表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

おばおぶアルコール飲んでばぶばぶ!

 

 俺たちが、から揚げやタルタルご飯を食べていると。


『皆さま。さらに気分を(たかぶ)らせるために、乾杯してみてはいかがでしょうか?』

 エアコンのこんこちゃんが、よき提案をする。


「そ、そんな。いづるちゃんの四十九日に乾杯だなんて……」


(いいんですよ? 叔母さん。私が許可します! ――ていうかいいんです!」

 段々と声が大きくなる姉ちゃん。


「え、ええ……!? いづるちゃんの声!?」


 戸惑う叔母さんだが姉ちゃんは、さらに畳みかける!


一時(いっとき)でも私の死でみんなを悲しませてしまったのだとしたら、挽回させてください。私の大切な人たちには、笑顔でいてほしいんです!」


 おお、姉ちゃんの啖呵(たんか)

 カッコ良さげなポエムが発動する!


「さぁ――乾杯しましょう、みんなの好みは把握しています! 大盤振る舞いなのですよ!?」


 ――ぽいんっ!


 すると、テーブルの上には飲み物が召喚される。


「叔母さんにはビールです!」

「は、はい! ――って大ジョッキじゃない!!」


「いつきにはドクダミペッパー!」

「! 独特の匂いが、知的好奇心を(そそ)るのさ」


「あずさにはシチリア硬水塩レモン!」

「! 素材の味が活きてるんだよぬぇ」


「そして、われわれ桜日姉弟は麦茶です!」

 麦茶かあ、コーラがよかったな。


「こんこちゃんにも何かあげましょう……!」


 ――ぽいんっ!


「室外機に、ソーラーパネルを召喚しましたよ!?」

『! ありがたき幸せ』


「さてです――ふえぇ、蒼司ぃ。天井に張り付くのは疲れましたよぉ。喉も乾きましたし、乾杯したいので部屋に降り立ってもいいですか?」


 姉ちゃんにそう言われ、俺は叔母さんの方を見る。


「泡がきめ細かいわよぉ! 嬉れたん!!」


 叔母さんは、乾杯の前にひと足早くビールの泡を堪能し、少し出来上がってるようだ。


 グビッグビッ。

 あいや、もう飲んでいる。


「ぷっはぁー。生ジョッキは良いわね! 生! 私の好きな言葉わよ!」

 もう叔母さんは駄目だった。

 まあでも、これなら姉ちゃんの姿を見ても大丈夫だろうか。


「……姉ちゃん。降りて来ていいぞ」


「はい」

 スカート抑えながら、ゆっくりとお尻から部屋に降り立つ姉ちゃん。

「えへへ……蒼司の隣です。さあ、乾杯を――」


「お、お姉ちゃん……?」

 叔母さんは、姉ちゃんを見つめそのような事を言う。

「へぁ? どうしたんですか叔母さ――」


「あさひお姉ちゃん!!」

 姉ちゃんに抱きつく叔母さん。

 ()()()。母さんの名前だ。


「ひんひんひ〜いいんんん! あひんあひん!」

「あわわ、ゆうひ叔母さん泣いちゃいましたよ。にしても変な泣き方ですね……」


「ぶえぇぇぇん! あひんあひん! えんえんひい〜いいんん!! お姉ちゃん、お姉ちゃんんん! 会いたかったよぉ……!」


(――どうやら叔母さんは酔いのためか私の事を、自らの姉。つまり私達のお母さんと勘違いしているようです。ふふっ、そんなに似てますかねぇ)


 姉ちゃんは小声でそう言う。

 うーん、母さんと姉ちゃんが似てる?

 面影はあるけどそこまではないかも。


 もしかしたら若い頃の、学生時の母さんは姉ちゃんに似ていたのかもしれない。

 そういえば、母さんの学生時の写真って見たことないな。


 叔母さんなら持ってるかもしれない。

 幼児退行が治ったら今度見せてもらおう。


 姉ちゃんは、その叔母さんを撫でている。

 柔らかな手、嬉しそうに叔母さんを撫でる仕草は、母性を感じられた。


「あう、あう。えうー、お姉ちゃん好きぃ……! ばぶばぶ!」

 言葉使いも、こころなしか幼くなる叔母さん。

 これが、アラフォーの姿……?


「……アズはさ、思うんだけど。お酒で酔っぱらってるというより、ゆうちゃんセンセ赤ちゃん返りしてない? 大丈夫なの?」


「ふむ。幼児退行現象なら、軽微であれば寝れば治る……かもしれないのさ」


「! 寝れば治るんですね? 普段は美人な叔母さんがこんな感じになってるのは新鮮です。イタズラしたくなっちゃいますね……にへへへ」


「だー、あぅー! ばぶばぶ!」

 その普段は美人な叔母さんは、現在このような感じだ。

 大丈夫なのだろうか。


 ふと見れば、指をわきわきさせながら悪い顔になる姉。

「ふひひ、オムツを用意しましょうか?」


 姉ちゃんは何を言ってるのだろうか? ブレーキをかけておこう。

「……姉ちゃん?」


「おっと、失敬(しっけい)です。ライトに行きましょう、はーいゆうちゃん。から揚げを食べますよー?


「! から揚げ大好物! ばぶばぶ!」


「はーい背徳の味をディップディップしましょうねー」

 姉ちゃんはから揚げをタルタルソースにどっぷりと絡ませる。


「はいとくー! でぃっぷでぃっぷ! もぐもぐ……おいしーい。タルタルすきぃ……! ばぶばぶ!」


 はたから見れば幼児退行した叔母を、あやして食事を食べさせている姪。

 心温まる光景ではある……のかな? そうかもしれない。


「あうー。かんぱいしたい! 就寝前の一杯わよ!」


「あはは……叔母さん、お酒は手放さないんですね。なんにせよ、です」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」


 なんだかんだあったが、みんなで食べて飲む時間が訪れたのだった。


「ばぶぅーーあうあうーー!!!」


 グビッグビッ!

 グビッグビッ!


 ビールを飲み干す叔母さん……いや、アラフォーの赤ちゃん。と言うべきだろうか。


「まだまだジョッキ生はありますよっ!」


 ――ぽいんっ!

 ゴトッ、ゴトッ!

 たくさんの生ジョッキが召喚されていく!


 程なくして叔母さんは、それらを飲んでおねむに。


「むにゃむにゃ……もう少しあさひお姉ちゃんといたいのにー」

「ゆうちゃん、おやすみしますか?」


 姉ちゃんの申し出に叔母さんは渋々うなずく。

 俺のベッドへモゾモゾと入り込むと、まもなく寝息を立てはじめていた。

「すやぁ……すやぁ……」


「女神のような寝顔だにぇ」

「幼児退行していたとは思えないのさ」

「ふふっ、疲れていたんですね。ゆっくり休んでください」


 叔母さんを撫でる姉ちゃん。

 その目は慈愛に満ちている。

 やはり俺の姉はすごい。


 俺も幼児退行して姉ちゃんに甘えたい。

 そんな衝動に駆られるのである。


「さて、明日もありますし天気予報とか見ますか」


『かしこまりました。チャンネルを切り替えましょう』

 こんこちゃんによってテレビ画面が切り替わっていく、その時。


「ん、なんですか今のは。さっきの画面見せてください」

『はい』


 姉ちゃんが気にしたのは、ゲーム画面。

 ――今日の昼からそのままにしていたキャラクリ画面だった。


「! ゲーム機が動いてるじゃないですか。電気代がもったいないですよ蒼司? まったくもうです……ってコレ……」


 そのゲーム画面には、エディット中のキャラクターが映し出される。

 黒セーラーで前髪クロスで黒髪おさげのキャラクター。


「もしかして私、ですか?」


 そうだ。

 姉ちゃんを模したキャラクターを作っていたのだった。

 それを本人に知られてしまった形である――。



読んでくれてありがとお…

よかったらブクマなどお願いします

バカみてぇな作品にできるようがんばりまーす

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ