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勇者の試練

ここは学園長室。

学園長室に来るのは、これで3回目だ。

前世の麗華の時は、校長室には入ったことがない。

それが当たり前で、普通に学園生活を送っていれば、まず呼び出されることはない。

それが入学してから1ヶ月ちょっとで3回もだ。

その事実にわたしの口からため息が漏れた。


わたしの隣にはメイ様、そしてその隣には何故かアーサーお兄様が腰掛けている。

そして向かい側にはいつも通りのメンバーである学園長とイングランド先生、そしてゲルマン先生が座る。


「それで学園長、わたし達に用事があるとは?」

全員の着席を確認すると、メイ様は目の前に座る学園長に尋ねた。


「ああ、メイ君達を呼んだのは2つ用事があっての。まずはゼノン君達のことについて話そうか。アーサー君、説明してくれるかな?」


ゼノン?

わたしはその言葉を聞いて訝しむ。

何かトラブルでもあったのだろうか?

わたし達は、アーサーお兄様に視線を集中させる。


それから、学園長の言葉を受けたアーサーお兄様は、話を始めた。

話をするお兄様の顔色は悪く、どこかやつれているような感じを受けた。


「実は3日前から、ゼノン様、アリア、そしてカトレアが行方不明なのです。」


「まさか!お兄様達が?」

思いがけないアーサーお兄様の言葉にメイ様は驚きの声をあげる。


「はい、ゼノン様は剣術の稽古に行ったきり戻ってきてないのです。それからゼノン様の行方を仲間のカトレアとアリアに尋ねようとしたのですが、その2人とも連絡が取れなくなっており・・・」

お兄様はそう言うと悔しそうに拳を握りしめ、唇をぎゅっと噛んだ。


お兄様・・・。


わたしはお兄様のそんな姿を見つめる。

その姿を見るだけで、わたしの心は張り裂けそうだった。

お兄様はゼノンの護衛騎士だ。

主であるゼノンを守れなかった事実が悔しいのであろう。

わたしもメイ様が同じように姿を消してしまえば、気が気で無いはずだ。


わたしは思わずお兄様の拳の上に、自分の手を重ねて言葉をかけた。

「お兄様、きっとゼノン様は無事ですよ。わたしとメイ様も協力します。一緒にゼノン様達を探しましょう」

その言葉に、隣に座るメイ様もニッコリと笑いかけて頷く。


「メイ様、ミルロありがとう」

お兄様はそう言うと、わたしとメイ様に頭を下げた。


「実は、ゼノン君達のことについてわかったことがある。イングランド先生おねがいできるかな?」

すると学園長がわたし達に声をかける。

そしてイングランド先生に話をするように、促した。

何か情報を得られるかもしれない、わたし達は今度はイングランド先生を注視する。


「実はゼノン君が行方知れずになった演習場そして、アリアさんとカトレアさんの寮の近くで闇の力の痕跡を発見しました。」


「闇の力ですか?それって闇魔法のことでしょうか?」

その言葉に対して、アーサーお兄様は疑問をもった顔で尋ねた。


「闇の力というのは、古の魔王の力のことじゃよ。闇の魔法とは似て否なるものじゃ。

そしてお主たちが戦った魔人バルデスも闇の力を使っておる。」

お兄様の言葉に対して、学園長が言葉を返した。


「学園長のおっしゃるとおりです。よって今回ゼノン君達をさらった犯人は、バルデスと同じような魔人もくしは魔王本人ではないかと私達は推測しております。」


「そんな、それならお兄様たちはもう・・・」

イングランド先生の言葉に、メイ様は悲痛な声をあげて俯いた。


「メイ様、大丈夫ですよ。まだそうなったという保障はありません。ゼノン様達はきっと生きていらっしゃいますよ」

わたしはメイ様を元気づけようと、メイ様を抱き寄せた。

そしてやさしく声をかける。


「ミルロ・・・」

メイ様もわたしの名前を呟くとぎゅっとわたしを抱きしめる。


暫くわたしとメイ様は、抱き合った。



「ミルロ大丈夫よ。だいぶん落ち着いたわ。ありがとう」

それからメイ様は、ゆっくりと顔をあげると笑顔でわたしにお礼の言葉を伝えた。

それに対して、わたしもにっこりと微笑む。


しかし、その後の周りの視線が痛かった。

学園長やアーサーお兄様を始め、みんな顔を真っ赤にしてわたしとメイ様を見つめる。

部屋中が沈黙に包まれた。

わたしとメイ様は周りの視線に居たたまれなくなり、ただ俯くことしかできなかった。



それから、学園長が咳ばらいをすると何もなかったかのように話の続きを始めた。


「こほん、ゼノン君達は、我々が責任をもって調査する。ところでメイ君。お主を今日呼んだのは他の目的があってのことじゃ」


「わたしにですか?」

俯いていたメイ様は、思いがけない学園長の言葉に顔をあげる。


「お主は勇者候補として、勇者の試練を受けてもらいたい。魔人バルデスの出現そしてゼノン君達の失踪に闇の力が係わっている今、一刻を争う。」


わたしはその言葉を受けて、ゲームの知識を思い返した。

実はこの魔法学園には、聖剣が眠っている。

ゲームでは、ゼノンが魔法学園の試練をクリアして聖剣を呼び覚まし勇者へと覚醒するのだ。


そしてその試練を今、ゼノンではなくメイ様が受けようとしている。


わたしは、この前の魔人バルデスとの戦いそしてゼノンとの模擬戦で確信している。

この世界の勇者はゼノンではなく、メイ様だ。

メイ様の力は既に主人公であるゼノンを上回っている。

さらにメイ様は、勇者の証と言える雷属性の魔力と、勇者の血筋であるウィシュタリア王家の血を引く。

メイ様が勇者になれる資格は十分にあるのだ。


メイ様は暫く考えた後、決意を込めた顔で学園長の言葉に応えた。

「承知しました。わたしに勇者の資格があるかどうかはわかりませんが、勇者の試練を受けさせて頂きます。」


「ふむ。よく決断した。そして試練は学園内にある地下のダンジョンをクリアして、ある物を取ってくることじゃ。

時間がない。早速チャレンジしよう、用意はいいかな?」


その言葉にメイ様はゆっくりと頷いた。

こうして、メイ様は勇者になる為に、試練にチャレンジすることになるのであった。

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