆ 出ろ、ファイアボール!」


『おっぱいptガ 足りませン』

「アレ☆?」

 ファイアボールとやらを不発するアズ姉。


「フ、我が手本を見せよう! ファイア・エンチャント!」


『おっぱいptガ 足りませン』

「なにっ」

 ファイア・エンチャントとやらを不発するツキ姉。


 二人は試しにスキルを発動してみたのだろう。

 俺もスキル発動をノリでやってみる。

 今思いついた架空のやつを。


「うおぉぉ! 黒炎を纏え俺の腕ェェ!!」


「バカですか貴方達! 頭炎属性ですか!?」

 姉ちゃんのツッコミで我に帰る。


 俺はノリだったからともかくも。

 アズ姉とツキ姉の、獲得しているであろうスキルは発動しなかった。

 無いのだろう、おっぱいptが。


「おっぱいはこの世界に還元させて頂きます、か」

 先ほどのデスゲーム風音声を思い返し、俺はそうつぶやく。


「うゅ……蒼司ぃ。この世界、性格悪くないですか? 私が利用規約見なかったのが悪いんでしょうか、そうなんでしょうか……」


「そうともいえるが、このままフィールドにいても危険だ」


 俺たちの体力ゲージはまだ見受けられるが、おっぱいptが無いのだ。


「モンスターに出くわす前に、安全な場所。街かギルド? でも探すとしようぜ」


 変な世界だけど、ギルドくらいはあるだろう。


 その時だった。

 ギュイン!ギュイン!

 鳴り響く警告音。


【魔孔ザリガニが現れました】


 ガサ……ガサ……!

『ザ……ザザ』


 仲間の亡骸(なきがら)につられて、魔孔ザリガニが集まってきていた。

 そうだった、魔孔ザリガニの遺骸には仲間を呼び寄せる習性があった。


 3匹、4匹……増えていく。

 ヤバいぞこれは。


 俺たちは戦闘態勢を整えようとしたが、そうする間も無く。


 魔孔ザリガニ群の口腔(こうくう)が一斉に光る!

 ヤバい、泡ブレスが収束する――!


 それは最早ビームとなり、俺たちを襲った。


読んでくれて感謝です

2章はあと二話です

御付き合いいただければ幸いです

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