表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

新しい日常

 朝礼が終わり、高木先生は教室から出ていく。その後、生徒たちは思い思いに喋り始める。


「宮野が昨日、佐々木さんに告ったんだってー」


「えー!身の程知らずすぎるだろww」


 俺の左後ろの男子と女子は話している。しかも、わざと聞こえるように話していると疑いたくなるくらいはっきり聞こえる。


 結構広がっているなー。まあ、直接的な実害もないしどうでもいいか。


 実害がないなんて自分でも強がりだと自覚していたが、何とかなんでもないように装う。そんなことより、気のせいかもしれないが、佐々木さんが俺の方をちらちらと見てくる。


 やっぱり、昨日のことを気にしているのかな。まあ、一部のクラスメイトに俺が告ったことが噂になっていることも知っているだろうし、それであの子が少しでも罪悪感を感じて、俺のことを考えてくれたらいいのにな。


 そう思った後、心の中でははっ、と笑ってしまう。まだ、そんな期待を持っていることに。諦めないといけないとわかっているが、そう簡単には割り切れない。


「キーンコーンカーンコーン」


 授業が始まる鐘がなった。1時間目は数学だ。今は嫌なことは忘れて勉強に集中しよう。そういや、あの子に相応しい男になるために勉強を頑張ってきた。高校だってあの子が入学するから頑張ったし、成績だって上位10人が張り出されるから頑張っていた。昨日のことを思い出して、あることに気がついた。


 もう、振られたのだからよく考えたら、もう勉強を頑張る理由がなくない?


 そうだ。俺はもう何かを頑張る気力は持ち合わせていない。ただただ、楽なことをして生きて行きたい。そう考えると勉強なんて、もういいや。

 今日は現実逃避のために妄想をしよう。そうしよう!


 そうだな。設定は義理の妹だな。可愛いくて頭もいい、才色兼備の妹がいて、その妹に毎日迫られている。そんな設定を考えて妄想をしていく。

 今は学校の中だ。あまり、あれな妄想は良くないな。健全に、健全に。それでいて、幸せになれるようなことを。膝枕されたり、ぎゅって抱きしめられたり、頭を撫でてもらったりしたいな。


 授業中も右側を見ないようにしながら、妄想に浸っていると急にチャイムが鳴り、ビクッと驚いてしまう。

 時計を見ると1時間目が終わる時間になっていた。時間を忘れるほど妄想していたとは……

 前に貼られている時間割を確認する。次は体育か。

 体育はいいな。男女別で行うから、余計なことを考えないで済む。


 起立、礼の後に女子は更衣室に向かう。男子は教室での着替える。


「ちょっと!まだ、いるんだから着替えないでよー!」


 教室内に女子がいるのに体操服に着替えようとする馬鹿な男子がいる。

 そういう癖なのか?といつもながら思う。まあ、俺にそういう趣味はない。

 女子が全員いなくなってから、服を脱ぎ始める。服を脱いでいると後ろから声がかかった。


「宮野ってさ、佐々木さんのこと好きだったんだな笑」


「あぁ、うん。好きだったけど」


 着替える動作をやめずに淡々と話す。


「とういうか、幼馴染だったんだな。羨ましいww」


「別に羨ましくないよ」


 さっき、左後ろで女子と俺のことをくすくす笑っていた男子がわざわざ、大きな声で俺に話しかけてきた。

 そうしていると、伊藤の取り巻きの上田がニヤニヤしながらやってきた。


「俺、告ってるとこ見てたけど、断られ方が爆笑もので!」


 だから、声がでかいっての。そのせいで、クラス中の男子はこっちのを見ている。ちょうど、ドアの方を見ると、オタク友達の田中が何も見ないふりして教室を出ていく。


 おい。助けろとは言わないが、少しは心配そうに見ろよ。

 太田を見習え。あいつは自分ことのように辛そうな顔をして俺のことを心配してくれている。


「まじで!?どんな断られ方だったん?」


 カースト上位の上田が会話に乱入してきて、少し戸惑いながらも左後ろ男子はノリノリで詳細を聞いてくる。


「佐々木さんは幼馴染だからって調子に乗らないで!だってwwwその後、あなたのことなんて好きじゃないってはっきり言ってたんだよなw」


 よく、一言一句覚えているな。趣味が悪すぎ。


 俺は歯を噛み締めながら、平然を装う。


 深く考えるな。感情的になるな。相手にするな。昨日のことを思い出すな。


 呪文にように心の中で呟き、理性を保つ。


「うは!何それ!可哀想ww佐々木さんちょー辛辣じゃん!まあ、当然といえば当然かー。オタクに告られる側になって見ろって感じだよなー」


「ほんとそうだよな。佐々木さん、可哀想すぎるよなw」


 2人は教室内に響きわかる声で喋っている。これでクラスの男子にはバレてしまったな。あぁ、これはしばらく嫌がらせのターゲットにされてしまうな……


「というか!宮野は!幼馴染だからって!あの!佐々木さんと!付き合えるかもって思ったりしてたの!?」


 上田は俺の方を見ながらでかい声で煽るように言ってくる。喋り方がうざい。


「まあ、オタクだもんなー。幼馴染に期待したんじゃね?アニメとかじゃ、よくあるしー」


 もう1人の男子は上田に同調する感じで煽ってくる。俺はここでなんて言えばいいのか分からず、小さい声で曖昧に答える。


「いや。別に」


「別にってなんだよ!はっきり言えよ!身の程知らずにも佐々木さんとわんちゃんあるかもって思っていましたって!」


「佐々木さんと付き合って、あんなことやこんなことをする事を妄想していましたって言えよ!!」


 何故だら知らないけど、いつのまにか俺が悪い事をしているみたいな雰囲気になっている。俺が誰に告白しようが、俺の自由だろ!俺がお前たちに迷惑をかけたのか!


 そう言えたら、どんなに楽だろうか。しかし、俺はそんな事を言う勇気はない。


「チャイムなるし、もう行くわ」


 俺は早々に着替え終わっていたため、ここから逃げた。

 教室からは数人の男子が大笑いしている声が聞こえる。


「きも!キモすぎだろ!何あいつ、きょどりすぎ!」


「あー、今年1番笑ったわー」


「おいおい。ちょっとやりすぎたぞー。でも、面白かったから許すw」


「いや、ちゃんと止めろよ笑」


 泣くもんか。俺の涙はあの子のためにあるんだ。悔しいからって、あんな奴らのせいで涙は流さない!


 運動場に行くために、階段を降りていると


「上田!大丈夫か!」


 息を切らしながら、ぽっちゃり男子がやってきた。俺は涙を引っ込めて振り返った。


「田中か。大丈夫に決まっているだろ。昨日も言ったが、もう佐々木さんのことは全く興味もないしな」


「そうかー。ならよかった!ごめんなー。助けることができなくて」


「いや、気にしなくてもいいよ。お前はああいう奴苦手だろ?」


 俺は前から気になっていた事を言った。田中は昔からああいう、性格の悪い陽キャを避けている感じがする。俺の直感では昔に何かがあったと思っている。


「気づいていたんだな。そうだな、少し苦手かな……」


 俺な暗い話をやめて、何か別の話題をふり、たわいもない話をする。階段を降りていくと、そこには予想外の人がいた。


 愛だ。愛がいる。告白以降初めて、きちんと目が合った。そのせいか、顔が少し強張る。


 もしかして、さっきの会話を聞かれていた?まあ、別に何も問題ないか。逆にもう、全然興味がないですよと伝えれて良かったのかもしれない。


 俺は直ぐに目を逸らし、何事もなかったように太田と会話を続ける。太田は少し、目が泳いでいるが俺の話に付き合ってくれている。


 運動場につき、体育が始まった。相変わらず、俺のことを噂している奴らはいるみたいだ。


 俺って実はモテモテかも?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 体育が終わった後に教室で制服に着替える。今度は絡まれなかった。と思っていたら


「好きです!付き合ってください!」


「幼馴染だからって調子に乗らないで!お前みたいなキモい奴、嫌いだ」


「いや、セリフちょっと違うだろw」


 男同士で何やってんだよ。上田と大久保は俺の目の前で昨日のことを再現している。いや、再現しようとしている、が正しいか。それを見て、数人の男子がゲラゲラと下品に笑っている。


 はいはい。面白い面白い。

 あぁ、これは飽きるまではしばらく、やられるな。飽きるのが先か俺の限界が来るのが先かのどちらかだなー。

 今日だけで済めばいけど、その可能性は低いな。何日か、もしくは何ヶ月か?

 というか、男の前でしかやらないとか性格悪すぎだろ。まあ、女子の前でやると、心情を悪くするからな。それが分かっているのだろう。


「なあなあ!これを見てどう思う?おい!どう思う?」


「別に」


 着替え終わった俺は次の授業の準備をする。

 しばらくしていると、女子が戻ってきた。戻ってきたとわかると、奴らは自分の席に戻って何事もなかったかのようにした。


 これはもしかして、体育とかの男子しかいない時は毎回、ああいう事をされるわけ?

 はぁーーー。なにそれ。俺が何をしたっていうんだよ。

 まあ、やつらにとっては面白いおもちゃを見つけたようなものなんだろう。


 佐々木さんが帰ってきた。なんだか、俺の方を見ている感じがするが、気のせいだろう。自意識が過剰だな。

 授業が始まるが、やっぱり俺の方を見ている気がする。いや、そんな訳がないな。中学生でもないんだから、少し目が合うだけで期待などしたい。てか、もう振られているし。

 多分、俺の方向にいるやつを見ているんだろう。んー、誰だろう?


 俺は俺と佐々木さんの直線上にいる生徒をみる。直線上にはあの、イケメンがいる。そう、伊藤だ。


 あー、そうか。そういうことか。佐々木さんは伊藤が好きなんだ。それで佐々木さんは昨日の俺からの告白事件のことで伊藤がどう思っているか気になっているんだ。だから、ちらちらと伊藤の方を見ているんだな!

 俺って、名探偵だな!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 授業が終わり、俺はいつも話している友達に話しかける。


「なあ、数学の課題っていつまでに提出だっけ?」


「ちょっと、トイレー」


 そう言うと、俺のことを無視して、トイレに向かっていった。俺はその姿を目で追っていく。周りを見渡すと男子たちは俺から目を逸らす。


 まさか、避けられている?な、なんで?


 ………


 もしかして、俺がカースト最上位に目をつけられているから?

 それにしたって、こうもあからさまにバブルか!?この学校はそれなりに進学校だから、馬鹿なことはしないと思っていたのに、こんなことって……いや、賢いから逆にか?

 まあ、もうどうでもいいや。これからは学校で1人で過ごすことになるのか。まあ、昔もこう言うことがあったし、どうでもいいか。


 さっき話しかけようとした男子はチャイムがなるギリギリで帰ってきた。トイレ長すぎだろ、と心の中でつっこんだ。徹底しているなーと感心する。


 午前の授業が始まり、昼休憩になった。もちろん、俺の席には誰も来ない。いつもは、太田たちと一緒に食べていたが2人は別の人と食べている。

 やっぱり1人で食べるしかないよなー。教室内で1人はきついな……

 とりあえず、教室から出よう。


 弁当と水筒を持って、教室を出る。校内を彷徨うが、ある場所を除いて、いい場所どこもない。一瞬、トイレで食べるかと考えたが、辞めておいた。

 もう、あそこしかない。俺の因縁の場所。

 そう、俺が昨日告白した場所だ。


 別館と体育館の間に人気がない場所がある。昨日はここで振られた。もう2度と行きたくなかったが、仕方がない。

 俺はそこで、立ちながら弁当を食べる。

 弁当を食べた後も教室には戻りたくないと思い、この場で時間をつぶす。暇つぶしにフェンスの穴の数でも数えようかな、と思い数え始めた。


「キーン、コーン、カーン、コーン」


 予鈴がなる音がした。俺は教室に戻り、席に座る。

 また、一部の男子に笑われている気がする。


 午後の授業も終わり、帰る時間になった。

 俺は誰にも挨拶をすることもなく、今日は自転車置き場に向かう。


 そういえば、今日はほとんど人と話していないなー

 いや、今日はではないな。これから毎日だな。


 これが俺の新しい日常か……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ