デート?の約束
火曜日、今日はいつも通りの時間に自転車に乗る。昨日は朝早くに家を出た。もう朝から勉強会は嫌だなとごちる。
教室についた。相変わらず、俺と喋る人は誰もいない。
佐々木さんはもう来ている。
だから、なに?って話だけど、残念ながら佐々木さんを目で追ってしまう。
いつになったら、気にしなくなるのだろう。まあ、まだ1週間も経っていないし、時間が解決するだろう。
ホームルームが始まる5分前に高島さんの姿が見えた。今日は俺のところには来ずに、上田と話している。これが普通だよなー。俺と高島さんの関係性はこれくらいでちょうどいい。
1時間目の準備をしながら、軽く予習を行う。
勉強はもう、しないと決めていたのにどうやら、今まで染みついたものはそう簡単には辞められないみたいだ。
予習をしていると前の方から誰から気配がした。
「予習してるの?偉いねー!さすが宮野くん!」
さっきまで上田と話していた高島さんが俺の目の前にいた。どうやら、この子のコミュ力はモンスター級みたいだ。俺みたいコミュ力がうじ虫とは比べ物にならない。
「まあ、癖みたいだものだよ」
「そうなんだー!癖になるってすごい!
それでね、もしよかったらこれからも勉強を見てもらっていい?テストが始まる前まででいいから……」
学生の地獄イベントはもうそこまで来ていた。確か、テストは来週の水曜日からだったかな?まあ、俺はテストとかを考えている余裕がなかったため、うろ覚えだが。
「テストって来週の水曜日からだったけ?」
「そーだよ?」
「いいよー。水曜日まで放課後?になら勉強をしても」
「うん!ありがとうー。私も放課後でいいよ!」
今後の話がまとまってきていたら、担任が入ってきた。
「キーン。コーン。カーン。コーン」
「じゃあ、お昼にまたくるね?」
「あぁ、うん」
お昼に来る?なんで?
また、ご飯を一緒に食べないと行けないの?
あれは精神的に結構きついんだけどなー。まあ、うんって言っちゃったしもう、どうしようもないか……
態度では嫌々って感じを出しているが、心の中ではワクワクしている自分を否定する。心の中の期待感を潰す作業を何回行なっているか分からないくらい繰り返している。
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お昼なった。あまりお腹は空いていない。なんか、色々と考えていたらお腹いっぱいになった。
「お昼ご飯たべよー」
高島さんがやってきた。
また、昨日のようにお弁当を広げていく。今日は昨日ほど注目を集めていないようだ。まあ、慣れてきたということか?
俺は高島さんに前から気になっていることを聞いてみた。
「そういえば、前から気になっていたんだけど、どうして俺に勉強のことを相談したの?」
「えっ?いや、別に理由とかないよ」
高島さんは動揺しているように見えた。いや、気のせいか?もう少し、問い詰めてみるか。
「まあ、最近色々あったから、びっくりしたんだよね。本当に理由とかないの?」
俺の色々という言葉に反応した。やっぱり、何かある気がするが残念ながらそれを答えてはくれないみたいだ。
「そうなんだ。私はただ、頼れる人がいなくて……それに前から宮野くんと仲良くなりたかったの」
勉強を教えてくれる都合のいい男がいなかったってことか。俺と仲良くしたかったっていうのは嘘に決まっている。
すなわち、上田と大久保にたぶらかされて俺に近づき、さらには楽してテストを乗り越えようっていう魂胆か!やっぱり、俺は名探偵になれる。
それなら、早く勉強を教えるのも止めるべきだな。このまま勉強を教えていても、俺にメリットはない。
メリットなんて無いったらない!決して、女の子と2人で話すことがメリット!とか、もしかしたら俺に惚れるかも!とかそんなことはまったく、全然、これっぽっちも考えていない。
「次、体育だから、少し早いけどもう行くねっ!」
頭の中で悪魔と天使、いや、期待感と理性が戦っていると、高島さんはそういい、席を立ち上がった。
「うん。また後で」
当たり前のように放課後に会うと考えている自分に戸惑いながらも、手を振って高島さんを見送る。
俺は1人になった寂しさを埋め合わすように、本を読み始める。
「キーン、コーン、カーン、コーン」
午後の授業がはじまるみたいだ。本を閉じで準備をする。
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授業が終わり、今日は解散となった。本来なら帰るところだがしばらくはそうはならないだろう。
まず、飲み物を買いに行く。今日も紅茶を2本。
教室に帰ってきたが、まだ高島さんは来ていなかった。このまま来なかったら良いのになと思ったが、残念だからそうはならなかった。
「ごめんねー。ホームルームが長くって」
「大丈夫だよー。今日もこれあげるよ」
紅茶の無糖を差し出す。高島さんは遠慮しながら受け取った。そして、俺の方を向き少し怒った顔をして言った。
「もうっ!次は買わなくて良いからね!私が買ってくるから!」
怒った顔というより、子供を叱りつけているような顔だ。頬を膨らませて、拗ねている感じ。
かわいい。狙ってやっているのだろうか?
「宮野くんって、結構モテるんじゃない?」
あぁーーん?喧嘩売ってんの?まじで!
俺が数日前に振られたってこと知ってるだろ!?それなのに、モテるんじゃないって?どの口が言ってんだか!
少しむっとしてしまったが、それを表に出すほど子供ではない。そんなことないよー。といい、勉強を始める。
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昨日は何事もなく、勉強を教えて帰宅した。
今日は水曜日。水曜日は憂鬱だ。週の真ん中ってだけでも、絶望するのにさらに今日は体育がある。
体育の授業は嫌いではないが、上田たちに絡まれる可能性が高い。特に今は、絡まれるネタが盛りだくさんだ。
あぁ、学校に行きたくないなぁー。
体育は4時間目にある。3時間目の授業終了後、着替えを始める。
また、服を脱いでいると2人組の男たちがやってきた。
「みーやーのくん。随分と楽しそうじゃん!」
なんだ、その名前の呼び方は。いじめっ子みたいだぞ。あぁ、あながち間違っていないか。
不愉快な呼び方をして、ニヤニヤと近づいてきたのはいじめっ子の上田と大久保だった。
「楽しそうって、なにが?」
「なに、とぼけているんだよ!美歩と仲良いだろ」
美歩……多分、高島さんの下の名前だろう。まあ、ここはあえて知らないふりをしよう。
「誰のこと?」
俺の反応に苛ついたのか、大久保が噛みついてきた。身長が高いから、怖い。とか、思ったら負けだ!頑張れ、自分。
「高島だよ!高島の下の名前は美歩なんだよ。言わなくても分かるだろ。とぼけるな!」
「へー。そうなんだ、知らなかったよ。それで高島さんがどうかした?」
この俺の反応により、大久保はさらに噛みつこうとする。顔がすごく怖いです。しかし、上田がそれを止めた。
「それよりもさー、宮野。お前、金曜まで好きな人がいたくせに、もう新しい女のケツをおってるのか?」
「そんなんじゃないよ。ただ、勉強を教えているだけ。そもそも、頼まれただけだし」
「ははは!どうせ、またワンチャンあるかもとか思って勉強も教えているんだろ?頭がいいくせに馬鹿だなー」
あぁ、思っているよ。何か悪いか?
心の中では罠だと思いながらも奥底ではそうじゃないであって欲しいと思っているよ。
「そんなわけないじゃん。佐々木さんの時も、今も」
着替え終わったから、また逃げる。しかし、回り込まれてしまった。
ゲームかよ……
「逃さねーよ!」
大久保に通せんぼされて、ドアに向かうことができない。
「どいて。邪魔なんだけど。遅刻する」
「はぁ?なんて言ってんの?声が小さくて聞こえなーい」
これはうざい。というか、やばい。
クラスメイトはとっくの昔に逃げ出したして、教室には俺らしかいない。このまま、何かされそうとか考えれると怖くてたまらない。
「おーい。何やってんだー?早く行こうぜー」
ドアの方から上田と大久保以外の声が聞こえた。そっちの方を見ると伊藤がいた。
伊藤はどんどん、こっちに向かってくる。
「また、宮野くんに絡んでるのか?もう、やろめって。それに授業にも遅れる」
その言葉を聞くと、2人のさっきまでの雰囲気は一瞬で飛んでいって、
「はーい。晴翔がそう言うなら、やめるかー」
「だなー」
というと。3人で教室を出て行った。
なんだよ。伊藤もいるなら早く来てくれよ。
はぁー。今日はやばかったな。今後はなんとかしないとやばいかもな。
今後をどうするか考えながら、運動場へ向かった。
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昼は相変わらず、高島さんと一緒に食べた。上田たちがこっちを見ながら、くすくす笑っていたが絡まれることはなかった。
放課後にまた、勉強をする。今日は飲み物を買いには行かない。でも、あえて怒られるために買いに行くのもアリかもしれない。
「あー。今日は何も買ってないね!えらい、えらい。よくできましたー」
高島さんが教室にやってきた。今日は放課後に残っている人が多い。なんでだろうと考えていると
「流石にテストの1週間前になるといっぱい残っているねー」
忘れていたけど、今日でちょうど1週間前なのか。まあ、部活も禁止になるし残って勉強する人は多いな。
あの子も残っているのか……
右前の佐々木さんの席には佐々木さんと友達の結城さんがいる。こちらを気にすることもなく、勉強に励んでいる。それにしても、珍しい。
佐々木さんは静かな場所で1人で勉強する方が好きって言っていた。でも現に誰かと、しかも教室という静かではない空間で勉強をするとは。
まあ、友達付き合いがあるんだろう。結城さんの成績は知らないけど、多分、あまり良くないだろ。授業中に当てられた時にいつも、答えれていないイメージがある。
その結城さんのために一緒に勉強しているのかもしれない。優しいあの子ならあり得る話だ。
いつも通り勉強をしていると、外が赤く染まってきたことに気がついた。そろそろ、帰って方がいいかなっと思い高島さんに声をかける。
「もう、6時だよー。今日はここまでにしといた方がいいんじゃないの?」
「えー!?ほんとだ!んー、でももう少し勉強したいな。
あっ、そうだ!せっかくなら土曜日に一緒に勉強しない?」
え?土曜日っすか?なぜ、休みの日に?
もう、絶対俺のこと好きじゃん!
……いやいや、冷静になれ。そんなことはない。
でもまあ、少しくらいは期待してもいいよね。断る理由もないし、とりあえず受け入れよう。
「いいね。じゃあ、ファミレスで勉強しよう」
「うん!決まりだね!じゃあ、駅前のファミレスでお昼ごろにね!」
今日は水曜日、2日後にデートのようなものがあると思うと、今から緊張する。
「明日と明後日の放課後はどうするの?一旦、休みにする?」
俺は気を遣って、今後どうするか確認する。流石に毎日勉強するのは辛いんじゃないかなっと思った。しかし、高島さんは震えるように首を横に振った。
「うんう。宮野くんが無理でなかったら、木曜と金曜日も一緒に勉強したいな」
「そっかー。高島さんがいいんだったら、俺も問題ないよ」
ありがとうー!ととびきりのスマイルを俺に向けて、言ってきた。それだけで、俺はドキドキしてしまう。
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木曜日と金曜日も高島さんと一緒に勉強をした。どちらも、教室で行った。驚くことに両日とも佐々木さんは友達と勉強していた。
しかも、少しの時間ではなく。俺らがいる時間以上、教室で勉強をしている。
不思議だ。
もしかして、俺に誰かと勉強をするのは苦手って言っていたのは嘘だったのだろう。誰か(俺)と勉強するのは苦手。っていう意味だったんだろうな。
あぁ、もう1週間以上経つのに未練がなくなることはないみたいだ。高島さんと一緒にいれば気がまぎれるからいいな。
明日は土曜日だ。勉強会の準備をしないと!




