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佐々木愛の日常1 side 佐々木 愛

主人公目線が落ち着いたので、ヒロイン目線です

しばらく続きます

 和也に告白されて1日経った。あれから、和也とは全く喋っていない。まあ、半日くらいしか経っていないけど……


 告白された次の日、和也は遅刻してきた。でも、彼は何事もなくいつも通りに授業に挑んでいる。

 私は授業中にずっと、和也のことを考えていた。和也との思い出も思い出して、楽しくなってくる。しかし、左後ろをチラッと見て、私のことなんて気にしていない、彼の姿を見て絶望する。


 こんな状況だったため、授業の内容は全然入ってこなかった。ずっと和也のことを考えていたら、いつのまにか授業が終わっていた。

 次は体育の時間。体育はいい。男女が別で行うから、何も考えないで済むし、男からのウザい目線もない。


 私たちは更衣室で着替えるため、教室を出る。男子達が騒いでいるが無視する。教室に出ていく時もチラッと和也を見てしまう。


 更衣室で体操服に着替える。体操服は地味で可愛くない。でも、体操服を着ていると和也の視線をいつもより感じる。もしかしたら、和也は体操服が好きなのかもしれない。

 そう思うようになってからは体操服も嫌いじゃなくなった。


 そんなことを考えながら、着替る。体育では髪を結んだほうが楽なため、シュシュを鞄から取り出そうとする。

 しかし、残念ながらシュシュは入っていなかった。教室に忘れたのだろう。ダメだな。ぼっーとしていたら。


「今日って、体育何するんだっけー?」


「えーっと、バレーだったと思うよ」


 バレーだったら、髪が鬱陶しいかな?

 はぁー、面倒だけど教室に取り行こうかな。


「バレーか。私、シュシュを忘れたから取ってくるね」


 更衣室を出て、教室への階段を登る。授業が始まるため、小走りで駆けていく。

 しかし、上の方で男の子の声が聞こえて、咄嗟に足を止める。


「田中か。大丈夫に決まっているだろ。昨日も言ったが、もう佐々木さんのことは全く興味もないしな」


 和也の声がした。前半の意味はわからない。しかし、後半に行った佐々木さんという他人行儀なところと、全く興味がないという言葉に絶望する。

 こんなことなら、シュシュなんて取りに来なければよかった。それじゃ、こんな気持ちにならなくて済んだのに。


 和也は当たり前のように階段を降りてくる。私は気が動転して、動くことができず和也と目が合う。

 目があった瞬間、和也は私のことを睨んだように感じた。私はそんな和也の表情を見て、泣きそうになるが幸いなことにすぐに目を逸らしてくれた。

 和也のあんな顔をずっと見ていたら、泣き崩れていた。和也が去っていって、1人になった階段で今、起きたことを思い出す。


 和也が私と目があった瞬間、私を睨んですぐに目を逸らした。


「佐々木さん?どうかした?」


 和也以外の男の声で冷静になった。溢れそうな感情も抑えれて、いつも通りの私に戻る。


「何もないよ。伊藤くん。ちょっと、教室に向かっていてね」


「そっかー。なんか、凄く悲しそうな顔をしているように見えたんだ」


 私はこの、伊藤とかいう男は好きではない。だって、どう考えても私のことが好きだし、私のことを狙っていることがわかる。好きでもない男からの好意なんて、気持ち悪くて仕方がない。

 それにこいつは自分に対する、自信とかプライドとかが、めちゃくちゃ高くて、それもキモい。

 まあ、私からすると和也以外の男なんて全員、キモいとしか思ってないんだけどね。


「そんな顔してないよ。気のせいだよー」


 そういい、走って教室に向かう。教室に男子はいなく、私はカバンからシュシュを取り出す。

 ふと、当たりをも見渡す。

 廊下にも教室にも誰もいなく、この空間には私しかいないと自覚する。


 誰もいないと自覚してから、私の本能が私の体を支配する。和也の机に行き、椅子に座る。目の前には和也がさっきまで着ていた服がある。

 ダメだ。と理性が体の支配権を取り戻そうとするが、本能がそれを止める。

 もう一度、辺りを見渡して、誰もいないことを確認した後にシャツを取り出す。そして、顔につける。

 その後、大きく息を吸って和也の匂いを体内に入れる。体内に入れた瞬間、身体中が満たされていくことを実感する。


 あぁ、私がもう、直接嗅ぐことができない匂い。そんな尊いものがこんな場所にあるなんて……


 私は息を吐くことを忘れて、ひたすら鼻で息を吸う。その結果、少しむせてしまう。しかし、その後も取り憑かれたように匂いを嗅ぐ。

 理性の私は犬みたいな姿をしている私を叱りつけてくる。しかし、そんなことを無視して、ひたすら犬みたいな行為を続ける。


「キーン。コーン。カーン。コーン」


 はっ!とさっきまで体を支配していた本能が引っ込んで、理性が体を操る。そして、当たり前のように何事のなかったかのように服を戻して、体育館に走っていった。


 走る中でさっきまでの絶望感が薄れていることに気がついた。ここしばらくは苦しくて、辛かったがそれがほとんどなくなってスッキリしていた。

 恐らく、和也の匂いは麻薬なんだろう。辛いことを忘れ去ってくれる。そして、一度手を出したら止めることができない。

 さっきまでの私の行為を止めていた、理性すら和也の匂いを求めているのだから。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 体育が終わり、教室に戻る。さっきまで教室が騒がしかったが、女子が入ってくると大人しくなった。

 まあ、どうせくだらない下品な話でもしていたのだろう。


 私は席に戻りながら、つい、和也の方を見てしまう。彼は私がさっきまで匂いを嗅いでいたシャツを何も知らずに着ていた。そんなことを考えるとドキドキして、恥ずかしくなる。


 あのシャツをどうにかして手に入れることができないかな……

 いやいやいや、人の物を取るなんて犯罪だよね?うんうん。そんなことはしてはいけない。


 どうにかしてシャツを手に入れる方法を考えて、それを慌てて否定する。しかし、さっきのシャツの匂いを思い出して、やっぱりシャツが欲しいと思う。そんなことを考えていると、シャツ以上にもっと匂いが強い物が欲しくなってくる。


 そう例えば、下着とか。

 和也の肌に直接触れているから、匂いがとんでもないはずだ。しかし、下着は体育だとしても脱ぐことはないだろう。


 なんで!この学校には水泳の授業がないの!


 水泳の授業があったら、下着の匂いを嗅ぐことができるのに。今の私には匂いを嗅ぐことしかできないのに……


 どうすれば、彼の下着を手に入れれるだろう……

 学校では無理か……だったら、家とか?

 いやいや!人の家に勝手に入るなんて完全に犯罪だよね?でも、彼の家には入ることはできるかも……


 昔、話してくれたことを思い出す。玄関前に鍵が隠されている。もう、何年も前に話したことで未だにあるかは分からない。でも、もしあったら家に入ることはできる……


 ダメだ。もう、頭の中が不法侵入のことしか考えられない。下調べとして、いまだに鍵があるかは確認しようと思う。もし、鍵があったらこの計画を実行するだろう。だから、無いことを祈ろう。


 そんな犯行計画を企てていると、いつのまにか授業が終わっていた。昼休みになり、梨乃が私の席にやってくる。

 そして、前の席をこっちに向けてお弁当を広げる。私もお母さんが作ってくれたお弁当を広げて、一緒に食べる。


 いつものくせで、和也を目で追ってしまう。彼はいつもなは、なんか友達みたいな人らとお昼をとっている。しかし、今日は一人ぼっちで佇んでいる。

 1人なら私と食べようよ!と言えればいいが、そんな勇気は全くない。そもそも、私は和也を何かに誘ったこともない。いつも彼から誘ってくれていた。それでも今までは一緒にいられたし満足だったが、これからは彼から誘われることはないだろう。


 私が勇気を持てず、ダラダラしていたら教室を出ていってしまった。すぐに戻ってくるだろうと思い、私は梨乃と喋りながらお弁当を食べる。


 お弁当は食べ終わったが、和也は帰って来ない。私は梨乃と喋っているがそんな時に空気を読まず、男たちが喋りかけてくる。


「昨日は大変だったなー。佐々木さんは大丈夫だった?」


 えーと、こいつの名前は何だったかな?あぁ、覚えてないや。まあいいいか。

 てか、昨日の話って何?大変なのはむしろ、この状況なんですけど。


「大変って、何の話?」


 少しイライラしていることを自覚しているからか、愛想よく答える。名前も知らない男はそれをキモいくらい喜びながら答える。


「昨日の告白だよ。宮野に告白されていなかった?」


「どうしてそれを知っているの?」


「一部のやつがそれを見ていたんだよ。あれ?知らなかった?」


 感情的になりそうなところを我慢できた自分を褒めてやりたい。見られていたの?私が彼を振るところを。

 てか、クラスのみんなそれを知っているの?


「梨乃は知っていたの?」


 私は学校で1番仲のいい友達に聞く。

 梨乃は答えにくそうな表情で言った。


「うん。知ってたよ。結構いろんな人が知っていると思うよ」


 そんな。そんなことってある?

 振られた事がクラスメイトに知られているなんて、彼はいい笑いものだろう。そして、そんな状況を作ったのは私自身……

 そうか、さっきの体育の時に私も睨んでいたのはそういう事だったのか。私のことを嫌いというより、憎んでいるのかな?この状況を作り出した私に。


 今すぐに、彼のことが大好きだってことを言いたい。声を大にして教室中、いや学校中に聞こえるように宣言したい。でもそんなことはできない。


 彼は私のことを好きではない。


 いや、これは言い訳だ。私にはそんなことをする勇気はない。私は無難に何事もなくクラスに溶け込むことを考えて来た、それを否定するようなことはできなかった。


「佐々木さん?大丈夫?」


 目の前に男がいたことを忘れていた。つい、考え込んでいたが、不快な声によって現実に返された。


「大丈夫だよ。何もないよ

 それに、宮野くんのことをいうのはやめて貰えるかな?」


 わざと少し怒っているような雰囲気をだして、答えた。これをすることで、私の前で和也の話題が出ることはないだろう。


 それにしても、和也……

 性格の悪いやつらに、何も言われていないと良いけど。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日は土曜日。お休みだから、和也の姿を見ることはできない。

 遊ぶ約束は嫌ってくらい来ているが、全部適当に無視する。


 部屋に閉じこもって、メッセージアプリを開く。和也からは相変わらず返事も来ないし、そもそも既読もつかない。

 ブロックされているのは確実だろう。


 私は返事が来て欲しいからか、また、メッセージを送ってしまう。


「ねぇ、和也。好きだよ。世界で1番愛している」


 いつもなら、言うことも書くこともできないようなセリフを簡単に送信してしまう。ブロックされているのだから、開き直っているのだろう。


「どうして私のこと見てくれないの?私は和也のことをずっと、ずーと考えているのに」


 一度、送り始めると止まらない。


「私が悪かったから、謝るから、私のことを見てよ」


「もう一度、私を好きになってなんて言わないから、ただ、私のそばにいてよ」


「私ね、和也のためにいろんなことを頑張ってきたんだよ?」


「料理もできるし、見た目も和也の好みになっているよ?だから、和也のお世話ならなんでもできるよ」


「そうだ!お世話してあげる」


「うんう。してあげるなんて、上から目線で言ったらダメだよね?」


「私に和也のお世話をさせて?」


「朝の弱い和也のことを優しく起こしてあげる」


「料理も栄養が高くて、美味しいものを作るよ」


「そして、それを食べさせてあげる。和也は口を動かすだけで良いの」


「うんう。口も動かさなくて良いや。私が口も動かしてあげる」


「和也はただ、飲み込むだけで良いの」


「すごく楽だよ?そんな生活したくないの?」


「ご飯以外にも、掃除や洗濯もするよ」


「和也のお部屋は毎日、掃除機をかけて、拭き掃除をするよ。お布団も毎日干して」


「あっ、お布団は毎日は無理か。雨が降っていると無理だもんね」


「洗濯も毎日、するよ。雨が降っていてもうまく干す方法があってね」


「部屋干しは生乾きの原因になるんだけど、それは部屋の湿度が高いからなんだよ」


「だから、除湿機を回して部屋干しすると凄く、綺麗に乾くんだよ」


「あぁ、でも洗濯物は少し使ってしまうかも」


「使うって言っても、少し匂いを嗅ぐだけだから。和也は何も気にしなくて良いよ」


「きちんと、綺麗にして返すから匂いを嗅ぐぐらい良いでしょ?」


「和也の匂いは凄いんだよ。もう、中毒性が高すぎて麻薬だよ。麻薬」


「また、嗅ぎたくなってきたし、どうにかして和也の服を手に入れるんだー」


「大丈夫だよ?きちんと、新品に変えておくから和也は何も気づかないの」


「ねえ。和也、返事してよ?」


「私、和也のせいでこんな変な女の子になってしまったんだよ?」


「私、和也がいないともっと、もーっと、変な子になってしまうよ」


「ねぇ、和也」


「私のことを見て、私のことを感じて、私のことを嗅いで、私のことを触って、私のことを聞いて、私のことを喜ばして」


「私のことを愛してよぅ」


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