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すれ違いプロローグ side佐々木愛

2022/4/11に追加しました。

 好きな男の子に学校の人気のない場所に呼び出された。今までの経験からして告白だろう。今まで嫌というほど告白をされてきたが、ようやく望む人から好きと言われる。


 いやでも、待って。彼は優しいけど、小心者だ。彼に告白する勇気があるだろうか?いや、ない!←失礼

 私は心の中で告白ではないと断言した。しかし、その想像とはかけ離れた言葉を耳にする。


()、俺はお前のことが好きだ。付き合ってほしい!」


 すき?好きって、ああ、よく言われる言葉ね。ん?誰が誰を好きって?宮野 和也が佐々木 愛のことが好きってこと?

 ということは両思い!!?え?和也って私のこと好きだったの?全然、興味がない感じだったのに。


 私は好きな人からの想定外の告白で頭が回っていない。しかし、目の前にいる、真剣な眼差しの彼を見て現実に返される。


 そうだ、返事をしないと。あれ?告白を受けいれるにはどんなことを言えばいいの?

 いつものことを思い出そう。いつもは、そう、告白されると、私はあなたのことを好きじゃないわ。と言っている筈だ。よし、それを好きですに置き換えればいいんだ!

 言うわよ!深呼吸して


「幼馴染だからといって、調子に乗らないで。私はあなたのこと好きじゃないわ」


 ん?今のセリフ、誰が言ったの?

 いま、ここには私と和也しかいない。ということは今のは私のセリフ?

 和也の顔を見ると泣きそうな顔になっている。やっぱり、今のは私のセリフだと断言できる。

 さっきよりもさらに頭が真っ白になる。


「そっか……そうだよな。俺みたいな奴を()()()()()が好きなはずがないよな」


 和也が何が言ったが、全然聞いていなかった。聞き返そうと思ったけど、和也は続けて


「時間をとらせてごめんな。来てくれて、ありがとう。それじゃあ!」


 そういうと、走って言ってしまった。私は今起こったことが処理しきれていない。


 好きな人から告白されて、それを断って、そして好きな人が走っていった……


 やばい!早く追いかけて、訂正しないと。今から謝れば済む話のはずだ!


 あぁ、もう、この自分の性格をなんとかしたい!好きな人に対して、どう接していいいか分からなくて何度も失敗してきた。だから、幼馴染の和也とも今まで何もなく高校生になってしまった。

 彼はそれを踏み出してくれた。その勇気を私はなんてことを!


 和也の姿は見えないが、走っていった方向はわかる。私も大慌てで追いかける。


 同じ方向に行ったが、彼の姿は見当たらなかった。私はさらに焦ってくる。息を切らしながら、探しているとトイレの近くから男子たちの声が聞こえた。

 そこに私の目当ての人とその友達がいた。私はほっとした。他の人がいて恥ずかしいけど、ここでさっきのことを謝ろう。そして、正式に男女交際をしよう!

 足を踏み出して、話しかけようとするが3人の話し声が聞こえた。


「おい。大丈夫か?たまたま、見てたんだけど、散々だったな」


 たしか、名前は田中くんだったような。そういえば少し前にこの人に告白されたような……。というか、見られていたんだ。


「お前、佐々木さんと幼馴染だったんだなー。それにしても、あの振られ方は可哀想だわー」


「いやー、マジで最悪だわ!アニメみたいに幼馴染でちょっと可愛いから告ってみたら、あの反応。あんなクソみたいな女に告白なんてしなければよかったー」


 3人の会話に入ろうと思ったが、好きな人から信じられない言葉を耳にしてしまった。


 え?クソみたいな女?それって私のことだよね。さっきの告白のことを言っているの?確かにひどいことを言ったけど、そんな風に思われているなんて……

 いや、私が被害者ぶったらダメだ。私は彼を一瞬で深く傷つけた。そして、自分を傷つけた女を嫌いになるのは当たり前では?


 さぁーと血の気がひけていくのがわかる。さっきまで気楽になんとかなると思っていた、自分を殴ってやりたい。


 さっきまでの話しかける勇気は一切なくなり、その場で尻込みする。好きな人からの拒絶がこんなにも苦しいものだとは知らなかった。そうしていると、和也はこの場から去っていった。

 私はかばんを取りに教室に戻った。席に座り、考え始める。


 和也は私のことをもう、好きではないと思う。私に対する感情は好意から敵意に変わったのだろう。全て、私が悪い。

 でも、ここで私は諦められない。全て私が悪くても、私が彼を好きであることは変わらない。ずっと、優しい彼が大好きだった。もし、嫌われてしまったなら、もう一度好きになってもらうしかない!

 そうと決まれば、こんなところでうじうじしている場合ではない!今すぐにもう一度会いにいこう。

 確か、和也は自転車通学のはず……。自転車置き場に行けば、彼に会えるかも!


 私はかばんを手に取り、バンっと勢いよく扉を開ける。廊下を走りながら、階段をかけていく。自転車置き場にはあまり行かないけど、場所は知っている。和也の自転車も知っている。

 自転車置き場につき、和也の自転車を探す。しばらく探していると……


「あった!」


 思わず、声が出てしまい恥ずかしくなる。でも、自転車があるってことはまだ、校内にいるはず。ここで待っていたら、絶対に会える!

 そう思い、近くの段差に腰掛ける。和也が来るまで、ここで待っていることを誓う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どれぐらい、時間が経っただろう。体内時計では30分ほど待っているが、未だに和也は来ない。

 自転車置き場がすかすかになったところに友達の莉乃の姿が見えた。そういえば梨乃は自転車組だったよな。と思いながら、話しかけた。


「梨乃ー。部活終わったの?」


「あれ、愛?まだ、学校にいたの?」


 梨乃は驚いた顔をしながら、答えた。まあ、テニス部の梨乃と違い、私は帰宅部だし、こんな時間まで学校にいることは珍しい。


「ちょっと、用事があって……。あっ、そういえばかず……宮野くんの姿見ていない?」


「ん?宮野くんなら、1時間くらい前に駅のほうに向かっていくのを見たよ」


 駅?自転車じゃなくて?どういうこと?私がここにいたから、自転車に乗らずにわざわざ電車で帰ったの?

 いや、今はそんなことはどうでもいい。それよりも、もう直接会うのは難しいと言うことだ。


「そっか。ありがとう。私も帰るね」


 少し早口でそう言うと。私は急いで帰ることにした。

 直接、会えないなら。スマホを使うしかない!スマホは家にある!早く帰らないと!


 私は電車に乗り、家に帰る。帰宅後、手を洗うこともせずに、充電中のスマホを取り出した。

 通知画面には相変わらず、鬱陶しいくらい通話アプリからの通知が来ている。しかし、私の目当ての人からはきていない。


 やっぱり、自分からメッセージを送るしかない。


 私は頭を抱えながら、なんて打つか考える。まず、謝罪から始める。そして、あの時の私の行動を正直に話す。そして、もう一度私にチャンスがほしいとお願いする。


 文章の構成は決まった。後は打っていくだけ。

 エアコンも付けないで汗だくのなか、文章を書いていく。大体かけたと思い、読み返してみると20行ぐらいあった。ちょっと、長すぎるかと思ったけど誠意が伝わると思い、そのまま送信した。

 送信後、急にこの部屋が暑すぎることに気がついた。それに少し、水分がほしい。熱中症になりそうだ。


 台所に行き、ミネラルウォーターを飲む。そして、スマホを確認する。和也からの通知はない。

 汗だくだったから、お風呂に入ることにした。まず、浴槽を洗って、スマホを確認する。和也からの通知はない。

 浴槽にお湯を入れて、今日の晩御飯の下拵えをする。そして、スマホを確認する。和也からの通知はない。


「お風呂が沸きました〜」


 お風呂から軽快な音が聞こえて、私にお風呂が沸いたことを教えてくれる。

 脱衣所で服を脱ぎ、スマホを確認する。和也からの通知はない。

 うちの家ではお風呂にスマホは持っていっては行けないルールになっているが、今日はそんなことも言ってられない。


 タオルにスマホを巻きつけて、浴槽のそばにおく。シャワーで汗を流し、浴槽に浸かる。そして、スマホを確認する。和也からの通知はない。


 スマホでメッセージの送った内容を開く。送った時間はいまから、1時間ぐらい前だ。夕方に1時間以上、返事がこないのは今まではなかった。私にはどうして、返事が返って来ないかが分からなかった。


 私はネットで「メッセージの返事がこない」と検索した。

 質問投稿サイトにメッセージの返事がこない原因に、送り間違えや相手のアカウントが消えていること、そして相手にブロックされていることなどが書かれていた。


 ブロック……

 無視ではなくて、ブロックされている?

 直接話すことも、スマホで話すことも拒絶されているの?


 私は目元から涙が溢れていることに気がついた。でも、私が泣くのはおかしい。こんな自分勝手な涙に私は腹が立った。


 私はスマホの電源を消して、浴槽からでる。

 何も考えずに、手にシャンプーを出し、ガシガシと頭で泡を立てる。

 いつもなら、もっと丁寧に髪を洗うが今日はどうでもい。

 そういや、和也がロングの女の子が好きだと聞いて、頑張って伸ばしたっけ。髪が長いと手入れが大変だから、手入れの仕方やシャンプーをネットで調べたな……


 おかしいな……シャンプーが目に入ったわけでもないのに、目が痛い。それに心も。

 いや、だから、私が被害者ではない!私が悪いんだ。


 何度も何度も同じことを考えては自己嫌悪に支配される。そして、また苦しくなって、被害者ヅラをしてしまう。で、自己嫌悪に陥る。

 この数時間で何回目かわからないぐらい、同じ思考回路を繰り返している。


 頭を洗っている時に髪が手に絡み、髪を引っ張ってしまった。


 いたっ


 でも、この痛みは今の私にはちょうどいいな……

 泡を全部洗い流した後に利き手で髪の根元を持つ。そして、軽く引っ張る。


 痛い。でも、和也はもっと痛いはず。


 さらに強く引っ張る。


 すごく痛い。


 ふと、曇った鏡を手で擦り、鏡をみる。そこには自分の髪を引っ張って微笑んでいる人が写っていた。

 はっ、と我に帰って慌てて髪から手を離す。

 自分は何をやっているんだろうか。自分で自分を傷つけるなんて……

 こういうのは自傷行為というんだったけ?たしか、薬を大量に飲んだり、ナイフで自分を切ったりしていたな。


 前に夕方のニュースで特集されていた事を思い出す。


 確か、その特集では若い子がその症状になっていた。原因は負の感情や過ちに対する罪悪感だったような……。今の私には当てはまることばかりだと感じる。


 自分の心弱さに戸惑いながら、今の自分は少しおかしいことを自覚する。


 こんな状態でお風呂に入るのはダメ。早く出よう。


 私は体を洗うこともなく、お風呂を出る。バスタオルでガシガシと頭を拭く。

 こんな拭き方だと髪が傷んでしまうが、今は気にしない。


 いや、ダメだ!今までの自分を大切にしないと。もう一度、和也に振り向いてもらえるように。


 私はいつも通り、優しく髪の毛を水気をタオルで拭き取る。その後、裸のままドライヤーを当てる。


 うん。いつも通り。


 いつか和也に見られることを夢にしていた、私の肌を触る。ツルツルでさらさらしている。毎日、ボディークリームを塗っていた効果は出ているみたい。

 私は今日もいつも通り、ボディークリームを手に取り、腕に塗っていく。また、ボディークリームを手に取り、上半身に塗っていく。

 私の頭ではボディークリームなんて意味ない。と冷たく囁いている。また、目頭が熱くなりながらいつも通り、塗っていく。今の状況は精神安定のために薬を飲んでいる気分だ。


 全身にボディークリームを塗った後に下着とパジャマを着る。ふと、電源を消したスマホを見る。もちろん、通知を確認することはできない。今は私にとって、それだけで少し気持ちが軽くなった。


 自分の部屋のエアコンをつけて、ベットにダイブする。どうして、こんな事になったんだろう……。小学校の時も中学校の時もそして、今も。

 いや、今はもっと最悪の状況だ。1番、素直にならなければならない人に酷いことを言ってしまった。これから、どうすればいいんだろう……


 明日の和也と会った時のことを考えていると、玄関からゴソゴソという音とガチャという音がした。母が買い物から帰ってきたみたいだ。

 私はベッドがら起き上がり、台所に向かう。母は冷蔵庫に買ってきたものを入れていた。


「おかえりなさーい」


 私は不自然なくらい自然な感じを装った。


「ただいま。帰るのが遅くなってごめんねー。車が混んでいて……」


 母は仕事帰りに買い物をしてから帰ってくるため、帰ってくる時間がまちまちだ。ちらっと、時計を見ると19時を回っていた。


「全然、気にしていないよ。そういえば、晩御飯の準備しておいたよ」


 料理も和也に食べさせてあげたくて、勉強してきた。もう、それも意味がなかったかもしれない……あぁ、私の日常は和也を中心に作られていたことに今更ながら、気がつく。

 それにしても誰かが目の前にいるといい。私は冷静さを保っていられる。


 母といつも通りにドラマや仕事場での話をしながら、何事もなく晩御飯の準備をする。

 18時頃に父が帰ってきて、家族でご飯を食べる。誰かと話している余計なことを考えないでよくて、楽だと感じながら、時間を過ぎていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 晩御飯を食べた後に部屋に戻る。また、1人になってしまった。

 このまま1人だとまた、余計なことを考えてしまう。今日はお母さんと一緒に寝ようかなと思った。でも、そんなことをすると心配させてしまう。


 いつもこの時間はスマホを見ながら、ダラダラしている。でも、今日はスマホを使うことはできない。一瞬、スマホに手を伸ばしたが、やっぱりやめた。


 返事はきていないだろうな。確認してしまうと、いろんなことを考えて寝ることができなくなりそうだ……


 いま、何時だろうと思ったが、この部屋には時計がないことに気がつく。時計なんてスマホで済む話だったから中学生になってからは部屋の時計を無くしてしまった。今まで全く困らなかったがこんな事になるとは思わなかったな。

 仕方がないので学校につけていっている、腕時計を制服から取り出す。時計の針は21時を少し過ぎたあたりを示していた。


 9時か……寝るにしては早いな。でも、1人でいるとまた辛くなってくるし、寝て、意識を飛ばした方が楽かもしれない……


 そう考えて、部屋の電気を消し、ベッドに潜り込む。薄い毛布を頭までかけて、和也からの貰ったぬいぐるみを抱きしめて頑張って眠りについた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日、目が覚めた後に寝転びながらスマホを手に取る。電源がつかないことに一瞬、びっくりしたが昨日の自分の行動を思い出した。今は何時間確認するために、机に出しておいた腕時計を見る。

 時計は7時13分だった。


 やばい!いつもより20分ほど、起きるのが遅い。

 スマホの電源を切っていたからアラームが鳴らなかったんだ。というか、アラームがなくても起きられると思った。昨日は寝るのが早かったのに……

 いや、昨日のことを考えている場合ではない。今は直ぐにでも準備しないと!


 私は大慌てで洗面台に行き、身支度を始める。いつもより少し雑になっているが、仕方がない。

 なんとか、いつもより5分ほど遅くなったが準備できた。リビングの時計を見て、電車の時間を思い出す。


 1本遅い電車になるけど、学校には間に合いそう。ふと、昨日のことをまた思い出す。


 和也は電車で帰っていた。ということは今日の登校は電車になるはず……。登校中にもしかしたら、会えるかも。


 私と和也の家は少し離れているが、最寄りの駅は同じ。和也は朝が弱いから、いつもぎりぎりに学校に来る。ということは今、家を出れば会える可能性が高い。会ってどうするかは分からないけど、まず、会いたい。ただ、会いたい。

 私は部屋にあるかばんを取って、早足で玄関に向かう。リビングの方から母からいってらっしゃいという声が聞こえた。


「行ってきます」


 少し、早口でそう言い。家の鍵を手に取り玄関を出る。鍵を閉めて、小走りで駅に向かう。

 頭では急ぐ理由はないと分かっているのに、早足が止まらない。もしかしたら、和也に会えるかもと思うだけで足を急かしてしまう。


 駅には電車のくる5分前に着いてしまった。改札をとおり、ホームに行く。ホームに立っている人は朝のラッシュ時間のため、沢山いるが、制服姿の学生は多くない。その中から目当ての人を必死に探す。どうやら、駅の中にいる人に和也はいないみたいだ。次は階段やエスカレーターから登ってくる人たちから和也を探す。


 しばらくすると、電車がやってきた。和也の姿はまだ、ない。それなら、一本電車を遅らせて、次の電車に乗ろうと決意する。

 次の電車に乗らないと予冷に間に合わない。だったら、この電車に乗るはず!次の電車は7分後のようだ。また、階段やエスカレーターから登ってくる人たちから和也を探す。


 しかし、いつまで経っても和也の姿は見つからない。構内にアナウンスが鳴り響く。これに乗らないと遅刻してしまう。でも、和也いない。もしかして、もうずっと前の電車に乗っていたのだろうか?

 そう思い、私はとりあえず電車に乗り、学校へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 正門から学校に入る。相変わらず、鬱陶しいぐらい男たちが話しかけてくる。まあ、いつも通りだけど。


「えっー!そうなんだ!すごいね」


 外向けスマイルを駆使しながら、面倒ごとを片付ける。

 話しかけてきた男たちを適当に話を合わせながら、目線はあちこちに向いている。

 もう、学校に来ているはずだ。どこにいるの?

 私は教室まで早足で歩き。教室に入る。和也の席を見るが、そこに臨んだ人の姿はなかった。かばんもない。


「佐々木さーん。どうした?何かあったの?」


 私が彼がいないことによる虚無感に浸っていると、名前も知らない男が声をかけてきた。


「何もないよ。心配してくれて、ありがとうね」


 寒気がするくらいのスマイルをして、そう答えてあげた。目の前の男はキモいくらい喜んでいるが、今の私にはそれに対してドン引きする余裕はない。


 和也がいない?どういうこと?どうして、いないの?なんで?いないの?


「キーン、コーン、カーン、コーン」


 予鈴がなった。担任が教室に入ってきて、生徒たちは自分の席に戻る。もちろん、彼の席は空席だ。


 どうしてこないの?休みなの?もう私の顔を見たくないってこと?もう彼の姿を見ることもできないの?たった一瞬、素直にならなかっただけでどうしてこんなことに……


 担任が今日の連絡事項を話している。その説明はまったく、耳に入ってこない。


 泣きそう……だめだ、こんなところで泣くのは絶対ダメ。


 どれくらい時間が経っただろうか?それも分からないくらい、動揺している中、後ろの扉がガラガラと小さな音を立てて開いていくことに気がつく。

 担任の声よりも遥かに小さな音であるにも関わらず、気づいたのは第6感が働いたからだろう。そこには私の望む人がいた。


 和也がいた。そこに和也がいた。紛れもなく宮野 和也だ。相変わらず、地味な見た目だけど私にとってはアイドルよりもかっこよく見える。


 姿を見た瞬間に涙がこぼれそうになる。私は咄嗟に自分の太ももをつねった。


「すみません。寝坊しました」


 和也は寝坊をしたみたいだ。あぁ、朝が弱いところもかわいいなー。私なら毎日、起こしに行くのにな。


 和也は自分の席に向かう。一瞬、彼と目が合いそうになったが、彼はすぐにそらした。


 なんだろう。もう悲しいとも思えない。あからさまな彼からの拒絶。

 昨日からのトイレでの会話に始まり、自転車置き場やメッセージのブロックとかで何度も拒絶されていた。何度も何度も拒絶されると、悲しいという気持ちにすらならない。もはや、虚無感しかない。


 私は利き手で自分の髪の毛の根本を持つ。そして、全力で引っ張って、こんな状況を作った自分に罰を与える。罰を与えることで心が安定することを望んでいるのだろう。

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