3/3
正四面体
月着陸機から月基地への移動は、一般に宇宙服を着て歩いて行くと思われがちだが、実は便乗者には宇宙服など当てがって貰えない。
正三角形の面が4つ組み合わさった気密バッグの中に座りこみ、背中のジッパーと密閉シールを閉じてもらって、運んでもらうのである。
リアカー(興味深い月面開発の利器なのだが後程詳述する)に積んでもらうのはまだ良い。閉口するのは客が少ない時である。要員が担ぐ天秤棒の両端に吊るされて運ばれるのだ。バナナか何かのように。
ヘミングウエイはマッチ箱に小説を書く男と呼ばれたらしいのですが、名刺の裏に多少とも意味ある物語は書けるのだろうかという酔狂であります。