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章 第七「20120502-0507fragment■///東金市街戦」第一幕

※本作はシナリオライター笠間裕之先生の小説『木造ロボ ミカヅチ』の二次創作です。こちらだけでも読むことができますが、両方合わせてより楽しく読めるよう工夫しました。ぜひ原作もチェックしてくださいませ※


https://ncode.syosetu.com/n4681ci/


笠間裕之先生公認 巨大ロボ×日本神話 異色のご当地ロボ小説 まさかのスピンオフ!!


中学生になったばかりの伊能彩雲はちょっぴり剣術が得意なふつうの女の子☆ ひょんなことから幼馴染のお寺に隠されていた木造のロボットが明るみに出てもう大変!>< え?鹿島に出現した未知の脅威が私の故郷にも迫ってるの?それを防げるのはこのロボットだけ?そーゆーことならやるしかないじゃん!行くよフドウ!! そんなこんなで純情乙女の一大バトルスペクタクル、始まっちゃいます!鳴濤山不動院長勝寺で私と握手!!


 1週間に3話ずつ、月・水・金辺りで更新予定。既に完結していますので最後まで安心してお読み頂けます。


この作品は「n4681ci」の二次創作です。作者より許可を頂いています。

挿絵(By みてみん)


 彩雲の祈りが通じたからという訳でもないものの、佐倉駅の襲撃から一夜明けても、テレビのニュースがこの事件を報道することはなかった。しかし、神社本庁も人の口にまで封をすることはできない。中学校では鹿島に出たのと同じ怪物が佐倉駅に出現したらしいと早速話題になっていた。もちろん、それらを退治した新たな神騎とセットで。

「さっきから乗り気じゃないみたいだけど、アヤも気になるでしょ?新しい木造ロボット」

「えっ?!うん、そうだね」

 突然話を振られた彩雲の動揺ぶりを、友人たちが疑わしげに観察する。

「なーんか最近怪しいなあ。部活も辞めちゃうしさ」

「それはごめんってば」

「もしかして男?!」

「はあッ?!」

「いけませんなあ、学生の本分もわきまえず不純異性交遊とはー」

「あっはは、なーんかリツコおじさんみたーい。きもちわるー」

「だーれがおじさんですってー?!」

 クラスメイトたちの戯れを、彩雲はどこか遠い眼差しで眺めていた。いつもと変わらない当たり前のはずの光景が、昨日までとはまるで違って見える。

 突然、がばっと立ち上がった玻那華が彩雲の許へやって来て自分の携帯電話を突きつける。昨日の戦いの後、佐倉駅に一時駐留させたフドウが映っている。

「あたしのことをけてたってわけ。いかにもモテない女がしそうなことね。そう言えば常葉君には話しかけてみた?」

「話を逸らさないで。わたしに黙ってこんなことしてて……一度は候補者になったわたしにまで秘密にする理由はなに?」

「ハナにはもう関係ないでしょ。——ここは学校だよ。みんな他人に興味ないふりしてずっと耳をそばだててる」


 放課後。一緒に学校を出た二人はフドウが格納された倉庫へやって来た。承一が鍵を差してシャッターを開ける。

 アスファルトでこすった以外にも生々しい傷跡多数の騎体の装甲を玻那華が指で撫でる。

「どうして、ハナが悲しそうな顔してんの……」

「この辺りには神騎を修繕できる技術を持った大工がもういないんで、玉前神社に問い合わせてる」

「たまさき神社?」

「九十九里を海岸沿いに南へ進んだ先、一宮市にあるよ。かつて上総国かずさのくにと呼ばれた地域では一番の由緒正しき神社だ」

「ふーん、そこにも神騎があるの?」

「ああ、ばあちゃんの話じゃ玉依姫命タマヨリヒメノミコトの依り代・神騎タマヨリがおわすそうだ。あそこに協力を仰げれば万事解決なんだが……」

「なんか問題あるの?」

「フドウの来歴がいささか特殊なんでね。何せ、不動明王の依り代だろ?」

「それがどうかしたの?」

「神騎ってのは本来、神道の神様を招く依り代なんだ。仏教の如来を招くには根本的な設計の段階からして違いがあるし、その上弘法大師ゆかりのこの寺は密教の流れを汲んでる。対応できるかどうかは見てみるまで分からないとさ。まあどのみち、あと数日で一度来てくれる」

「それまで直せるかどうかも分かんないのかー、落ち着かないなー」

 沈痛な面持ちでフドウを見つめる玻那華がぼそっと呟く。

「……修理が終わる前にまたあれが出たらどうしよう」

「ちょっ玻那華ちゃん、それは言わないお約束……」

 やんややんやと賑やかな三人の許へ忍海がやって来た。その後ろについて歩く女性に、玻那華は見覚えがあった。

「ばあちゃん、そちらの方は?」

「神社本庁特異干渉対策班の和泉と申します。あなた方が所有する神騎の初陣が成功したことについて、一言お祝いを申し上げたいと思ってね」

「全然違う用件だろ。ゴマを擦るんじゃないよ……場所を変えよう、フドウもこんな状態だし訓練はなしだ、皆、母屋おもやに来とくれ」


「では改めて。あなた方も知っての通り、事態が急変している」

 挨拶もそこそこに、居間に招かれた和泉がタブレットを片手に話し始める。

「うん。でもまさかほんとに現れるなんてね……それも一度に三体」

「昨日はあれだけではなかったのよ。その周辺で六体を観測」

「そんなにたくさん?!」

「そっちの方は神社本庁で処理した。佐倉駅に出没した三体は我々が取り逃がした個体よ。大きな騒ぎにならないよう周到に立ち回ったつもりではいたのだけれどね。醜態を晒すことになってしまって不甲斐なく思ってるわ。伊能さん、あなたには感謝しています」

「そんな……!私なんて」

 いかにもバリキャリと言った感じの和泉に深々と頭を下げられて彩雲は困惑した。

「ネットでよく見る黒いのに似てたけど、昨日のも同じやつなの?」

 玻那華の質問に和泉が答える。

「あれらに関しては、形態の異同は問題ではないわ……難しいかも知れないわね。崇拝すべき神々でさえ八百万やおよろずと言われているでしょ。その外側にいる魔物の多様性は正統の神々を遥かに凌駕している。呼び方も様々。我々は特に五月蠅なす者と呼称しているけれど、ここではあなた方に合わせて罔象と呼ぶことにしましょう」

「さばえなす……」

「鹿島神宮の一件が引き金となってそのすぐ近く、霞ヶ浦に封印されていたものが目覚めた。伝承によれば毒を含んだ光を放つ怪魚で、ミヅチと呼称される。まだ目撃証言だけで写真がある訳でもないのだけれど。これが罔象の、国内で二例目の出現になる」

「問題は霞ヶ浦で起きてるんだろう。ミカヅチにお出まし願えば良いじゃないか」

 忍海の尤もな意見に一同が頷く。

「ええ、是非ともそうすべきだった。もっと早く発見できていればと思う。最初に目撃された時点で、奴は移動を始めてしまっていた。自らの縄張りを捨ててね」

「霞ヶ浦から、逃げたって言うのかい」

「蛟がこの数日間で辿ったルートを見れば分かるわ。鹿島神宮から離れようとしているように見える。自分から退治されに行くような真似を避ける程度の知能はそなえているようね」

「……ちょっと待って、これって」

 和泉のタブレットに映された地図を見てすぐに四人の表情が曇った。

「こっちに向かって来てるじゃん!」

「陸上を移動しているけれど、やはり水辺を好むようね。手賀沼、印旛沼……沼沢地しょうたくちで休憩を挟むようにして南下している」

「それで次が雄蛇ヶおじゃがいけってわけか……」

 蛟が辿ったルートは現在潜んでいる印旛沼で途切れており、そこから先は予測されるルートが点線で示されている。雄蛇ヶ池の近辺にはときがね湖や八鶴湖と、湖沼が多い。そうして徐々に長勝寺へと接近して、最後には海へ出ると和泉は考えているようだ。

「蛟が鹿島神宮から離れたがっているのは恐らく、ミカヅチがいるからというだけではない。鹿島神宮は日本列島を貫くいくつものレイラインの起点になっているの。罔象は基本的にレイラインを渡ることはできない。無策に渡れば自分とは異質な霊威に灼かれて消滅してしまう。それでも海へ出るつもりならどこかで渡らなければならないから、その抜け道を探っている最中なのではないかと私は考えてる」

 タブレットに表示された地図を縮小してレイラインをプロットしたレイヤーを重ね合わせる。鹿島神宮と玉前神社を繋ぐ直線上に長勝寺があり、この場所がしっかりレイラインの一部に組み込まれているのが確認できる。玉前神社から先は左へ横一直線のラインが日本列島を出雲大社までまっすぐに貫いている。いささかオカルトめいた説明を、四人は今更何の抵抗もなく受け入れた。

「奴が陸を這っている間は、奴にとって不利な状況で戦うことができる。海へ出たら、立場は逆転するでしょうね」

「それが、あんたが焦る理由かい」

「ええ……。雄蛇ヶ池に入るまでが勝負だと思ってる。二課の一存で動員できる力を全て投入して迎撃するつもりよ」

 映し出された地図を見つめて彩雲が考え込んでいることに玻那華は気づいていた。

「別の場所で網を張っていた特班トッパン一課の本隊とも合流できたし、それなりの規模の作戦になる。とは言えどの程度の力があればミヅチ調伏ちょうぶくできるのかは未知数のまま。一度も交戦した経験がないのだから当然ではあるけれど、不安は残るわね」

「それ、さ……」

 彩雲がふと呟く。

「あたしがいたら邪魔かな?」

「あなたがフドウに乗って作戦に参加してくれるってこと?」

 和泉の声が急に明るくなる。

「五月蠅なす者との交戦経験を持つのは現状武見衣乃理と諏訪希と、あなただけだもの。邪魔どころか大助かりよ。歓迎するわ」

「駄目だ」

 忍海が厳しい表情で遮る。

「どうして?ししょーだって昨日の大惨事見たでしょ?ここで食い止めなきゃ、もっとひどいことになるかもなんだよ?」

「神社本庁の赤紙には応じないと先刻伝えたはずだ、帰っとくれ」

「どうして?フドウに乗るのはあたしなんだよ?どうしてあたしが決めちゃいけないの?」

 何も答えないまま、奥の部屋へと下がる忍海。ふすまをぴしゃりと閉める音が響く。

「長勝寺の代表たる長月さんがそう仰るのなら、これ以上伊能さんに無理なお願いをする訳にはいかないわね。ごめんなさい、せっかくだけど今のは忘れて」

「いや待って、待って和泉さん」

 わざとらしいほどそそくさと出て行こうとする和泉に必死に追いすがる彩雲に、全く取り合う隙も与えないまま和泉は母屋を立ち去った。

 呆然とする彩雲は、襖越しに忍海に言い募る。

「あたし、半端な覚悟でフドウに乗ってるつもりないよ。あたしがフドウに乗ることにしたのはこういう時のためなんだよ?なのにどうして……」

「あんたは未熟だ、彩雲」

 忍海の静かな言葉に、喚き散らしていた彩雲は思わず硬直した。

「あんたは目の前の戦いに夢中になり過ぎて、自分が握った刀で危うく人を殺しかけていたじゃないか。あたしが気づかないはずないだろう。あんた自身、気づいてないはずないだろうが」

 すすり泣く彩雲に忍海は容赦しない。その態度は普段の剣術の指導と一切変わりない。

「フドウが傷を負ったのは敵の攻撃を受けたからじゃない。あんたがフドウに傷を負わせたんだ。あんたがちゃんとしてれば、あの程度の敵ごときにあれだけの傷を負うはずがないんだ。あたしの言ってる意味が分かるか、彩雲!」

 泣き声が漏れないよう必死に口を押さえたまま、彩雲は外へ駆け出した。玻那華もついて行く。

 静かに聞いていた承一が襖を開ける。

「全く、不器用なんだから……」

 背を向けてうつむいた祖母の姿は、すっかり大人になった孫の目にはちっぽけに見えた。

「彩雲ちゃんが大事だからだって、素直に言ってやりゃ良いのに」

「神騎に乗っての戦いは今までの稽古とは訳が違う。あの子が自分の行動に、その結果に全部責任を持てるようになるまであたしは何度でも言うさ」


 長勝寺を後にした和泉のポケットの中でスマートフォンがバイブレートする。

「私よ」

〈先輩、所定のポイントから離れてますね?〉

 相手は部下の山岸だった。まだ印旛沼で怪異の動向を見張っている最中のはずである。

「ああ、GPSを切り忘れてたっけね」

〈いや切っちゃ駄目でしょ、一課の指示には従わないと。また白い目で見られますよ〉

「一課の指示に従わなかったおかげで親玉の足取りを見失わなくて済んだ訳だし、少しは大目に見てもらいましょう。課長もお手柄ってことですこぶる機嫌が良いじゃない」

〈東京湾に網を広げてた本隊とは、もう合流できてるんでしょ?お隣の町に一体何の用があるんです?〉

「強いて言うならスカウト、かしらね」

〈スカウト?まさかここ数日見守ってたあの子ですか〉

「新設されたばかりの寄せ集め部署が掻き集めた出来合わせの部隊なのよ。未知の敵を相手に回すなら兵の質が確保できない以上、数は多いに越したことはない。そう思わない?」

〈でも、前にそこの代表にはきっぱり協力要請を断られたんですよね?〉

「今日もはっきり言われたわ。……でもあの子はきっと来る。何だかそんな感じがする」

 暮れなずむ夕日を眺めながら、和泉は電話を切った。間もなく昼と夜との境界、逢魔ヶ時の刻限が訪れる。姿こそ見えないが、蛟は今夜もきっと動くだろう。作戦開始の時が近づいていた。

次回は7月18日(日)更新です

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