表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/25

32の日のAUG

 

 姉ちゃんは、ゲーム世界を構築する腹づもりらしい。


「ふふっ、世界構築を発揮する時です。えっと、そのためにですね? 参考にするのでゲームソフトを貸してください」


 そう言われ、サタニック・オンラインをパッケージに入れて渡す。

 すると驚くべきことに、姉ちゃんは服の中にゲームソフトを入れた。


 そして更にモゾモゾと、ゲームソフトを。

 おっぱいの谷間に、挟んでいるようだ。


「これでよし、ですが。うーん何か足りませんね……」


「え? 足りないって何、姉ちゃん」


「えっとですねえ、チートおっぱいさんと対話してるんですけど、他のゲームの要素も取り入れたいと言っています」


 えぇ……。

 姉ちゃんはおっぱいと対話している……らしい。

 にわかには信じがたいが、そう言うのならばそうなのだろう。


 チートおっぱいには意思でもあるのか? 

 ますます不思議である。

 とはいえ他のゲームも取り入れたい、か。


「じゃあこれは? ソシャゲの要素も足そうぜ」


 俺はスマホを姉ちゃんに渡す。

 テキトーにやってるソシャゲが、いくつかインストールされているのだ。

 だいたい微課金だけど。


「ソーシャルゲーム、ですか。いいかもしれませんね! ですが蒼司、課金は程々にですよ?」


 謎の注意。

 こういうところはまるで母さんみたいだ。


 しかし俺の課金は、姉ちゃんからのお小遣いの一部や、叔母さんからの臨時収入を使うくらい。

 倹約家と言えるのではないだろうか。


 そう考えていると、先ほどと同じように俺のスマホも服の中に入れる姉ちゃん。

 そしてそれを挟む仕草。


「ん、チートさんも満足してるようです」


 ほう、チートおっぱいのお眼鏡にかなったのか。

 はてさて、どのようなゲーム世界が作られるのだろうか。

 楽しみである。


「さて、インストール開始です」


 みょんみょんみょんみょん……。


「! はわわ……音が鳴ってます!?」

「変な音だにぇ」

「いづるくんのおっぱいの辺りからなのさ」


 何の音だろうか?


「あ。あまり聞かないでください、コレはアレです……ゲームをインストールしてる音ですぉ」


 みょんみょんみょんみょん……。

 みょんみょんみょんみょん……。


 ゲームをインストールする効果音のようだ。

 姉ちゃんのおっぱいの辺りから、その音が響く。


「すやぁ……すやぁ……」

 急に皆無言になったので、インストール音の他には叔母さんの寝息が聞こえるほどである。


 みょんみょんみょんみょん……。

 みょんみょんみょんみょん……。

 妙な間が、俺たちを包む――。


「!? わぁぁぁ! 12時過ぎてます!?」


 が、姉ちゃんは時計に気付いたのか。

 その騒がしい声で俺たちは我に帰る。

 時計を見れば12時を回り、日付は9月1日になっていた。


「はわわです。いつのまにか、こんな時間でしたとは……!」


「なにを慌てているんだ? 姉ちゃん、学生にとってはまだまだ浅い時間だぜ?」


「あのですね宿題ですよ、宿題! 夏休み明け登校初日にコレが出来ていないとあらば、真面目系で通っている私の沽券(こけん)に関わります!!」


「明日学校だよにぇ。アズは思ったんだけどさぁ。一度死んじゃった人間が浮いて登校して来るとか、ある意味ホラーだよぬぇ」


「とはいえもう宿題などをしている時間はない。どうするのさ、いづるくん」


「どうもこうも。チートを使用します!」


 姉ちゃん胸の辺りから、勢いよく魔法陣が飛び出した。


 ――ぽいんっ!


 俺たちは光に包まれる。

 この光にも慣れてきた。


「今出したチートは、今までのチートとは違います……禁断の(すべ)を使ってしまいました。私は咎人(とがにん)かもしれません……」


「とがにん? 忍者って事なんだよ?」

「! 確かに。響きが忍者っぽいですね、私はとが忍! ニンニン!」


 忍者ポーズをする姉ちゃん。

 可愛い。

 しかし禁断の術とは、なんなのだろうか。


「いづるくん。一見(いっけん)なんともなさそうだが、なにをしたのさ?」


「ふっふっふ、日付を見てみてください。これで宿題をする時間が確保できたというものです」


 ドヤ顔する姉ちゃんだ。

 しかし日付を確認しようにも俺のスマホは、姉ちゃんのおっぱいに挟まれているので手出しができない。


「――タブレットを出すのさ」

 察したツキ姉がタブレットを出してくれる。

 それで日付を確認するとしよう。


 どれどれ……?


 8月()()()――?

 うん? なんか変じゃね?

 間を置いて、はたと気づく。


 8月が、1日増えていたので俺は驚くのである。

「夏休み増えとる!」


「素晴らしいチートだ、いづるくん!」

「8月32日とか、ゲームのバグみたいだにぇ」


 驚く俺たちだが、当の姉ちゃんは考え込んでいた。


「……さて、宿題もそうですが。今懸念(けねん)なのは、先ほどあずさが言っていたように、世間的には私が死んでいるという事実です」


 あ、なるほど。

 その事を思案していたのか。


「葬式もしたから、学園生はづっちが亡くなったと思ってるよにぇ」

「いかな異世界帰りで、実際にはピンピンしているとしても、戸籍上はいづるくんは完全に死んでいるのさ」


「ふにゅう……どうしましょうか? 全校生徒や街の人たちに、記憶改竄(きおくかいざん)でもかけるしかないですかね? やはり私は咎人です……」


 姉ちゃんは、何やら洗脳を示唆(しさ)する物騒な事を言っている気がする。

 それとは別に、俺に天啓(てんけい)が舞い降りてきた。


 ――夏休みを、増やすよりも。

 夏休みをもう一回送ればいいのではないだろうか?

 だって1日増えたんだぜ?


「……姉ちゃん、そのチートおっぱい。1日増やせるトンチキを起こせるなら、時間を(さかのぼ)る事も可能なのか?」


「うえぇ? あのですねぇ、姉の胸をタイムマシンかなんかみたいに言わないでくださぉ――」


「タイムマシン? ――それだ!」

「ふえ?」


 人々に記憶改竄(かいざん)なんかかけなくてもいい、神の(ごと)一手(いって)があった。

 俺はそのひらめきを口にする。


「なぁ、姉ちゃん。タイムリープしようぜ!?」

「ふえっ?」


「時間を(さかのぼ)れば洗脳じみた事もしないで済むし、何より夏休みをもう一度送る事ができる! 宿題もできるぞ!?」


「! そ、それは。良い考えかもしれませんが……」


「Re夏休み? 良いよにぇ」

「そーくん! いづるくん! 素晴らしい案なのさ」

 便乗する幼馴染みたち。


「あ、あのですね? 時間というのは不可逆(ふかぎゃく)なんです。増やすのはギリギリセーフかもしれませんが、アレです! 仮に(さかのぼ)ったら、タイムパラなんとかが起きてしまうかも……?」


 なんだかんだ姉ちゃんは迷ってるようだ。

 あと一押(ひとお)し説得してみよう。


「姉ちゃんのチートおっぱい。それが、人類洗脳マシーンと、夢のようなタイムマシンになるの。どっちが良い? 俺は姉ちゃんに、夢のような存在でいてほしい――!」


「!! あわはわ、夢ですかぁ!? てっててって、照れてしまいますぉぉ――うんうん。タイムマシンが、タイムマシンが良いですね!!」


 ふはは。

 我が姉ながらチョロいぜ。


「ねぇねぇ? マシンとマシーンどう違うんだよ?」


 アズ姉のどうでもいい疑問はさておき、今後の方針が決まった。


 俺たちはタイムリープによって、夏休みをもう一度過ごすのだ。

 ようこそ、夏休み。

 さよなら、二学期。


読んでくれて感謝です

もしよかったらブクマなど応援よろしくお願いします

バカみたいな作品にできるようがんばります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ