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やめられない期待

 俺があの子に告白してから、2日経った。今日は土曜日のため、学校に行かなくていい!

 学校で、厄介な連中に目をつけられたため、学校に行くのが嫌で仕方がない。まあ、奴らもいずれ飽きるだろう。


 今は、昼前。お腹がすいたが昼までもう少し時間がかかる。漫画でも読んで時間を潰す。漫画を読んでいると、スマホの通知が鳴り響いた。

 珍しい現象につい、体がびくっとした。一瞬、あの子からのメッセージかも!と期待したが、そんな訳はなかった。てか、ブロックしてるし。


 ん?てか、ブロックしているとあの子からのメッセージ自体、送られてこないんじゃ……。まあ、いいかーーー


 スマホを手に取り、メッセージを確認する。


「3組の高島なんだけど、宮野くんだよね?

 急にごめんねー

 宮野くんって、成績よかったよね?

 もしよかったら、勉強教えてほしいなって思っているんだけど、どうかな?

 無理だったら、全然断ってくれていいからね」


 3組ってことは隣のクラスか。んー、高島さん……

 聞いたことがあるような、ないような……あっ、思い出した!サッカー部のマネージャーで上田と仲が良かったはず……


 これは嫌な予感しかしないな。まさか、俺の嫌がらせのためにわざわざ土曜日に、メッセージを送ってきたの?

 暇な奴だなー。そんなとをするなら、勉強しろよ。


 俺は断り方を考えて上の方をぼーと見上げる。


 あんまり、冷たく断るのは良くないよな。逆恨みでもされたら、大変だ。それにしても、自ら女の子と喋る機会を断るなんて馬鹿なことをしているな……


 まてよ?もしかしたら、本当に高島さんは困っているのかしれない。それで周りに頼れる人がいないから、俺を頼ってきたのでは?

 もし、そうなら、何とかして助けてあげないと!


「いいよ。勉強を教えても!なんの教科?」


 さっきまでは断り方を考えていたとは思えないほど、手のひらを返した返事に自分でも驚く。驚くというか、呆れる。

 頭の中では9割9分、罠だと分かっていても今の俺には誰かに期待をしてしまう。愚かな話だ。


「ほんとー!!?ありがとう!すごく、うれしいよー!

 私は数学と英語が苦手で……。その2つを教えてくれたら嬉しいなー

 場所は宮野くんのクラスでやろうよ。ホームルームが始まる前に」


「わかった。月曜日でいい?」


「うん!ありがとう!よろしくね!」


 そして、スタンプが送られてくる。よく分からないキャラが手をハートマークにしている。


 この子はもしかして、俺のこと好きのんじゃね?

 まあ、おれはこの子のこと顔も思い浮かんでないんだけど。んー、どんな顔なんだろう。月曜日になればわかるかー。


 俺はスマホを充電して、また漫画を読み始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 日曜日の夕方、本来日曜日の朝にやっている女児向けアニメを見る。いつもの日課のことだ。オタクとしての嗜みともいえるだろう。

 好きな声優さんの声を1年間、聞くことができるなんて素晴らしすぎるな!女児向けアニメは!


 さて、現実逃避をしている場合ではない。明日は月曜日である。すなわち、また面倒なことになるだろう。しかも今回は高島さんという刺客も送り込まれて来る。対策を考えないと。


 まず、やっぱり勉強をする準備は必要だなー。確か、数学と英語だっけ?罠の可能性が高いけど、一応だね。一応。


 数学のノートを確認する。俺の字は結構綺麗な方だ。ノートは綺麗に纏まっているため、これを渡すだけでも十分な気がする。しかし、渡すだけでは不親切だと思う。問題でも準備しておいた方がいいな。


 数学の問題集を開いて、どこを解いてもらうか考える。まずは、基本的なところで、そこから簡単な発展問題。難しいやつは今回はいいだろう。

 解いてもらう問題に丸をつけていく。


 数学はこんなものだろう。次は英語だ。英語はやっぱり、単語を覚えることだ大切。俺が使っている頻出単語をまとめたやつをコピーしよう。さらに、長文問題を解いてもらおう。


 明日の準備はできた。あとは心の準備だ。

 もし、罠だった場合は泣きそうな顔をしながら帰ろう。俺のそんな様子を見れば、奴らも満足するだろう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日、いつもよりだいぶ早く自転車に乗る。待ち合わせは8時に2組の教室だ。


 なんとか、約束の5分前に教室に着いた。教室には鍵がかかっていた。どうやら、1番乗りのようだ。職員室に鍵を借りに行き、ドアを開ける。

 8時ちょうどに、1人の女子生徒がやってきた。


「おはよー!わざわざ、こんな朝早くにありがとうね!」


 そこには黒茶色の髪が肩につくかつかないかぐらいの長さの女の子がいた。制服は着崩していて、アクセサリーも付いているが、ギャルっぽくはない。人当たりが良さそうで、優しそうな顔をしている。結構可愛い。

 見たことのある顔だけど、この子が高島さんだとは知らなかった。


「おはよ。全然、気にしないでいいよ。じゃあ、勉強しようか?」


「うん!よろしくお願いします!せんせい!」


 そういうと、前の席を後ろ向きにして向かい合って座り、勉強道具を出していく。


 あれ?おかしいぞ!

 ここで、上田たちがやってきて俺のことを笑いものにするはずだ!なんで、当たり前のように勉強を始めているの?


「まず、数学からー。俺のノートをよかったら使って」


 数学のノートを鞄から出して、高島さんに渡す。高島さんはそれをペラペラとめくりながら、


「わー!凄い!すごく読みやすいねー。ありがとぅ」


 少し、照れてしまう。ノートには自信があったが、こうもはっきりと誉められるのはこそばゆい。

 照れているのを誤魔化すように、問題集もだす。


「じゃあ、ここから丸のついてあるところを解いていこうか」


「はーい!がんばりまーす!」


 勉強を始めて10分たったが、今のところは何事もなく順調に勉強をしている。たまに、質問されるからそれを丁寧に教える。


 教室にはどんどん、生徒がやってきている。どうやら、俺と高島さんが勉強をしているのが驚くのか、どの生徒もすごい顔をする。


 また、1つ質問に答え終わったところで、伊藤グループの1人、上田がやってきた。上田は俺らのことを見ても、何も反応しなかった。ウザ絡みされるかと、警戒したがそんなこともなかった。


 んー。警戒しすぎたかな……。絶対何かあると思ったんだけどな。


「えっ?」


 後ろから小さな声だが、俺にははっきりと聞こえた。後ろを振り返ると佐々木さんがいた。

 佐々木さんと目が合う。なんか、元気がないみたいだ。

 一瞬、2人で見つめ合う謎の時間が過ぎたが、この時間を佐々木さんが壊した。


 佐々木さんは自分の席に座り、こっちを全く気にしていない。

 俺は真後ろを見た。そして、伊藤がいたことに納得した。なんだ、俺じゃなくて伊藤を見ていたのか。


 時計を見る。もうホームルームが始まりそうだ。


「高島さん。もうそろそろ、クラスに戻った方がいいよ」


「えっ?もうこんな時間!ありがとう。戻るね」


 勉強道具を片付けて、トタトタと帰っていく。そのまま、帰っていくと思ったが、戻ってきて


「放課後も付き合ってもらっていい?」


 ドキッと心臓が高鳴った。これは恋のどきどきではなく、恐怖心からのどきどきだろう。罠か?放課後こそ、罠が待ち構えているのか!


「うん!もちろんいいよー」


「ありがとう!また、放課後ね」


 体が熱い。エアコンはついているはずだけどな。どうしてだ?どうしてこんなことになった。今の返事したやつ出てこいや。俺がしばいてやる。


 放課後になるのが怖いと思いながらも、高島さんに対する期待感を無くすことはできないみたいだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 お昼だ。お腹が空きました。ペコペコです。でも、気持ちはお腹いっぱいです。


 今日もぼっち飯か。田中と太田は相変わらず、俺のことを見向きもしない。まあ、想定していたけど。

 俺はぼっち飯のために準備を行っていた!今日のお弁当はおにぎりだけで構成されている!すなわち!立ちながらでも食べることができるのだ!俺ってかしこーい!


 ……ぐすん。


 食べる場所は決まっている。俺の終わりがはじまった場所。あそこにいくしかない。

 なんか、終わりがはじまったってかっこいいな。


 俺は席を立ち上がろっと思ったが、前から高島さんがやってきた。


「宮野くん!一緒にお昼ごはん食べよ!あっ、勉強のお礼にお菓子買ってきたよ。後で食べよぅ」


 刺客がやってきた。逃げるか?


 女子と一緒にご飯……


 どうやって逃げよう。食堂行くからーとか言うか?


 女子と一緒にご飯……


 あっ、お弁当を机の上に出している。この言い訳はできないか。誰かと食べる約束してるって嘘をつくか?


 女子と一緒にご、


「ダメかな?」


 上目遣いで、聞いてくる。さっきまで考えていたことが大気圏までぶっ飛んで行って、光の速さで


「もちろん。ダメじゃないよ!」


 負けました。罠だと思っても、刺客だと分かっても、抗えませんでした。くっ、殺せ!


 また、前の席を借りるみたいだ。今回は椅子だけをこちらに向けて、俺の机に弁当を広げる。俺はおにぎりを取り出す。


「宮野くんのお昼はおにぎりだけ?」


「あぁ、今日は母さんが寝坊して……」


 ごめん、母よ。俺がお願いしておにぎりにしたのに、ぼっち飯のためです!とは言えなかったよ。


「そうなんだー。じゃあ、卵焼きあげるよー

 はい。口開けてー」


 あーんと。卵焼きを俺の口元に持ってくる。なんだ、罠か!?ハニートラップか!卵焼きをたべたら、死ぬのか!?


 ガタッ!


 俺が戸惑っていると、右前の佐々木さんが勢いよく立ち上がった。そして、こっちを見ている。というより、睨んでいるような……


 3秒ほど睨まれた後に佐々木さんは何事もなかったかのように友達とご飯を食べ続けている。佐々木さんの友達は何かあったー?と聞いている。


「窓の外に何か見えた気がしたんだよねー」


 佐々木さんは笑いながら答えてた。なんだ、俺の方を見ていたわけではないのか。自意識過剰は気をつけよう。


 というか、差し向けられた毒入り(推定)卵焼きを忘れていた。さすがに箸にかぶりつくわけにはいかなかったので、手で卵焼きを取り、口に放り込んだ。

 どうやら、毒は入っていなかった。その代わりに砂糖が入っていた。甘いなー


「甘くて、美味しいねー」


「そうでしょ!私が作ったんだー」


 手作り料理とは凄いな。てか、美味しい料理が作れる人に悪い人はいないのでは?


 その後も料理の話とか、好きな食べ物の話とかをして、お昼ご飯を食べる。

 話が巡り、部活の話になった。テニスのマネージャーであることはあっていたみたいだ。ちなみに俺は帰宅部。

 てか、放課後に勉強する時間あるのだろうか?マネージャーは大丈夫なのだろうか?


「部活があるのに放課後は大丈夫なの?」


「あはは。大丈夫ではないねー。でも、勉強の方がさらに大丈夫じゃないの」


「そうなんだ。確かに数学も苦戦していたな」


「うん。英語以外の文系は得意なんだけど数学がダメダメなんだよね」


 女子は数学が苦手な子が多いな。佐々木さんも数学が苦手で、一時期ずっと教えていたな。その時に教えるのが上手くなったな。


 あの頃は楽しかったな。もう、あの頃には戻れないし、同じことは2度と起こらない。ああ、また気分が暗くなってきた。


 適当に会話をしているとあっという間に予冷がなり、午後の授業が始まる。高島さんはまた後でね。といい、自分のクラスに戻っていった。


 午後授業が始まる。そういえば今日は平穏に過ごせているなー。ちょっとクラスメイトからの視線が辛いけど。その視線はただの驚いているって感じだから不愉快な感じではないな。


 あー、放課後が待ち遠しいなー

 ん?今、俺は何を考えた?放課後が待ち遠しい?そんな馬鹿な。罠だと言っているだろ、自分よ!放課後こそは上田や大久保に大笑いされるのがオチに決まっている。

 高島さんは一見優しいけど、それは表面上に決まっている。心の中では俺を陥れることを楽しんでいるはずだ。

 騙されるな。自分。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 午後の授業が終わり、放課後になった。部活組は部活へ行き、帰宅部組は勉強したり、帰ったりしている。俺は机に勉強の道具を出して、準備する。


 そういえば、何か買ってこようかな?勉強するなら、飲み物だけでもあったほうがいいかな。あっ、勉強は罠だった!忘れてはいけない。

 でも、まあ飲み物なんて無駄にはならないか。


 さっそく、飲み物を買おうと思い、教室を出る。自販機は食堂の近くにあるため、そこに行く。そういえば、高島さんは紅茶が好きって言っていたな。それなら、紅茶を買おう。

 無糖か加糖のどっちが好きか分からないな。よし、どっちも買おう。


 俺は300円入れて自販機のボタンを2回押す。ガタン、ガタンと言う音を立てて、出てきた。その瞬間に我に帰る。


 あれ!?どうして、刺客の分も買っているんだ?自分の分だけ買うつもりだったのに、出てきたのは2本の紅茶。しかも、俺は紅茶よりコーヒーが好きだ。それなのに紅茶を買うとは……


 まあ、一応だよね。一応、勉強会っていう可能性もあるし、頑張っている人に飲み物の差し入れぐらいいいよね。


 無理やり自分を納得させて、教室に戻る。

 教室にはもう、高島さんがいた。


「ごめん。待たせたよね。飲み物買ってきたんだ。高島さん、紅茶好きって聞いたからあげるよ。加糖と無糖のどっちが好き?」


「えーー!悪いよ。私が教えてもらっている立場なのに……紅茶のお金払うね」


「高島さんは頑張っているんだし、いいよ、お金は」


「わーー!すごいね!すごく優しい!ありがとう!お言葉に甘えさせてもらうよー」


 裏表のない綺麗な笑顔で無糖の紅茶を受け取った。可愛い……あぁ、この子になら騙されていいかも。


 いやいや、ダメだ!流されるな!


「じゃあ、勉強始めようか?英語もやろう。覚えた方がいい単語をまとめてきたから、まずはこれをしっかり覚えて」


「うん!わかった。ほんと、何から何までありがとうね!」


 結局、勉強は外が赤くなるまで続けられた。幸いながら上田や大久保の乱入もなく、平和に勉強会が終わった。

 本当にただの勉強会で罠ではなかったとは……じゃあ、なんで俺にはわざわざ勉強を教えて欲しいって言ってきたのか疑問に思った。


 高島さんは電車で帰るらしい、お疲れ様と声をかけて俺は自転車置き場に向かう。自転車に乗り、暗くなった道を進んでいく。


 家に帰ると何故か部屋が真っ暗だった。一瞬、疑問に思ったが母さんは今日、夜勤なんだという事を思い出した。父さんは帰ってくるのはいつも遅いし、そりゃ誰もいないよな。


「にゃーん、にゃーーーー、にゃーん」


 お前はいたよな。ごめんな、帰ってくるのが遅くなって、寂しかったか?


 ちょこをなでなでする。しばらく、構ってあげるが明日も学校があるし、やることをしないと。


 俺はご飯を食べて、風呂に入る。風呂に入っている時に今日のことを思い出す。


 罠だと思ったが、罠ではなかった。刺客だと思った人が料理がうまくて、優しい人だった。勉強も真面目に取り組んでいた。もしかして、ただ純粋に俺のことを頼っている?そんなこと、あるの?

 いや!期待はするな!期待をして期待をした、その結果は目に見えている。また、同じことを繰り返したくはない。頭では分かっている。分かっているけど、


 俺は誰かに期待はするのはやめられないみたいだ。



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