胸囲とスキルとガチャレート
俺たちはギフト箱、ガチャを開いていた。
なかでも一際、虹色に光る箱があった。
これは――SSR? 星3?
「ふぉ、なんですかこのレインボな箱は!!」
「いわゆる大当たりだぞ姉ちゃん! 開こう!」
箱を開封する!
【幽霊☆3スキル・浮遊】
「うゆ!? 浮遊ですよ浮遊うぅぅ!!!」
姉ちゃんは浮きながらも喜んでいる。
「って私もともと浮いてるんですけど!!?」
! 確かに、言われてみればそうだ。
「しかし姉ちゃん。運的に考えればこういう高レアの排出率は決して高くない」
「☆3って多分、SSR相当だよにぇ☆ 排出レートってどのくらいなんだよォ?」
「ふむ。ソーシャルゲームにおける、高レアリティの排出率は一般的に3%前後と言われているのさ」
「うわ、けちんぼですね。ん? 私が挑戦した幽霊の固有スキルは他に、ピックアップ【物理無効】【透明化】というのが表記してありますね。この二つ欲しいですね……」
「ずっち☆3スキルかあ。いいぬぇ☆」
「ふむ、職業ごとにPUが違うとみたのさ。我らもガチャを回してみるとしようか」
しかし俺は、幽霊スキルを欲しがる姉ちゃんに、注意をしておく。
「姉ちゃんはもう無料券使い切ったから、まだガチャ回すなら貰った5500おっぱいptを消費するしかない。それより、☆3以外にも有用スキルあるかもしれないから全部開けてみようぜ?」
「……わっかりました!」
ん……? なに今の間。
少し不穏だが、まあいいだろう。
ふと見れば、ツキ姉とアズ姉もガチャを開封しているようだ。
さて、俺も回してみるとしよう。
そもそも武器が無い。
こんなところを、もしモンスターにでも襲われたりしたら危険である。
とりあえずはギフト券を一枚使用。
10連だ!
パキィ……!
!! 虹色の箱が見受けられる、幸先いいぞ。
――開封!!
【炭酸術師☆3スキル・コーラ術】
……なんだこれ。
俺の職業はサムライのはずだが、すり抜けで他の職種から変なスキルを取得してしまった。
そもそも炭酸術師とはなんだ?
……なんだろうな?
まあ、いずれ使えるかもしれない。
ギフト箱を開封していく。
【サムライ☆2武器・カタナ】
銘の無い、どこにでもあるような刀。
サムライにおける標準武器。
とある。
よし、なんか普通っぽい武器も手に入ったぞ。
ステータスが上がるはず――ん? ステータス?
そうだった。
ガチャに気を取られて、ステータス画面とかを確認していなかった。
どこだろう――少し探してみると発見。
新しいゲームなどを始める時、ユーザーインターフェースが慣れなかったりするのは世の常である。
少し手間取ったがステータス画面を開いてみると、ある事がわかった。
それは。
手持ちのおっぱいptを振り分ける事で、ステータスの底上げやスキル強化、属性強化などの項目が明記されていた事である。
……もしかして、だが。
「おっぱいptが成長材料でもあるのか……?」
もし、仮にそうだとしたらガチャを回し続ける事は危険だ。
おっぱいptが枯渇してしまう。
確認のためにガチャ画面に戻る。
そこには、有償おっぱいptと無償おっぱいptの使用項目があった。
無償おっぱいptは、スタートの時に貰った5500おっぱいpt。
これが相当するだろう。
だが、有償おっぱいptとはなんなのだろうか?
どこにも数値がない。
……なにか妙な予感がする。
ものは試しだ、有償おっぱいptを使用してみよう。
パキィ……!
【サムライ☆2武器・木刀】
【サムライ☆1武器・新聞刀】
【サムライ☆1武器・ハリセン】
【☆1回復・水道水】
【☆2回復・麦茶】
etc……。
ハズレだ。
だがこれはまあいい、えくないが。
俺の予感、いや。
推理と言うべきか、それが正しいならば、有償おっぱいptとは? それを使用すれば――。
――胸囲が、減るのではないか?
自らの胸に両手を当ててみる。
……減っているのかいないのか、よくわからない。
そりゃそうだ。
自身の胸囲を把握している人間が、どれだけいるだろうか? いやいまい。
「! ちょ、なに自らの胸に手を当てているんですか!?」
気づけば、姉ちゃんがフヨフヨとそばに来ていた。
「あ、ちょうどいいところに。姉ちゃん巻尺出してみてよ。できれば俺の胸囲も測ってほしい」
「?? まきじゃく? きょうい? まぁ、いいですけれども」
――ぽいんっ!
姉ちゃんは手にした巻尺で、俺に抱きつくように胸囲を測る。
「ふんふんふふ〜ん。んん? 蒼司、少し痩せました? お腹周りは減ってもいいんですけれども、胸周りが減るのは感心しませんね。もっと食べて鍛えないと!」
姉ちゃんは俺の胸囲を把握しているのか……?
ふとそのような疑問が頭をよぎった。
が。姉ちゃんの言うように俺の胸囲が減っているのが事実ならば、これはヤバい。
「づっちーー!! もっとガチャ回すゾ☆」
「いづるくん! 有償おっぱいptも試してみるのさ!」
「! 二人が呼んでいるので戻りますね。あ、その前にです。さっき言っていた透明化スキル、手に入れましたよ? 見てください」
スウ……。
すると姉ちゃんは半透明になっていく。
「ふふん、どうです!? この調子で物理無効もゲットしてみせます」
ちょ。
ちょっと待って、姉ちゃんガチャ回し続けて透明化スキルも手に入れてしまったのか?
これは注意しておかなければ。
「姉ちゃん。ガチャを回し続けていると、胸囲が減ってしまうかもしれない――」
「! 脅威、ですか。ふふっそうですね。私たちがスキルとかで強くなって、結果的に脅威が減るのであればそれは万々歳ではないですか?」
そう言うと姉ちゃんは完全透明化する。
消えた、スキル凄え。
……ではなく、俺の言った事伝わったかな?
伝わってるといいな。
伝わってる、大丈夫だろう。
それに、向こうにはツキ姉とアズ姉もいる。
ブレーキとなってくれるに違いない。
そう思う事にした。
それにゲームだし、楽しまないと。
なので、俺はステータスアップや属性強化にいそしむ。
おっぱいptを振り分け、次は属性画面を開いてみる。
【炎属性】【水属性】
【風属性】【土属性】
ふむ……。
属性は今のところ、この四つのようだ。
闇や光、雷は無いのだろうか。
しばらく探したが見当たらない。
となれば悩むほどもない。
ここは男、いや漢ならばやはり炎属性一択だろう。
やがて、ある程度振り分けが完了したその時――。
ガサガサと竹林が揺れる。
闇のオーラを纏い、黒光りする漆黒の甲殻。
見覚えのある、大型のモンスターが出現する。
ギュインギュインギュイン!!!
警報音が鳴り響く。
【魔孔ザリガニが現れました】
「戦闘だ。姉ちゃんたち! 準備はいいか!?」
俺たちは集まり、陣形を組む。
「そーちゃんはリーダー! 指揮を頼むんだよォ! さぁてアズたちのチームワークで、ソッコー脱皮させてやるんだよにぇ☆」
「魔孔ザリガニ……リベンジの刻なのさ」
「ふっふっふ。今の私は無敵といってさしつかえありませんよ!? なにせ透明ですからね!!」
えぇ……姉ちゃんどこにいるの?
とはいえ俺たちの。
この世界における初めての戦闘が開始される――。
読んでくれて感謝です!
もしよかったら応援よろしくお願いします
次話は主人公も透明になります
またまてね




