テスト本番
土曜日に高島さんと勉強会をした後も、勉強は続けた。日曜日はもちろんのこと、月曜日と火曜日も放課後の遅い時間まで残って勉強していた。
水曜日になり、いよいよテスト本番だ。
今日は文系ばかりのテストの内容だ。まず世界史で、次に現代文、最後は現代社会という順番だ。現代文の漢字は少し不安だが、問題はないだろう。
3教科のテストが終わった後、昼前に学校は終わる。今日は早く家に帰って明日のテスト内容を勉強しようと思う。明日は苦手な古典がある。
教室から出ると廊下に高島さんが立っていた。俺の顔を見ると手を振ってくる。
えっ、なにこれ、可愛いですけど、
「宮野くん!お昼ご飯食べて帰ろうよ」
「ごめん。明日は苦手な教科だから早く帰って勉強したいんだー」
しゅん。という擬音語が見えるくらい落ち込んでいる。それを見ると、まるで俺が悪いことをしているみたいに感じる。しかし、俺は悪くない。
「……そっか。そうだよね、今までずっと私の勉強を見てくれていたもんね。全然、気にしなくていいから!」
いつもの笑顔をむけてそういう。一見、いつも通りに見えるが、俺の罪悪感からかいつもより、元気がないように見える。
そう思っていると、無意識に口走っていた。
「明日!お昼ご飯一緒に食べようよ」
「ほんと?やったー!明日だね。これで明日のテストも頑張れそうだよ!」
俺と昼を食べるだけで、随分と大袈裟だなっと思う。とか言いつつ、にやけるのを我慢するので必死だった。
「じゃあ、また、あしたー」
手を振り自転車置き場に向かった。
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家につき、カップ麺を食べる。電気ケトルでお湯を沸かしていると、眠そうな顔をした猫がやってきた。
おう、帰ってきたんか?寝起きやけど、きてやったぞ。撫でろや。
とちょこが言ってるように見えた。仕方がないので撫でてやる。まあ、お湯が沸くまで暇だったし。
お湯が沸くと、撫でるのをやめて、お湯を注ぐ。そして、スマホのアラームを3分つけて待つ。また暇になったので撫で始める。
3分後、アラームが鳴り響く。俺は撫でるのをやめる。すると、えっ?やめるんか?という顔をするが、俺は気にしない。いくら、顔をすりすりしてきたとしても、気にしない。どんなに可愛い声で鳴いても、気にしない。
はっ!アラームが鳴ってから何分経った?
うわ。5分近く経っている。
カップ麺の蓋を外し、麺をすする。麺は少しのびていた。
猫を飼っている人は気をつけよう。奴らがいると、こういうことになる。奴らは敵だ。倒すことのできない、最強の敵に違いない。
昼飯を食べ終わった後、少し眠くなって来る。しかし、我慢して古典の勉強を始めた。
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テスト、2日目が終了した。
今日は古典、化学、物理の3教科だった。古典は思ったよりできたので、一安心だ。
ホームルームが終わり、解散となった。今日は高島さんと約束しているから、3組の廊下で待っとく。
ぼっー。待っていると2組の教室から出て来る、佐々木さんの姿が見えた。そして、伊藤に話しかけられ楽しそうに喋っている。
佐々木さんは伊藤のことが好きだと予想していたが、あの様子を見ると確信に変わった。
佐々木さんと伊藤の話は終わったみたいだ。そのまま別れている姿を見て、ホッとしてしまう。しかし、その幻想はすぐさまに打ち砕かれた。
「また、後でー」
伊藤は去りながら、そう言った。
また?後で?
どういうこと?いや、そんなこと考えなくてもわかるだろう。デートだ。
あぁ、俺の目の前でそんな姿を見せないで欲しかった。
「お待たせー。ごめんね、遅くなって」
高島さんの声によって、現実に返される。目の前の美少女を見ていると、さっきまでの悲しさとかが薄れていくように感じる。
しかし、自分の心に空いた穴が埋まることはないみたいだ。
「いや、大丈夫。じゃあ、お昼はどこで食べる?」
視界には高島さんと、友達と喋っている佐々木さんが映っている。佐々木さんがこちらを気にしているように感じるが、気にしているのは俺なんだろうな。
「じゃあ、ワックにでも行こうよ」
俺は上の空だったが、高島さんは俺の方をまっすぐ見て答えた。今の自分は相手に失礼だと思い、気合を入れ直す。
「おっけー。じゃあ、行こっかー」
そう言い、高島さんと階段のほうに歩いていく。高島さんは友達にまた、あしたー。と挨拶している。俺はそんな高島さんを見ずに、佐々木さんの方をチラチラ見ながら歩いていくのだった。
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ワックについた。ワックは大手のファストフード店で学校から近いため、学生が大勢来ている。
少し並んだ後に注文する。ハンバーガーのセットを頼み、俺と高島さんは注文した物が出て来るのを待つ。
「やっぱり、たくさんいるねー。てか、うちの生徒ばかりだね」
人が多いため、高島さんの声は聞こえづらかった。まあ、高島さんの声は少し高いため、声が小さい割に響くためなんとか聞き取ることができた。
「だね。知った顔がいっぱいいる」
俺たちの番号が呼ばれた。1つのお盆に全部乗っている。結構、一杯一杯で持っていくのが大変だ。
食べるところを探すが1階に空いている席はないみたいだ。2階にいくと結構空いていたので、端っこの席に座った。
「ワック、久しぶりー」
高島さんはジャンクフードをキラキラした目で見ていて、その姿を見ると微笑ましく思う。もしかして、あまりこういうのは食べないのかな。俺たちはハンバーガの包みをとって食べていく。
ハンバーガを食べ終わった後、ポテトを食べていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「佐々木さんとご飯食べれるなんて、夢みたいだよ!」
「伊藤くんは大袈裟だね。誘ってくれたら、また行くよ」
恐る恐る、後ろを振り返ると、予想通りの人物がいた。伊藤と佐々木さんだった。
ふと、さっきのやりとりを思い出す。また、後で。と言っていた。これは後で昼ごはんを一緒に食べるということだったのか。
俺は伊藤と一瞬目が合う。俺が佐々木さんを好きだったことは知っているはずだ。少し、気まづそうにするかと思ったが、俺を気にすることはなかった。伊藤は俺なんて眼中にないってことなんだろう。
佐々木さんも俺たちがいることに驚くこともなく、当たり前のように空いている席に座った。まあ、佐々木さんも俺なんて眼中にないんだろう。そう考えるとまた、胸が苦しくなって来る。
ただ、幸いなのは俺から見えない席に座ったということだ。見えていると高島さんと喋っている時に余計なことを考えてしまいそうだった。
「わー!見てー、この動画」
病みそうな俺に対して、いつも通りのテンションで高島さんは言ってきた。
動画には何匹もの猫が日向ぼっこしているだけの動画だった。前に俺が家で猫を飼っていると話を覚えていたのだろう。
「猫は飼っているけど、わざわざ動画を見るほど好きってわけじゃないんだよ?」
「えっ!?そうなの?」
やはり、俺が猫好きって勘違いしているみたいだ。俺は高島さんに正しい認識をしてもらおうと説明する。
「別に俺は猫が好きなわけではないんだよ。ただ、猫の下僕として猫の幸せを願い、猫に安らぎをもたらし、猫に尽くしているだけだよ?」
「へー、そうなんだ。それで好きではないと?」
なんか、高島さんからの冷たい目線が感じるが、気のせいだろう。
「そう、決して猫が好きってわけではないんだよ。だから、こんな動画なんか見せられても……」
「じゃあ、これは可愛くないの?」
そう言い、また新しい動画を見せてきた。
日向ぼっこしている子猫が段差から落ちてしまい、それを何事もなかったようによじ登り、また日向ぼっこを始める猫。
「ふぉぉぉ。可愛いー!日向ぼっこしているだけでも天使なのに、落ちた後の反応がまた!このキョトンとした顔が可愛すぎる!」
つい、早口で興奮してしまった。そんな俺を無視して、高島さんは大爆笑している。
「やっぱり、好きじゃん」
「そうですよ。好きですよ!何か文句でもある?」
俺は冗談っぽく、言った。
笑うのが少し落ち着いてきた高島さんは
「何も文句なんてないよー。ただ、隠さなくても笑。猫を可愛がっている宮野くん、可愛いね」
男に可愛いっていう言葉は褒め言葉になるのだろうか?いや、そんなことより恥ずかしくてたまらない。
俺は恥ずかしさを誤魔化すために頬をかいていた。
高島さんと話しているとさっきまでの病みそうな心が晴れていたのが分かった。もしかして、俺のことを気を使って猫の話を振ったのだろうか?
俺が佐々木さんに告白したのは知っているだろう。俺が元気がないのを察したのだろうか?高島さんはなんで優しい子なんだ。こんな子と付き合ったら幸せだろうなー。
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今日は金曜日!花金であり、テスト最終日である。いつもよりテンション上げ上げしております。
席に座り、テストの準備をする。筆箱はテスト中に出すことができないから、筆記用具だけ出す。
あれ?この消しゴム、俺のじゃない。
というか、高島さんの消しゴムだと思う。昨日、ワクドで勉強した時に混ざってしまったのだろう。返しに行くべきだな。
そう思い、隣のクラスに行く。隣のクラスには行く機会がないので少し緊張する。まあ、時間もないしうかうかしてる暇はない。
3組の前まできた。高島さんの姿を探す。簡単に見つけることができたが、それ以外にも厄介な人たちもいた。
上田と大久保が高島さんと喋っていた。
心臓の高鳴りがうるさくなるのを感じる。嫌な予感もする。このまま、見つからないように自分のクラスに戻ろうとしたが、高島さんと目があってしまった。
俺を見つけた時の顔は今まで見たことのないくらい、怖い顔だった。高島さんに続き、上田と大久保にも見つかった。
このまま、去っていきたかったがそうもいかなかった。
「宮野じゃん。美歩に会いにきたのか?」
今日はあまり、上田からは悪意を感じないが、大久保が笑いを堪えている。それに高島さんは完全なる無表情だ。こんな顔見たことがない。
なんだろう?不気味だ。
「高島さんに用があって、消しゴムが紛れていたから」
そう言い、机に消しゴムを置く。
「わざわざ、ありがとう」
無表情のまま、言った。今までの高島さんとは同一人物とは思えない反応だった。
ここに長く居たくないと思い、じゃあ。といい自分のクラスに戻る。
今回は通せんぼうされることはなかったが、テスト前に集中力を削ぐイベントに遭遇したなと呟いた。
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テストは無事に終わった。気になることが起こったが、幸いにも集中力に問題はなかった。
ホームルームが終わり、教室を出た。3組は既にホームルームが終わっており、高島さんはいなかった。
特に用事なんてなかったが、心のどこかで高島さんは廊下で待っているかもと。考えていた。
まあ、高島さんが何かしらの理由で俺に近づいてきたのは確実だろう。テストも終わったし、もう話しかけられることもなくなるかも知れない。そう考えると、寂しいと思ってしまうほど高島さんとの時間は楽しかったみたいだ。
はぁー。また、この感じか……
まあ、前に比べたら全然マシだし、今日はうんとゲームしよう。そして、嫌なこととかは忘れよう。
また、月曜日からは再び俺の日常を過ごそう。
自転車に乗り、家に帰る。昼は冷凍食品を食べて、眠くなってきたから寝る。
寝る前に寂しいと思ったのは、猫がそばにいないからだと思いたかった。
目が覚めた。スマホで時間を見ると、17:03だった。4時間ぐらい寝てしまったみたいだ。1、2時間で起きようと思っていたけど、失敗した。まあ、そのおかげで寝る前に感じていた感情は薄まっていた。
ん?メッセージが来てる?
時計を見ていて、気づくのに時間がかかったがメッセージが来ていた。差出人は予想通り?いや、予想外の人物だった。
メッセージの差出人は高島さんだった。
「土曜日か日曜日に会いたいんだけど、話したいことがあるの」
話したいこと、ときたか……
一体、今更何を話すのだろう?俺はもう、話すことはないと思っていたのに。
高島さんが話したいことを俺が聞いて、俺に何のメリットがあるのだろうか?断るべきだと、頭では分かっている。しかし、
「いいよ。前と同じで土曜日の13時にファミレスで会おう」
これで最後だ。俺が高島さんに対して、愚かな判断を下すのは。
頭では上田と大久保が関係していると分かっているのに、もしかして告白されるのかも!?とか考えてる俺がいる。
男って、なんでこんなに馬鹿なんだろう?




