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デート?当日

 土曜日の午前9時。

 土曜日はいつも、11時ぐらいに起きているが今日はなぜか早い。まあ、その原因は分かっている。


 昨日は寝るのがいつもより早かった。金曜日は大体、夜更かしをするため、次の日に起きるのは遅くなる。しかし、昨日は早めに寝たので、平日に起きている時間に起きた。まあ、流石に早すぎたので、休日の特権を行使して、この時間になった。


 リビングで今日、教えるための準備をする。まずはテストの対策を行う必要があるため、担当している先生の性格を考えた上で出題される問題を問題集やプリントからピックアップしていく。


 この作業は数学と英語だけで1時間かかった。しかし、テストはこれらだけではないため、高島さんが苦手そうだと感じた教科も同様のことを行った。


「あれ?あんた、午前中に勉強とは珍しいね」


 仕事が休みで今、起きてきた母が聞いてきた。確かに、いつもは夕方以降に勉強をしていた為、珍しいだろう。ここは適当に嘘を吐こうと思ったが、どうせ後で家を出ていく。正直に答えようと思った。


「1時から友達と勉強会をするから、その準備をしてた」


 ニヤニヤしながら、母は聞いてきた。


「へー。友達ねー。もしかしなくても、愛ちゃんのこと?」


 絶対にそういうと思った。だから、言いたくなかったんだ。俺も一緒に勉強したかったよ!

 まあ、前々から拒絶されていたことを最近になって察したけど。泣けるなー。


「違う。友達だよ、友達」


「そー。夕方には戻ってきなさいよ」


 平然を装ったが、母から見ると様子がおかしかったんだろう。いつもなら、追求してきそうだったが今回は何もなかった。


「分かってるよ」


 俺がそう言い終わる前に母はリビングから出て行った。2度寝しに行くのだろう。あんたも、休日の特権を行使しにいくのか……。血は争えないな。


 時計を見ると針が12を過ぎていた。やばっと思い、慌てて準備を始める。

 軽くお昼ご飯を食べて、カバンに荷物を詰めていく。結構な量になりそうだが、いつも学校に持って行っている量よりかは少ない。


 12時半に家を出て、自転車に乗る。学校近くの駅前だから少し時間がかかる。

 いつもの通り慣れた道を走って、駅前のファミレスに着く。スマホで時計を確認すると12時51分だった。


 ちょうどいい時間に来れたと思い、高島さんの到着をファミレス前で待つ。その間に制汗シートで汗を拭い。臭いも消す。

 それから、5分後に少し汗をかいた美少女。ではなくて、高島さんがやってきた。いや、高島さんが美少女ではないという意味ではない。

 フリフリしている薄い青のワンピースを着て、二の腕とふくらはぎがいつもより、よく見える。その姿を見て、ドキドキする。

 高島さんは可愛いと実感する。そんな子と2人で会うのは、普通に緊張する。


「来るの早いねー!待たせちゃった?」


 少し息を荒げている。駅前から小走りできたのだろうか?申し訳なく思う。駅に迎えに行けばよかったと後悔する。


「5分くらいしか待ってないよ。暑いし早く中に入ろう」


 そうだね。と言い、ファミレスに入る。定員さんに席を案内された。端っこの席だった為、椅子とソファーがあった。俺は椅子側に座り、高島さんは正面のソファ側に座った。俺の席から大きな窓があり、よく外が見える。


 店内は涼しいー。

 メニューを取り出して、どうするか話す。


「やっぱり、ソフトドリンクはいるよね?それとプラスで何頼む?」


「そうだねー。私はピザが食べたいから、ピザとソフトドリンクにするよ」


「おーけー。俺はフライドポテトにしようかな」


 お昼は食べてきたので、軽いものを頼むことにした。後で甘いものを頼むのもいいかもしれない。しかし、それは勉強のご褒美にしよう。


 ピンポン


 店員を呼んで、ピザとポテトフライ、そしてソフトドリンクを頼む。頼み終わった後に高島さんはありがとー。と一言言ってくれた。

 こういう一言を言ってもらえるのはなんだか、嬉しい。

 我ながら、ちょろいなー。と思って苦笑いしてしまう。


 俺と高島さんはソフトドリンクを取りにいく。

 俺は炭酸飲料。高島さんかは紅茶を入れていた。本当に紅茶が好きなんだなと思った。紅茶は淹れるのに少し時間がかかるみたいだ。俺は先に戻ってるね。といい、席に戻った。


 席に座り、飲み物を吸っていると席に戻ってくる高島さんを振り向いて見る。全身が正面から見えて、2度目だが可愛いと実感した。


「なにー?」


 席に座る高島さんが俺に聞いた。あまりにも凝視し過ぎたみたいだ。俺は高島さんに喜んでもらえることをしようと思った。女の子に喜んでもらうにはやっぱり、褒めることだろう。


「今日の高島さんは凄く可愛いね!フリフリしていて、夏っぽい色合いのワンピースが高島さんに凄く似合っているよ!」


「えぇ!急にだね!でも、ありがとぅ」


 顔を少し赤くなりながら、そう答えた。いや、顔だけでなく、耳まで真っ赤だ。

 可愛いな。

 正直、言われ慣れていると思ったけどそんな可愛い反応されると、俺も恥ずかしくなってくる。


「そ、そんなことより今日はどうするの?いつも通り?」


 恥ずかしさを誤魔化すように高島さんは勉強の話をしようとする。もう少し、この可愛い反応を拝んでいたいと思ったが、そんなことをすると嫌われそうなのでやめておいた。


「テスト前だから、出題されそうな問題だけを解いていこう」


 勉強を道具を出しながら、解いてもらう問題を見せる。


「うわー。ほんと凄いね!この問題はどうやって決めたの?」


「担当の先生が出しそうな問題を考えるんだよ。授業中の言ってたこととか、先生の性格とかを参考にして」


 高島さんは眉間に皺を寄せて、驚いているみたいだ。まあ、普通はそんな反応するよね。でも、成績上位者はよくやる手法だと思うんだけどな。


「ちょっと、何を言っているか分からない」


「まあ、絶対に役に立つとは言えないけど、結構当たると思うよ」


「そうなんだ。まあ、宮野くんのやる事なら信じてみようかな!」


 その言葉に嬉しいと思いながら、バレないように平然を装う。てか、信じるとか!初めて言われた!女の子に!

 信用されるって結構凄い事だよね。


「じゃあ、さっそく勉強を始めよう」


「よろしくお願いします!せんせい!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ポテトフライとピザがやってきた。一度勉強をやめて、もぐもぐと食べ始める。俺は箸でポテトフライを食べていく。これだと手が汚れなくていい。


 なぜか分からないが、高島さんは俺が食べているとことをじっと見ている。初めは気のせいかと思ったが、あまりに見てくるので気のせいではないと思った。さっきの仕返しだろうか。


「そんなにじっと見られると、気になるんだけど?何かあるの?」


 高島さんは慌てながら、答える。


「ごめんなさい!前から思っていたんだけど、食べ方が綺麗だなって思って……」


「そう?普通に食べているだけだよ」


 そんなことを言われたのは久しぶりだ。

 まあ、男は食べ方が汚い奴が一定数いるからな……


「その普通の食べ方が男の子は下手だよね」


「はは。そうかもなー」


 高島さんの周りの男は食べ方が汚い奴が多いみたいだ。まあ、俺は綺麗に食べることを常に意識している。


 俺はフライドポテトを食べ終わり、もう一度ソフトドリンクを取りに行く。綺麗にピザを食べている、高島さんのコップを見ると、空っぽだった。


「飲み物、取ってくるよ?何がいい?」


「ありがとー。助かるよ。じゃあ、リンゴジュースを取ってきてもらっていい?」


 おーけ。といい、自分と高島さんのコップを持っていく。俺はコーヒーとリンゴジュースを入れて席に戻る。


「ありがとー。宮野くんは何飲むのー?」


 俺のコップを覗き込んでくる。


「わー!コーヒー?おっとなー」


「コーヒーぐらいで大人って……そこに反応するって子供ぽくない?」


 高島さんのこういうところが可愛いと思う。コーヒーぐらいでこの反応をされるとは。

 俺も中二病のように、コーヒーを飲んでる自分に酔っているわけではない。本当に好きだから、飲んでいるんだ。

 でも、ミルクは入れる。


「あーれー?ブラックじゃないの?」


「ブラックは苦すぎるもん」


 俺は少し唇を尖らせながら言った。その言葉を聞いた後、高島さんはくすくすと笑い始めた。

 なんだか、今日の高島さんは学校でのテンションより高い気がする。


「ブラックが苦すぎるって、正直に言って偉いね」


 笑いながら、そう言った。俺は少し恥ずかしくなりながらも一言、ありがと。と言うと高島さんはさらに笑った。


 俺は少し体温の上昇を感じながらも、何事もなく勉強を再開しようとする。しかし、正面の大きな窓からあの人の姿が窓から見えた気がした。

 俺はガサっと窓の方を注視した。


「ん?どうかした?」


 高島さんも後ろの振り向きながらそう言った。

 やっぱり俺の気のせいだった。窓の外には住宅街しかなく、そこにあの子の姿はない。当たり前の話だ。


「いや、何でもないよ。ごめん」


 そう言い、俺たちは勉強を再開するのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 夕方、6時を過ぎた。学校でするのと同様に、しっかりと勉強ができた。誰かと勉強をしていると結局、勉強をしないって言う現象が起こるが、高島さんとならそうはならない。

 そういうところも、俺にとっては居心地のいい雰囲気なんだろうと思う。

 しかし、暗くなる前には帰らないといけない。母さんにもそう言われたし。


「そろそろ、帰ろっか?」


「そうだね。私も7時には帰るって言ってきたから、帰ろうかな」


 注文の明細書をレジに持って行き、分けて会計を行ってもらう。どちらも数百円程度で、改めてファミレスのコスパの良さを実感した。


 外に出て、自転車のカゴに荷物を入れる。


「俺は自転車だから。高島さんも気をつけて帰ってね」


「うん。ありがとう

勉強のこともそうだけど、色々とありがとう!今日はすごく楽しかったよ!」


 楽しかったの?勉強していただけだよ?


 とか、捻くれたことを考えてしまうが、俺も楽しいと思っていたことを思い出した。


「俺も楽しかったよ!高島さんとは気が合うのかもしれないな」


 市街地に落ちていく夕日を眺めながら、そう言った。


「ほんと!?私も同じことを考えいたんだけど、宮野くんもそう思ってくれていたのはびっくりだよ!」


 夕日からの逆光で高島さんの顔がはっきりとは見えないが、凄く喜んでいるように見える。

 逆に俺の顔は高島さんからよく見えているのだと思うと、恥ずかしくなり、少しそっぽを向く。


「まあ、とりあえずはテストを頑張ろう!来週からもよろしくね」


「お世話になります。これからもよろしくお願いします!先生!」


 そう言い終わると、俺たちは顔を合わせて笑い始める。なんか、今日は久しぶりに心の底から笑えている気がする。


「じゃあね!暗くなる前に帰るね!」


「うん。また、月曜日に」


 別れの言葉を交わした後に自転車に乗り、帰路に立つ。いつとはあまりしない、立ち漕ぎしながら、通学路を滑走する。いつもの通学路にも関わらず、今日はいつもとは全然違う場所を走っている気分になる。


 夕日も落ちてきて暗くなった頃、立ち漕ぎをするのがしんどくなってきた。そして、いつも通り座りながらダラダラとペダルを漕いでいると急に冷静になった。


 さっきまでのわくわく、ドキドキしていた感情は夕日と共に落ちていったのを感じた。

 そして、自分は一旦何をしていたんだと思った。


 今日の勉強会も罠だと考えていたはずなのに、警戒することもなくただ、楽しんでいた。上田や大久保の憎たらしい顔を思い浮かぶこともなく、ただただ勉強した。


 数分前まで自分の中にあった感情を理解することができなかった。いや、理解はできる。しかし、それを納得することはしたくなかった。


 それに今日、高島さんに会ってからは愛のことを考えることはなかった。姿っぽいものが見えた時はびっくりしたが、それ以外では全く考えなかった。ずっと、高島さんのことを考えて、勉強をしていた。


 本来、未練を捨てることができた!と喜ぶはずだが、俺は素直に喜ぶことができない。

 自分が望んでいた、ことが起こったにも関わらず、喜ぶことができないとは一体どういうことなのだろう?


 いや、自分は自分のことをよく理解している。このまま、愛の存在が俺の中から消えるのが嫌で、寂しくて、苦しくて、辛かった。

 ここ数日、振られた相手を忘れることができなくて、辛かったが、忘れていくのも辛くなるとは……


 どっちにしても辛くなる。辛いのは嫌だ!当たり前だ。

 これの解決策を俺は分かっている。わかっているが、叶わなかった。もう、絶対に叶うこともないだろう。


 あぁ、愛と付き合えていたらこんな気持ちにはならなくて済んだのに。



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