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最終決戦①

青龍は魔王城の上空に到達した。

魔王城は空中に浮かび、禍々しい黒いオーラを放出している。


「あれが魔王城ですか?」

青龍に跨るメイ様は、禍々しいお城を見つめながらわたしに尋ねた。


「はい、あれが魔王城です。そして魔王はあそこに居ます。」

メイ様の言葉にわたしは緊張した面持ちで頷いた。


「ううっひっく。とりえあずあそこに降ろせばいいのだな?」

わたし達の会話を聞いていた青龍は、ふらふらと魔王城に降りたった。

お酒に酔ってフラフラで心配だったが、なんとか最後まで飛ぶことができたようだ。


そして青龍は魔王城の前で着陸すると、バタッと倒れ込んでイビキをかいて眠りについた。

完全に酔いつぶれしまったようだ。


わたしとメイ様はそんな青龍の姿を見て呆れた顔を浮かべていたが、すぐに思考を切り替えた。

顔を見合わせると、メイ様とわたしはゆっくりと頷きあった。

そしてわたしとメイ様は、魔王城の中へと入っていくのであった。


◇◇◇◇

魔王城はゲームと同じく1本道であった。

道中は、道を遮る魔物やボス戦などは何もない。それはゲームでも同じだった。

特に道を邪魔するものはなく、わたし達は奥にある玉座の間へ到達した。


玉座の間はまるで野球場のようにだだっ広かった。

そしてその奥の玉座に、カトレアが腰かける。


「ようこそ魔王城へ、ミルロ、そして勇者メイよ。まさか、ゼノンを倒すとは思わなかったぞ。」

カトレアは玉座の間へ入ったわたし達に気づくと、声をあげる。

地獄の底から響くような低く禍々しい声であった。


「カトレア様、お兄様とアリアは無事です。今ならまだ間に合います、もう復讐はおやめください。」

メイ様はそんなカトレアに対して悲痛な声で訴えた。


しかしカトレアは二人が生きていることを聞くと、忌々しい顔をして怒りを浮かべる。

「なに?あいつらはまだ生きていたのか。忌々しい、お前達を殺したら後で始末しよう」


カトレアはそう言うと、玉座から立ち上がった。

そして大きく息を吸い込んで、大声で叫んだ。


「闇の力の根源よ!わが魔王の力を解放せよ。愚かな勇者を滅ぼす為に、我に力を与えたまえ!」


魔王城は闇の力の根源が眠っている。

それはかつて古の魔王が封印した力であった。

ゲームでもそうだったが、魔王が最終決戦に魔王城を選んだのも、自分自身の力を解放する為である。


カトレアの声を受けて魔王城のあちらこちらから闇の瘴気が現れると、彼女を包み込んだ。


変わっていく・・・。

闇の瘴気に包まれたカトレアの姿が。


そして暫くして瘴気が晴れると、そこには黒い竜の姿に変えた魔王カトレアが立っていた。

全長は30メートル近くあり、体には闇のオーラと共に強靭な龍の鱗に包まれる。

漆黒の闇のオーラを纏った禍々しい黒い龍であり、それが魔王の正体だ。


「我は魔龍王カトレア。勇者メイ、そしてミルロよ。我に逆らった罪、地獄に落ちて後悔するがよい」


「ミルロ、カトレア様を倒して復讐を止めます!行きますよ」

メイ様はカトレアの姿を見て、ひるむことなく臨戦体制をとった。

そして言葉と共に、腰に差してあった聖剣ユグドラシルを抜いて構える。


わたしもその言葉に頷くと、背中に担いでいた青龍の弓を手に持ち構えた。


暫くわたし達とカトレアは睨み合った。


戦いは、カトレアから仕掛けた。

カトレアは大きな口を開けると、強力な闇の炎を吐き出した。


闇の炎は魂をも消滅させる地獄の炎だ。

あまりの高温にジリジリと玉座の間の壁の表面がチーズのようにとろけた。

激しい熱波と共にわたし達へと迫る。


わたしとメイ様は、右に飛びその炎を躱す。

それた炎はわたし達がいた場所を焼き尽くし、跡形もなく消し去った。

その強烈な威力にわたしは怯むことなく攻撃をしかける。


「真ブリザード・アロー!」

そして声と共に無数の氷の矢を放った。

矢1つ1つに氷と癒しのエンチャントを施した、わたしの必殺の技。

癒しの力で闇のオーラを貫き、氷の魔力は触れた相手を凍りつかせる。


しかしカトレアはそんなわたしの技を見て、嘲笑った。

「くだらん技だ。」

カトレアはそう言うと、体中に魔力を籠めると闇のオーラを広げて一気に放出した。

範囲を広げた闇のオーラは、わたしの氷の矢を全て弾き飛ばした。

さらに闇のオーラは勢いが衰えることなくわたし達に迫る。

空中で身動きが取れなかったわたしとメイ様は、闇のオーラの衝撃に弾き飛ばされ壁に激突した。

激しい衝撃により、わたしとメイ様の顔が苦痛に歪む。


さらにカトレアは攻撃の手を休めない。


再び大きく息を吸い込むと、闇の炎をわたし達に向けて吐き出した。

壁に激突したことにより、わたしとメイ様の体は壁にめりこんで動くことができない。

タイミング的に躱すことは不可能だ。


「ツイン・アイスウォール」

躱せないと判断すると、わたしは慌てて防御魔法を唱えた。

闇の炎からわたし達を遮るように、2枚の氷の盾を並べて炎を受け止める。


しかし氷の盾は闇の炎の高温に耐えられなかった。

闇の炎を受け止めた氷の盾は一瞬で溶けて霧散する。

わたしは更に氷の盾を生み出す。

1枚、2枚、3枚、4枚


そして何十枚の氷の盾で闇の炎を受け止める。

しかし、それでもなお炎の勢いは止まらない。


時間稼ぎがやっとであった。


その間にわたしとメイ様は、壁から脱出すると迫り来る炎を躱した。

闇の炎はわたし達がいた場所を軽々と溶かし、魔王城を破壊する。

元いた場所は、ドロドロのバターのようにとけて蒸発した。


その強力な威力に、わたしとメイ様の顔は青ざめる。


アイスウォールはわたしの最強の防御呪文だ。

そして消費魔力もそこそこ多い。

そんな魔法を何十枚も発動して、数秒の時間を稼ぐのがやっとであった。

防御魔法であの闇の炎を受け止めるのは現実的ではない。

もしあの攻撃を受けてしまえば、回復魔法をかける暇なく蒸発させられてしまうであろう。

絶対に躱さなくてはいけない。


「どうした?この程度か?」

カトレアは青ざめるわたし達の顔をあざ笑い、余裕の表情を見せる。


なんて強さなの・・・。

どうやってわたしは、あの強力な魔王をゲームで倒せたのかしら?

わたしは必死に自分の記憶を手繰り寄せる。


あっ・・・。

そしてわたしは思い出した。

しかし、その記憶はわたしに大きな絶望を与える。


思えば、最後のカトレア戦はイベント戦であった。

最初の数ターン攻撃を耐えきることができれば、後はイベントが始まりそのまま終了してエンディングとなる。


その時のカトレアは、まだゼノンのことを心の中で愛していた。

ゲームでも今のわたし達と同じように、ゼノン達はカトレアの強さに圧倒される。

しかしカトレアはゼノンへの思いが捨てきれずに、攻撃を躊躇するのだ。

そしてその隙をつかれ、ゼノンによって喉元に聖剣を突き立てられて倒される。


わたしはゲームのラストバトルは、手術前であった為、駆け足でやっていた。

その為、最終バトルのことをすっかり忘れていたのだ。


しかしその事実はわたしに大きな絶望を与える。


今の勇者はゼノンではなくメイ様だ。

そんなイベントは、決して起こりえない。

それにカトレアは未来の記憶を持っている。

その為、勇者がゼノンであったとしても、復讐に燃えるカトレアは同じ轍を踏むことはないであろう。


カトレアが攻撃を躊躇することはあり得ない。

わたしとメイ様は自力でこの怪物を倒すしかないのだ。


その事実にわたしは呆然とするのであった。

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