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章 第四「20120423-0428fragment■///フドウ大地に立つ!!」第三部

※本作はシナリオライター笠間裕之先生の小説『木造ロボ ミカヅチ』の二次創作です。こちらだけでも読むことができますが、両方合わせてより楽しく読めるよう工夫しました。ぜひ原作もチェックしてくださいませ※


https://ncode.syosetu.com/n4681ci/


笠間裕之先生公認 巨大ロボ×日本神話 異色のご当地ロボ小説 まさかのスピンオフ!!


中学生になったばかりの伊能彩雲はちょっぴり剣術が得意なふつうの女の子☆ ひょんなことから幼馴染のお寺に隠されていた木造のロボットが明るみに出てもう大変!>< え?鹿島に出現した未知の脅威が私の故郷にも迫ってるの?それを防げるのはこのロボットだけ?そーゆーことならやるしかないじゃん!行くよフドウ!! そんなこんなで純情乙女の一大バトルスペクタクル、始まっちゃいます!鳴濤山不動院長勝寺で私と握手!!


 1週間に3話ずつ、月・水・金辺りで更新予定。既に完結していますので最後まで安心してお読み頂けます。


この作品は「n4681ci」の二次創作です。作者より許可を頂いています。

挿絵(By みてみん)


 一体何が起きているのか、考える暇もないまま彩雲の身体は再び駆け出した。今度は北北東へ。先ほどよりも長い道のりだったが、雨をものともせず一瞬の内に辿り着いた。また木の城壁に囲まれた屋敷と松明が見えたが、今度も飛び込んだ次の瞬間には荒れ果てた山に立ち尽くしているのだった。

 彩雲の身体はもう走り出すことはなかった。しのつく雨に打たれながら、彩雲はきゅっと、胸が締めつけられるような痛みを感じた。


 彩雲は目を覚ました。狭いコクピットの中で丸くなって眠りこけてしまっていたらしい。音はしないが、ほんのり雨の匂いがする。

「今のは……?ぜんぶ夢?」

 胸に手を当てる。夢の中で感じた痛みがまだ残っている。

「これは……あたしのじゃない、あなたの痛みなんだね。悲しんでるの?寂しいの?それは不動明王として?それとも、神騎として……?」

 彩雲の問いに答える声はなかった。ただ、流れ込んできたのは「みんな、いなくなってしまった」という空虚な感情だけだった。

 おもむろに身を起こし、姿勢を正すと彩雲は倉庫に鎮座するフドウを立ち上がらせて外に出た。自分の身体でそうするのと同じように、さも当たり前のことのように。

「彩雲ちゃん!まさかやったのか?!やったんだな!?」

 足許で承の声がする。フドウを歩かせた地響きで目を覚ましたらしい。密閉されたコクピットにいながらにして外の景色が肉眼で見るよりもはっきり見える。不思議な感覚だった。全方位三六五度全てに常に視界が開けている。

 操るフドウに誇らしげにピースサインをさせると、キャノピーを開いて上半身を乗り出した。外は丁度日の出を迎えていた。彩雲は左手につけた数珠を愛おしそうに撫でた。今や重くも痛くもなくなった。その孔雀色がさっきまでよりも美しく輝いて見えるのは、きっと澄み渡った朝の空気のせいだけではない。


 初めてフドウの操縦に成功したその日の午前一一時。玻那華の部屋に泊まった彩雲はその日がゴールデンウイーク初日の土曜日だったこともあってすっかり余裕の朝寝坊を決め込んでいた。

「いつまで寝てる気なのかねえ、あの子は」

 縫い物をして過ごしていた忍海が小言を言う。読書をして過ごしている玻那華に向けた言葉であることには玻那華も気づいているものの、少し目線を上の階に向けただけで返事はしない。

 それからしばらくして軽やかな足音が階段を下りた。

「おはようございます、二人とも」

「早かないだろ。とっとと自分の家に帰りな」

「いや、それはできない。ママとパパには陸上部を辞めたこと言ってないし……ってか絶対言えないし、今日だってハナの家からそのまま部活に行ってることになってるんだから」

「それなら丁度良い、フドウの動かし方を訓練するかい。ただ歩けるだけのあんたじゃまだまだ一人前には程遠い」

「あー、うん。そのつもり。先に用事済ませて来るから、後で声かけるよ」

「そうかい。で、その用事ってのは?」


 たっぷり一一時まで寝てシャワーを浴びた挙句、彩雲は玻那華の私服を物色した。幼馴染のタンスの中身はブラウスから靴下までばっちり場所を把握している。普段は動きやすさ重視の彩雲にとって玻那華の少女趣味がかったおしゃれ着は気恥ずかしさを感じるものの、憧れがあるのも事実。服を借りるのをお泊まりした時の密かな楽しみにしている。この頃背格好にはっきりした差が出てきて着こなしが難しくなっているので、こんなことができるのも今の内だけなのかも知れない。

 服を決めて自転車で出発した彩雲はロングスカートを気遣ってゆったり漕いだ。一〇分足らずで鳴濤中学校に着いたものの、目的地はそこではない。学校の敷地を迂回するかたちで裏の山道へ入っていく。急勾配の坂をしばらく登ると、その内に舗装が途切れた。自転車を置いて更に進む。

「へえ……こんなとこに神社なんかあったんだ……」

 雑木の立ち並ぶ通り沿いにあったのは日吉神社だった。塗装されていない木製の鳥居が珍しいが、目的はここではない。更に先へ。人の往来がないことが、道の手入れ具合で分かる。ほとんど藪を掻き分けるようにして進むとやがて行き止まりになった。その場所には見覚えがあった。

「ここだ……」

 今立っているのが昨日夢で見た場所で間違いない。しかし何ら発見できるものはなかった。携帯電話を取り出してマップを開く。GPSが示した現在地は「津辺城跡」だった。彩雲は驚かなかった。

 フドウはきっと、昔の知り合いに会いたかったのだろう。自分が護りたかった人たちに……


次回予告

 揺るぐとも、よもや抜けじの要石。茨城と千葉との県境で、揺らいだ鹿島の余波が吹き荒れる。

 次回!木造ロボ フドウ「開戦前夜」

 今こそ、全ての諸金剛に礼拝せよ


幕間まくあい

 神騎フドウ(不動明王)

  建造年:1604年

  活動期間:1604年~1703年、2012年~

  全高:3.8m

  装備:三鈷剣(全長2.1m・内、刃渡り1.5m) 羂索(全長6m)


  1603年12月に発生した大規模な怪異の襲撃を機に建造された仏教系神騎。熊野三山の技術を密教の僧侶が応用して造った。

  神騎の建造が始められたのは一説には奈良時代頃のこととされており、江戸時代に造られた本騎は神騎の中でもかなり新しい部類に入る。このため用いられている木材の質・木工技術共に他の神騎に劣るが、注目すべきはその内部構造である。他に類を見ないほど精緻に作り込まれている話は後のエピソードで明かされるだろう。

 装備している剣は全長2mを超えており規格外に大きいものの、全高(地面から頭までの高さ)3.8m、ショルダー部の大きな装甲を加えると更に大きくなるフドウが持つと小振りなナイフ程度の大きさしかない。この刀の大きさは鍛造された江戸時代当時の冶金技術の限界を示しており、これよりも遥か昔に造られた鹿島神宮の布都御魂剣の威容には遠く及ばない。

 明治元年の神仏分離令と、それによる廃仏毀釈運動によって仏像が破壊され、寺が廃される中で全国に点在していた仏教系神騎もまたその数を大きく減らすことになった。本騎が現代まで無事に現存できたのはひとえに江戸時代の内に役目を終えて早々と世間に忘れ去られてしまったことが功を奏した結果と言えるだろう。

次回は7月9日(金)更新です

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