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十回目の葬儀

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

あの子はただ救って欲しかった。

彼女の妹の見舞いを理由に断られて十回目。十一回目に漸く約束が果たされた。久方ぶりに見る彼女は何時もの柔和な表情は何処にもなかった。随分と窶れていて、やるせなくて、怒りだけが張り付いた顔だった。そんな状態で指定の場所にいた。

僕が一つ質問を投げると、ただ曇りきった顔のままにぽつりと一言。『今日はサボったんだ』とだけ言ったり。

絶句する僕に対し、彼女は虚ろに唇を動かして、自分に言い聞かせる。

「行く意味なんかない。私の事も分からないのに、行く意味なんかない」

「あるよ。これで最後になるかも知れないんだ」

『サボった』のは彼女の妹の見舞い。昏睡状態で、このまま息を引き取るかも知れない妹の。これが最期になるのなら、間違いなく彼女に大きな傷を残す。

早く帰らせないと。見舞いに行かせないと。そう思って無理に手を引いた時だった。思い切り空いてる方の手で腕を引っ張ったかれた。

顔を見る。目は怒りに燃えていた。唇を強く噛み締めて、今にも血が出そうだった。

「十回行って十回とも意識なんかなくて、こっちばかりが傷付いて馬鹿みたい。私は十回もの妹の葬儀を経験しただけ!! ただそれだけ!!」

彼女は掴まれた手を振り払うと、俯いて絶叫した。握り締めた拳が、伸ばされた腕が、背が、彼女の今の苦しみを物語っていた。

「死ぬ死ぬ言われて、これで最後だからと言われ続けた末、会うこっちの気持ちが分かる? 最後の気持ちで会いに行ったら、無理矢理延命させられて、結局数ヶ月無理矢理生かせれて、本当に醜悪!!」

反芻されるらしくない憔悴した声。十回目の約束が果たされなかった時に通話した、行き場のない静かな怒りと嘆きの数々。

幾重にもチューブが繋がれたのだと。両親は妹の事などどうでも良のだと。ただどれ程の事を妹に『してきた』のかを周りに誇示したいだけなのだと。

優しくて、甘い彼女はそこには居なかった。ただ全てに絶望した闇だけが聞こえていた。

「□ね!! 何奴も此奴も最低!!」

気が付くと思い切り平手打ちをしていた。ぱしんと、乾いた音が当たり一面に響き渡る。

「間違ってもそんな事を言うんじゃない。僕が好きなのは潔癖な君だ」

「そうよね、貴方はそういう人。今日はもういい。帰って言われた通りに見舞いに行くわ。じゃあね……」

恋人の関係を思って書いてます。

辛いことを互いに受け入れられる程の深い関係。


約束を破るのは、破った方も、破られた方もそれなりに負担になります。

それが体調不良しかり、見舞いしかり、葬儀しかり、やむを得ない理由であっても。

感情ってそんな簡単なもんじゃないんで。


だから『死ぬ』という約束を破り続ける妹よりも、私との約束を守ろうとする彼を選んだんです。


次は『死んでいる』と言われ続けて会ってるのに、最後じゃない。

辛いという気持ちも忘れてしまった。

自己顕示欲を満たす為に延命を続ける親。

終わりの見えない人の醜悪さ。

そうして恋人からの拒絶。


救われたかっただけなのに、闇堕ち寸前ですよ。

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