告白
「わたしは・・・メイとミルロの言葉を信じてみたい。もう1度やり直せるチャンスがあるのなら、復讐という形ではなく新たな恋をしてやり直したいわ」
カトレアはガーゴイルの目を見て、決意に満ちた眼差しで答えた。
「ふふっそれが君の答えなんだね。」
ガーゴイルはそう言うと、体が黒く光輝く。
すると翼の生えたトカゲのような姿から、完全な黒い竜の姿に変化した。
先程、カトレアが変化した黒龍の姿に酷似している。
「僕が本当の魔王だよ。カトレアは僕の力を借り受けていたにすぎない」
その言葉に、わたしとメイ様は緊張した面持ちでガーゴイルを見つめる。
そんなわたしとメイ様の様子に、ガーゴイルは凶悪な姿には似合わない笑顔を見せると、安心するように言葉をかけた。
「勇者メイよ。僕は君と争うつもりはないよ。僕の目的は世界の破壊ではない。
契約者であるカトレアの幸せが全てなんだよ。」
ガーゴイルはそう言うと、さらに言葉を続けた。
「僕は1000年前は、とある国の貴族だったんだ。
そして僕はとある女性に恋をした。カトレア、君のご先祖様にね。」
「え?」
突然の言葉にカトレアは驚いて声を失う。
「でも僕が愛した人は既に婚約者がいた。でも僕は諦めきれなかった。そして闇の魔力に身を染めて力づくでその子を自分の物にしようとしたんだ。
でも僕は失敗した。闇の力に耐えられずに僕は正気を失い魔王になったんだ。
そして先代の勇者に倒された。勇者メイ、君の御先祖様によってね。」
「ご先祖さま?ウィシュタリ王国の王族がですか?」
メイ様はガーゴイルの言葉を受けて疑問の声を投げかけた。その言葉にガーゴイルは頷きで返す。
「僕はそれから精霊として転生したんだ。恋が実らないならせめて愛した人の家族を守ろうとね。そして僕はカトレアの契約精霊になった。
かつて魔王だった力をも呼び覚まし、カトレアの幸せの為に奮闘したんだ」
ガーゴイルはそう言うと、悲しそうにカトレアを見つめる。
「でも君は失敗した。せめてもの悪あがきとして、僕は時間を戻したんだ。君にやり直すチャンスをあげようとね。
だが、それでも僕は満足出来なかった。
念には念をということで、未来が繰り返されないように、この物語に異分子を紛れ込ませたんだ。それがミルロ君だよ」
そう言うと、ガーゴイルは今度はわたしを見る。
「わたしの転生は貴方が行ったんですか?」
わたしはガーゴイルに質問した。
「その通りだ。君をこの世界に招き入れたのは僕だよ。若くして病気で命を落とし、まだ生きたいという意志を持つ君の魂をこの世界に招き入れたんだ。
君は僕の予想とは逆に、まさかカトレアに牙を向くとは思わなかったけどね」
そう言うと、ガーゴイルは苦笑いを浮かべる。
わたしがこの世界に転生できたのは、目の前の魔王のおかげであった。
その事実を知り、わたしは思わずお礼の言葉を伝えた。
「わたしは・・・。この世界に来れてよかったです。メイ様そしてかけがえのない人達に出会うことができました。わたしをこの世界に連れてきて頂いてありがとうございます。」
「そうか。喜んでくれて嬉しいよ。では僕の最後のお願いだ。ミルロ、そしてメイ。
これからは、カトレアの友人として彼女を見守ってくれないかい?
現実世界は厳しい、これからも失敗すること傷つくこともあるだろう。その度に友として彼女を支えて欲しいんだ。」
「もちろんです!カトレアはもうわたし達の友人です」
ガーゴイルの言葉に、わたしとメイ様は同時に迷うことなく答えた。
「ありがとう。僕はこれからも精霊としてカトレアのことを見守っていくよ。だけど魔王としての力はさっきの戦いで使い果たしたしまったからね。
もう時間を戻すこともできないし、魔王の力も使えない」
「もちろんです。わたしはこんなに素晴らしい友人達に出会えたのです。やり直すなんてもったいないです。ガーゴイル今までありがとう、そしてこれからも宜しくお願いしますね」
カトレアは、涙を流してお礼を言った。
すると辺りが眩い光に包まれる。
わたし達は、あまりの光に目をつぶった。
◇◇◇◇
目を開けると、わたし達は元の魔王城に戻ってきた。
ただ、魔王城を包み込んでいた闇のオーラは完全に消失し先の戦いが嘘の様に静寂に包まれている。
下を見ると、元の姿に戻ったカトレアが幸せそうに眠りについていた。
「ミルロ、もどってきたのですね」
隣に立つメイ様は、充実した顔でわたしを見る。
「はい、メイ様。この世界は救われました。わたし達の勝利です」
そう言うと、わたしとメイ様は抱き合った。
メイ様の柔らかい感触といい匂いがわたしを包みこむ。
どれくらい抱き合っていただろう。
すると、メイ様は意を決したようにわたしの顔を見ると、恥ずかしそうに告白した。
「ミルロ、わたしは貴女のことが好きです。
貴女がいたからわたしは変わることができた。
こうして勇者として選ばれ、使命を果たすことができました。
これからは従者としてではなく、親友いえ生涯のパートナーとしてわたしと一緒に人生を歩んでくれませんか?」
わたしはメイ様の言葉に、大きく胸が揺さぶられる。
そして目に涙が溢れた。
嬉しかった、わたしもメイ様のことが大好きだ。
共に人生を歩んでいきたい。そう思っている。
わたしは恋愛に臆病だ。
しかし、メイ様は勇気を振り絞り、こうしてわたしに告白してくれた。
告白は勇気がいる大切な儀式だ。
そんな儀式を同性という障害を乗り越え、こうして告白してくれたメイ様。
メイ様は、わたしだけの本当の勇者だ。
わたしとメイ様は同性同士のカップルということで、この世界に多くの波紋を呼ぶだろう。
だけど、わたしは諦めない。
わたしは好き勝手に生きていくと決めたのだ。
これはわたしの物語であり、わたしが主人公なのだから。ミルロしての人生は1度きりなのだから・・・。
悔いのないように生きていきたい。
わたしの言葉は既に決まっていた。
「メイ様、わたしもメイ様のことが大好きです。これからも一緒に居たい。共に人生を一緒に歩んでいきたいです。宜しくお願いします。」
そう言うと、わたしとメイ様は同時に目をつぶる。
そして、初めて唇を合わせキスをするのであった。
あー幸せだわ。転生して本当によかった。
生きていて本当によかった。
メイ様の唇はやわらかく、そして甘い果実のようなとろけるような味わいであった。
前世を含めてのわたしのファーストキス。
わたし達は唇を合わせると、暫くキスを堪能するのであった。
どれくらいキスをしていただろう。
すると、恥ずかしそうに声が響き渡る。
「ちょっといつまで、こうしてキスを交わしているのよ。長いのよ!」
「カッカトレア!」
二人の世界を堪能していた、わたしとメイ様は慌ててキスを中断し正気に戻る。
すると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたカトレアが顔を真っ赤にして、わたし達を睨んでいた。
「いつから起きていたの?」
わたし達は恐る恐るカトレアに尋ねる。
「あんた達の告白からよ。」
「え?それって全部なのでは?」
わたし達はそう言うと、顔を真っ赤にして俯いた。
そんな言葉にカトレアはニヤリと笑みを浮かべると、わたしとメイ様の間に入り、肩を組んだ。
「おめでとう!貴女達の関係には驚いたけど、元気が出たわ。わたしも頑張らないと。わたしも素敵なパートナーを見つけないとね」
カトレアがそう言うと、わたし達は魔王城を後にした。
カトレアの横顔は、魔王だったのが嘘のように晴れ晴れとしていた。




