章 第三「20120423fragment■///対策班、動く」第二幕
※本作はシナリオライター笠間裕之先生の小説『木造ロボ ミカヅチ』の二次創作です。こちらだけでも読むことができますが、両方合わせてより楽しく読めるよう工夫しました。ぜひ原作もチェックしてくださいませ※
https://ncode.syosetu.com/n4681ci/
笠間裕之先生公認 巨大ロボ×日本神話 異色のご当地ロボ小説 まさかのスピンオフ!!
中学生になったばかりの伊能彩雲はちょっぴり剣術が得意なふつうの女の子☆ ひょんなことから幼馴染のお寺に隠されていた木造のロボットが明るみに出てもう大変!>< え?鹿島に出現した未知の脅威が私の故郷にも迫ってるの?それを防げるのはこのロボットだけ?そーゆーことならやるしかないじゃん!行くよフドウ!! そんなこんなで純情乙女の一大バトルスペクタクル、始まっちゃいます!鳴濤山不動院長勝寺で私と握手!!
1週間に3話ずつ、月・水・金辺りで更新予定。既に完結していますので最後まで安心してお読み頂けます。
この作品は「n4681ci」の二次創作です。作者より許可を頂いています。
若い警官に連れられるまま二人は阿弥神社を離れて霞ヶ浦の縁を歩いた。平日のため湖の周囲の人通りはまばらだ。
「仕事で来てるとは言え、こんな春のうららかな日よりにする散歩は心が弾みますね」
「着きました、ここです」
「うわっ……前言撤回、何ですかこれ……急に寒気が……」
そこにあったのは神社だったものだった。神社と言うよりは小さな祠と呼ぶ方がしっくりくるこじんまりしたお社に対してよくもこれだけの悪意が湧いたものだと感心するほど、社殿は崩され、折られ、割られて影も形もないほど徹底的に粉砕されていた。
「……なるほどね」
何かに気づいた和泉がタブレットをすらすらと操作する。
「これって水神宮とか水神社系統ですよね。破壊されたのはいつ頃のことですか?」
「近隣の方から通報を受けたのが一週間ほど前のことです。実はこれ以外にもあって」
「ここだけじゃないんですか?!」
「霞ヶ浦の周りって水神社とか水神宮が多いんですよ。昔から水難が多かったせいですかね。そういうのばっかりが狙われてるんです。別に信仰心とかある訳じゃないっすけど、ひどいと思います。こんなことをしても誰の得にもならないのに……」
「このご時世、そうとも限らないのよね。破壊された神社はこの辺りなんじゃない?」
和泉がタブレット上に表示した地図を指差す。そこは今いる地点を時計回りに歩くと行き着く、霞ヶ浦の南側の岸辺に沿っていた。
「そう!ここ含めてこの四つです。どうして分かったんですか?」
「神社本庁のデータベースと照合しただけよ。見て、霞ヶ浦を取り囲むように一八社の水神社が配置されてる。その内のほとんどが東側に位置してて、いずれも固有の名前が与えられている。それに対して西側は、守りが手薄でしょ?」
「本当だ……標的にされた西側の社はどれもただの水神社とか水神宮とかですね。ってか先輩、守りが手薄って何が何に対して何を守ってるんすか?」
「お巡りさん、阿弥神社が破壊されたのが一〇日前で、水神社の破壊は全てその後に行われてると思うんだけれど」
「はい、その通りです。ってことは、阿弥神社を破壊した犯人がこれをやったってことですか?」
「その可能性は低いわね。阿弥神社には重機が暴れ回った形跡があった。恐らく破壊すること、自分の力を誇示すること自体が目的の愉快犯。鹿島神宮で騒動を起こしたのと同一人物でしょうね。それに対して、ここのは擦り潰すようなやり方で徹底的に破壊されてる。まず重機の仕業ではないし、ミキサーにでもかけられたみたいに瓦礫のひとつひとつがとても細かいでしょう?」
「なるほど、確かに」
「多くの場合、水神社は本来の目的とは別に川や湖に潜む怪異から人々を守るための防波堤の役割を果たしている。東側、つまり海に接する側に神社が集中しているのはその怪異が海へ逃げないようにするためだったのだと思う」
「なるほど。西側に社が少ないのも筋が通りますね。水魔が陸に出ることはないから、水神社を置いて牽制する必要も薄い」
「そう。犯人はそこを見抜いて狙った」
「犯人……それってつまり、あの痛ましい眼をした女の子が……?」
「今話を聞いた限りでは、そう結論づけることになるわね」
「しかし蛟を指一本で釣り上げたっていうその女の子、全く見当がつきませんね。真っ赤な糸で両瞼が縫われてた、なんて……はっきりした特徴がありますけど、それに類する話は聞いたことがありません」
「土地に縛られていないのなら、どこか遠くから来たのかも知れないわね。しかも、何らかの目的を持って蛟に接触を図った。どうも拗れてきたわね。今回のは強いわよ」
「ええ、少なくとも一五人もの人間を食ってる訳ですからね」
「いえ蛟の方じゃなくて。大したことないでしょう、守り神の成り損ないなんて」
「まさか女の子の方ですか?」
「分からないのも無理ないけどね。残存してる霊障だけで頭痛がするもの。怪異としての格が違う」
「そっか、最近めっきりなかったんで忘れてました。先輩、見えるんですもんね。そうは言っても、蛟の行方を追うのが最優先ですよ。人を殺めてしまうだけの力を持った怪異が野放しになってる訳ですし」
「宜しくお願いします、亡くなっていった人たちのためにも」
「ええ、承知してる。そのための特異干渉対策班だもの。山岸、少し走ってもらえるかしら」
「良いですけど、一体どこへ?」
「あらゆる可能性を検証しておきたいの。もう一ヶ所、鹿島の容疑者によると思われる破壊工作の現場を見て来て頂戴。場所は北相馬郡利根町立木」
「あー待って待って、今メモ取りますから……」
次回予告
親友に向けた刃で示した己の覚悟。少女がその意味を思い知るのは、まだ——
神の器が三〇〇年の眠りから覚める時、引き返せない運命の歯車が廻り始める……
次回!木造ロボ フドウ「フドウ大地に立つ!!」
今こそ、全ての諸金剛に礼拝せよ
『木造ロボ ミカヅチ』及び『木造ロボ フドウ』に関係する場所についてGoogleマイマップを作成してみました!「……どこ?」となりがちな蛟の侵攻ルートが一目で分かるようになっています。作者の拙い文章に辟易したらご参照ください。
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1cB0mgV4Ew3R-w8D_ChEh0MR9-77cwqiP&usp=sharing
次回は7月2日更新です