最終決戦②
「ミルロ、まだ立てるわよね。行くわよ!」
メイ様はカトレアの強さに怯むことなく、わたしに声をかけた。
メイ様の顔は青ざめていた。
しかしその目はまだ死んでおらず、強い意思を秘めている。
メイ様のその姿にわたしの勇気も奮い立つ。
そうだ、絶望している暇はない。
わたしはこの世界を守りたい。
その為には、魔王を倒すしかないのだ。
絶対に負けるわけにはいかない。
わたしは、気持ちを奮い立たせ立ち上がった。
そして考える。
相手の闇のオーラは強力で、弓は通用しない。
接近戦を仕掛けるしかない。
わたしはそう判断すると、魔法で氷の剣を作り出した。
そしてカトレアに向けて構える。
「いくわよ!」
メイ様の掛け声と共に、わたしとメイ様は同時に駆けた。
そして左右に分かれて、攻撃を仕掛ける。
「無駄よ!」
カトレアは先程、わたし達を跳ね飛ばした闇のオーラを再び衝撃波として周囲に放った。
闇のオーラはカトレアを中心に円を描き、地面を破壊しながらわたし達へと迫る。
「覇王斬!」
「ヒーリング・ソード!」
メイ様とわたしは、その闇のオーラを同時に剣で切りつけた。
聖剣と癒しの力を纏った氷の剣は、闇のオーラを切り裂く。
衝撃波を抜けて、わたし達はカトレアに接近する。
「忌々しい虫どもめ。」
カトレアは吐き捨てるようにそう言うと、再び息を吸い込みブレス攻撃をしかけようとする。
「アイスウォール!」
わたしはそれを見て、再び氷の盾を生み出した。
しかし今度は攻撃を受け止める為ではない、攻撃を邪魔する為だ。
氷の盾をカトレアの頭の上に出現させると、それを頭の上に落とした。
ブレスを噴き出そうとしたカトレアは、突然氷の塊が落ちてきたことに不意をつかれる。
頭に氷の塊をうけて、首を下に下げてしまった。
闇の炎は地面に向かって吐かれ、自分の足元を溶かす。
溶かされた地面は龍と化したカトレアの重さに耐えられず、足が床を踏み抜き地面にめりこんだ。
その隙を突き、わたしとメイ様はカトレアの懐に飛び込んだ。
「メイ様!」
「ミルロ!」
わたし達は中央で合流した。
そしてわたしは氷の剣を放りなげると、メイ様が持つ聖剣を握る。
一方、カトレアも怯まない。
ギロリとわたしとメイ様を睨み付けると、全身を振るわせて闇の炎を吐き出した。
今までとは違う全力の闇の炎。
周囲を焦がしながら、わたし達の元へと迫った。
それに対して、わたし達は2人で聖剣を握り、カトレアに向けて飛び出した。
炎に向けてわたしとメイ様は、剣を突き立てる。
メイ様の雷の魔法
わたしの氷の魔法
が交差する。
わたしは一緒に剣を握るメイ様を見た。
メイ様は本当に成長された。
そして勇者にまで覚醒して、こうして強大な魔王にまで立ち向かっている。
その事実にわたしは強く胸を撃たれると共に、これからも一緒に居たいと強く願う。
わたしはメイ様を愛している。
その胸に秘める思いを、この一撃に込めた。
「マナ・アース!!」
そして、わたし達は同時に声をあげ、闇の炎に突撃した。
魂をも溶かす闇の炎。
その炎の勢いは凄まじくジリジリとわたし達がもつ聖剣を溶かす。
しかし、わたしとメイ様は全力で魔力を剣に込めて踏みとどまる。
闇の炎と拮抗して、空中でジリジリと押し合いを始めた。
「ミルロ、わたしの魔力も使って!頑張るのよ」
「メイもう少しだよ!僕の魔力も使うんだ。」
すると、ユキメとライラが現れる。
そして2体の精霊もわたしとメイ様の手に重ねて、聖剣を握った。
精霊たちの力を受けて、聖剣が強く光輝く。
2人と2体の精霊の力を受けて、聖剣はさらに強い光を帯びて光輝いた。
そしてジリジリと闇の炎を押し返す。
「バ・バカな!今回は油断をしていない。全力だぞ!どうしてわたしの力が押される」
カトレアは自分の力が押される事実に驚愕の声をあげる。
それに対して、わたしとメイ様は同時に応えた。
「カトレア、貴女はたった1人だわ。でもわたし達は1人じゃない。わたし達の愛は誰にも止められない!!いっけー。」
聖剣は強く光輝き、闇の炎を切り裂いた。
さらにその勢いを衰えずに、カトレアの元へと迫る。
そして遂に、わたし達が持つ聖剣はカトレアの体を刺し貫いた。
剣を受けたカトレアは断末魔をあげて、大きな叫び声をあげる。
しかし、わたしとメイ様はこれで終わらせるつもりはなかった。
わたしとメイ様は聖剣を手放し、カトレアの体に手を触れる。
そしてゼノンに対して行ったように、わたしとメイ様は魔力と共に自分の意識をカトレアに流し込んだ。
こうして、わたしとメイ様は魔力の流れに乗りカトレアの意識に入っていくのであった。
◇◇◇◇
「ちょっと何でわたしの中に入ってくるのよ?」
カトレアは、カトレアの心の中に入ったわたしとメイ様を苛立ちを浮かべて睨みつけた。
それに対して、メイ様は怯まずに言葉をかける。
「カトレア様、突然の訪問をお許しください。ですが1度ゆっくりと貴女と話をしたかったのです。」
「ふん、どうせ貴女もわたしを断罪しに来たんでしょ?悪いのはわたし、そんなことはわかっているわ。もううんざりよ」
カトレアはメイ様の言葉に対して、苛立ちげに一蹴する。
しかし、突然メイ様はカトレアの手を取ると謝罪した。
「カトレア様、ミルロから未来のこと全て聞きました。お兄様のことですが、本当にごめんなさい。婚約者という貴女という方がいらっしゃるのに、あんなことをされるなんて。昔からお兄様って本当にデリカシーがないんですよね」
そう言うと、メイ様は鼻息まじりに怒りを見せた。
握りあう二人の手にわたしも手を重ねて言葉を続ける。
「カトレア。ごめんなさい。
わたしは貴女が学園そして王国から追放されるのは当然だと思っていました。
しかし、メイ様そしてメイ様の侍女のミアさんに出会って考え方が変わりました。
貴女は恋することに一生懸命なだけでした。
わたしはそんな貴女に罪を一身に背負わせるのは酷だと思います。」
「へ?」
カトレアは突然のわたしとメイ様の言葉に唖然として言葉を失う。
「まったく。お兄様は昔からそうなんです。
直情的でデリカシーがない。ほんと自分勝手なんですよ。
政略結婚といえど婚約は婚約です。
それなのに、アリアに浮気して、申し訳ないとおもわないんですかね?
わたし、ミルロの話を聞いたら、なんだかお兄様には幻滅してしまいましたわ」
「ふふっ。わかります。
メイ様のことも、もう少し気遣ってほしいですよね。
メイ様が序列1位をとったと知るや否や、剣を挑んだ挙句に返り討ち。
あげくの果てには変にライバル意識を燃やす。見ていて滑稽でしたわ」
「ちょっちょっと待って!貴女達ゼノンの味方なのよね?
なんでそんな悪口を言うの?彼を助けたんでしょ?」
わたしとメイ様がゼノンの悪口に花を咲かせていると、カトレアは目を白黒させて話に入ってきた。
その顔はなぜそんことを言うんだ?という困惑に満ちていた。
「あら?カトレア様。お兄様は大切な血を分けた兄妹ですよ。
だから、お救いするのは当然です。
でも、それとこれとは話は別です。
わたしお兄様には腹を立てているんですよ。
だってカトレア様はこんなに可愛いのに、お兄様は相手にしなかったんですよね?
さらに浮気までして、そんなのは女の敵ではないですか?」
メイ様はそう言うと、カトレアに笑顔を見せた。
カトレアはわたし達の言葉に唖然とする。
そして突然涙を流し泣き出した。
わたしとメイ様は、そんなカトレアの姿を優しく見守った。
暫くするとカトレアは泣き止んだ。
そして言葉を絞り出す。
「わたしはアリアを虐めすぎたわ。そんなのはわかっている。それでもわたしはゼノンを愛していたの。
悔しかったわ。せっかく婚約者になったのに彼はわたしを見向きもしないのよ。
一生懸命努力したのに、そんなのあんまりだわ。
アリアが憎いの、そしてわたしをふった挙句に断罪したゼノンが憎いの。」
「カトレア様、そんな男こっちから願い下げですよ。
カトレア様はお美しいですし、まだまだチャンスはあります。
魔王として世界を壊すよりも、これからやり直して兄を見返してやりませんか?」
「ええ、わたしもメイ様の意見に賛成です。
幸いにもここは美女美男揃いの素晴らしい世界ではないですか?
それにカトレア様はまだ何の罪も犯していない。
魔王として覚醒しましたが、アリアもゼノンも無事で全て未遂です。
せっかく時間も戻りましたし、これからやりなおしましょうよ?」
「ねえ?カトレアどうするの?」
わたしとメイ様がカトレアを説得していると、カトレアの傍に黒い光が漏れると精霊が現れた。
彼女の精霊の『ガーゴイル』だ。
ガーゴイルは、カトレアを見つめると小首を傾げるのであった。




