章 第五「20120428-0501fragment■///開戦前夜」第二幕
※本作はシナリオライター笠間裕之先生の小説『木造ロボ ミカヅチ』の二次創作です。こちらだけでも読むことができますが、両方合わせてより楽しく読めるよう工夫しました。ぜひ原作もチェックしてくださいませ※
https://ncode.syosetu.com/n4681ci/
笠間裕之先生公認 巨大ロボ×日本神話 異色のご当地ロボ小説 まさかのスピンオフ!!
中学生になったばかりの伊能彩雲はちょっぴり剣術が得意なふつうの女の子☆ ひょんなことから幼馴染のお寺に隠されていた木造のロボットが明るみに出てもう大変!>< え?鹿島に出現した未知の脅威が私の故郷にも迫ってるの?それを防げるのはこのロボットだけ?そーゆーことならやるしかないじゃん!行くよフドウ!! そんなこんなで純情乙女の一大バトルスペクタクル、始まっちゃいます!鳴濤山不動院長勝寺で私と握手!!
1週間に3話ずつ、月・水・金辺りで更新予定。既に完結していますので最後まで安心してお読み頂けます。
この作品は「n4681ci」の二次創作です。作者より許可を頂いています。
襲撃されたスクラップ工場では、夜の明けきらぬ内からパトカーが詰め寄せて取り調べが始まっていた。警報の作動により駆けつけた警備会社の面々は、状況を確認するなりこの襲撃が全く自分たちで対処できる範疇を超えていると知ってすぐさま警察へ通報したのだった。
「完全に先を越されましたね」
警察関係者以外立ち入り禁止のバリケードをくぐりながら、山岸がぼやく。自前のバイクでいち早く現場へ来ていた和泉が、遅れた部下にぼやきで返す。
「仕方がないでしょう、こっちは新設されたばかりのヒヨコなのよ。常日頃から急を要する事態に備えてる人たち相手に、我々は先手を取れない」
「せめてもう少し人数がいればなあ……」
「ないものねだりをして何になるの。多少ひもじくても、我々は首相の勅命を受けて活動してる。どれだけ疎まれようと、妨害される心配がないだけありがたいと思わなければ」
和泉の言う通りだった。この襲撃事件に関する情報は神社本庁から支給されたタブレット端末で全て一覧できるし、逐一更新され続けている。
現場を歩き回りながら、タブレット上で監視カメラの映像を開く。
映像には、無数の二足歩行重機が金網を破ってぞろぞろと出て行く様が映し出されていた。いずれもスクラップにされる運命だったとは信じられない、元気な様子だ。
「丁度この辺りね、あのカメラが映したのは」
「怪しいのが映り込んでるのはそこだけなんでしょ?何者かが侵入した痕跡は今のところなし。他のカメラには何も映ってないし、一体中で何が起きていたのか……」
「素朴な疑問なんだけど、ここに引き取られたスクラップ直前の重機って、動かせるようになるものなの?」
「まず無理ですね。大抵は同型機の修理用に目ぼしい部品を予め取ってからスクラップに出すので。仮に天才的な技師がここにあるものだけで何十台もの重機を動かせる状態に、たった一晩で修理したとしても燃料の問題があります。火災にならないようここへ来る前に抜かれてますから、燃料だけは外から持ち込まないと」
珍しく和泉から質問されて山岸が得意げにペラペラと答える。
「それに、操縦する人間だって必要なはず……」
目撃者ゼロ。常駐していたはずの警備員は行方不明。侵入者の痕跡なし……。間違いなかった。これは——
「これは、妖怪の仕業ね」
「であれば、親玉はやっぱり霞ヶ浦のあいつと見て間違いなさそうですね」
山岸が、手にしていたガイガーカウンターのような装置に目を移す。
「霊障のパターンが一致してます。しかし、だとしたら不可解ですね。一体何が目的なのか……いや、ひょっとしたら目的なんかないのかも知れませんけど」
和泉が霞ヶ浦から出現した怪異が辿ったと推定されるルートに今いるスクラップ工場を追加する。数日前、和泉が睨んで山岸が調査した蛟魍神社で蛟が出現した形跡が確認された。その後、地上を渡って手賀沼に行き、昨晩この工場へ来た。最短経路は五四km。この数日間、蛟は活発に移動し続けている。
「霞ヶ浦からほぼ直線のルートですね。神社本庁の見解通り、東京湾に出ようとしてるんでしょうか」
「そうとも言いきれない。怪異の思考パターンは我々とは全く違うのよ。蛟罔神社は罔象女神を祀っているし、手賀沼には河童の伝説がある。五四kmという距離が怪異にとって遠いのかどうか、それは分からないけれど水辺に棲む怪異は本来自分の縄張りを出ることはないから霊的に意味のあるスポットで休憩を挟みながら移動してるとも考えられる。まっすぐ南西の方角へ向かってると言うよりは、霞ヶ浦とそれらのポイントがたまたま直線を結べる位置にあっただけと考える方が間違いないわ」
「だとしたら……」
山岸が自前のタブレットでマップを操作する。この工場から最も近い、水にまつわる伝承を持つ場所……
「次は印旛沼が怪しいですよ」
「良い推測だと思う」
「よし、じゃあ早速行きましょう!」
「印旛沼へは、あなた一人で行ってちょうだい」
「ええっどうしたんすか急に」
バリケードを抜けておもむろに愛車のバイクに跨がりヘルメットを装着する和泉。
「奴が東京湾じゃなく印旛沼へ行くのであれば、私の仮説が証明されたことになる。既に移動を始めてるでしょうから、今から向かったところで対した行動は起こせない。だったら、その次に行く場所に目星をつけて罠を張って待ち伏せする。これに賭けることにするわ。あなたは印旛沼で待機して、奴が来るまで見張っていて」
「それ、結構大きな賭けじゃないすか?」
「大丈夫。東京湾周辺には既に特班一課の本隊が網を広げて待ち構えてるし、私の見立てが間違っていても奴を取り逃がすことはないわ。神社本庁の見解に背いた私たちの首は飛ぶかも知れないけど」
「なるほど……」
「付き合わせちゃって悪いわね。でもあなた、そういうの好きでしょ?」
「好きっす。っつうかバイクで現場に乗りつけるって言うから何でだろうと思ってたんですけど、最初からこうするつもりだったんすね」
二人は分かれ、それぞれの役割のためにそれぞれの場所へ向かった。バイクで走り去る間際、後ろを振り向く。現場では、未だ手がかりひとつ掴めない様子の警官たちが走り回っている。彼らには気の毒だが、暗躍する神社本庁のカムフラージュになってもらわねばならない。
「この事件、きっと迷宮入りね」
「木造ロボットの新しい映像見つけたんだけど」
ゴールデンウイーク半ばの登校日となる五月一日火曜日。クラスメイトの一言に、放課後の教室がにわかに色めく。教師がいないのを良いことに二〇人余りが携帯電話の小さな画面に映る映像に釘付けだ。そこには、神社本庁が全力で差し止めていたミカヅチ・ミナカタと五月蠅なす者との対決の様子が映されていた。
「最近全然ニュースになんないからどうしたんだろうと思ってたんだよね」
「何かそれって陰で政府系の組織が圧力かけてるかららしいよ」
「ふわっとした陰謀論だなあ」
彩雲は興味のなさそうな顔を作って沸き立つクラスメイトたちを外側から眺め、玻那華はそんな彩雲を見つめていた。盛り上がるクラスの中で映像に気を取られていないのは二人だけだった。
出席番号三二番「男子ってほんといやらしい、お目当てはロボットじゃなくてそれに乗ってるかわいめの女の子なんでしょ」
女子から偏見たっぷりの冷やかしが投げつけられると、今度は男子たちから非難の声が上がる。
「何言ってんだよ、そんなんじゃないって」
「そうだそうだ、かわいめなんて言い方はよせよ!衣乃理ちゃんはかわいいだろ」
「いいや、断然希ちゃんだね」
神騎の搭乗者としてニュースに映っていた武見衣乃理と諏訪希は男子たちの間では今やアイドルのような扱いだった。女子対男子の口喧嘩は、こうして男子側が「女の子よりロボ」派の一枚岩でないことが明るみに出てあえなく幕を閉じた。
帰り道、自分の後ろをいそいそとついて来る玻那華に彩雲は落ち着かない気分だった。川沿いの土手で立ち止まると、自転車に跨ったまま振り向いた。
「何か用?」
「神騎のこと……」
「みんな盛り上がってたねー、あたしが選ばれし巫女だってバレたら人気者になっちゃうかも」
「あんなのと、たたかううもりなの?」
「へいきへいき、あたし強いから」
「うそ……まだ一回も動かせてないくせに……」
「はあっ?!ぜんぜん動かせるし、昨日歩けるようになったし!ってかなんでハナがそんなこと知って」
不意に嫌な気配を察知して辺りを見回す。
「今のは……?」
左腕を見ると孔雀色の数珠が輝きを増してぎらついている。この気配に反応しているようだ。
「あやちゃん……?」
〈只今、佐倉市、京成佐倉駅、沿線で、火災が、発生しました。お近くの方は、事態が収束するまで、安全な場所へ、避難してください。この火災による、消防団の出動は、行いません。これは、訓練ではありません。これは、訓練ではありません。繰り返します、只今……〉
各所の屋外スピーカーが防災行政無線の音声を一斉に報じる。輪唱のようにこだまする中を、彩雲がポケットの中の携帯電話をまさぐりながら全速力で自転車を漕ぐ。玻那華も後を追う。
今の無線の内容はおかしい。ここは山武市で、佐倉市は八街市を挟んだ向こう側の街だ。ただの火事なら報じるはずがない。火事なのにわざわざ消防団の出動を要請しないと宣言したのも不可解だ。それに、嫌な気配は佐倉駅の方角から漂っているような気がする。
「ししょー!今起きてる火事ってふつーのじゃないよね!?とりあえずフドウに直行で良い?!」
〈ああ、とうとう来たようだ……〉
携帯電話の向こう側で忍海が重々しく呟いた。
石塚山へ辿り着くと、ほとんど自転車を投げ捨てるようにして山道へ入りフドウが鎮座する倉庫へ向かった。
彩雲の姿を見つけた承一ががらがらっとシャッターを上げる。
「待ってたよ、覚悟は良いね?」
次回予告
戦いの始まりを告げる合図。少女がそれを口ずさむ時、神騎の復活は完成する。
次回!木造ロボ フドウ「彩雲の初陣」
今こそ、全ての諸金剛に礼拝せよ
次回の更新は7月14日(水)更新です




