ダンジョン実習②
C級ダンジョンの階層は10F。
そして、出現するモンスターはC級モンスター中心だ。
C級モンスターの強さは、ちょうど武装した成人男性数人がかりで倒せるほどの強さ。
普通の人間では脅威に感じる強さであるが、魔法が使える者にとってはどうってことない。
わたし達は、まだ子どもとはいえ、魔法が使える。
魔法が使えるだけで、最低でも成人男性10数人に匹敵する力があるのだ。
その為、特に油断さえしなければ、C級モンスターは敵ではない。
わたし達のパーティーは順調に、ダンジョンを進んでいた。
「アイスバインド!」
わたしは地面に手をつき魔法を唱えた。
魔力が地面を伝い、目の前にいる人型の魔物達の足を凍りつかせる。
魔物達は足が氷付きジタバタともがくものの、その場から動くことができない。
あの魔物はゴブリン。
低級の魔物で、群れをなす魔物だ。
身長は130センチくらい、緑色の体で汚らしい容姿。
目の前には10匹のゴブリンが動きを止めてジタバタともがいている。
「ナイス!!」
ゲンキは剣を持ち距離を詰めると、次々とゴブリンの首を跳ねる。
「ファイヤーボール」
さらに後ろからライムが炎の魔法を唱えて、ゴブリン達を焼き払う。
わたし達3人は、一瞬でゴブリン達を全滅させた。
ゲンキさんは剣に自信があると言っていたが、なかなかの腕のようだ。
力も強く固いゴブリンの首も、骨ごと切断する力がある。
ただ、そこまで魔力は多くないようで肉体強化の魔法しか使用できない。
一方、ライムさんは魔法攻撃が得意で幅広い攻撃魔法を覚えていた。
魔力もそこそこ高い。
だが、魔法の発動に時間がかかるのが少し難点だ。
だが、2人ともかなりの実力者だ。
わたし達は3人パーティーなので、他の4人チームとバランスを取るために比較的強い人が集まっているのだろう。
「はっはっは、流石序列2位だ。ミルロのおかげで、楽勝だな」
ゴブリン達を制圧したゲンキは上機嫌に声をあげた。
そんなゲンキに対して、ライムは不満そうな顔をして文句は言う。
「もう、ゲンキさん、全部美味しいところを持っていきすぎですよ」
道中の敵は、殆どゲンキが率先して止めを刺していた。
ライムも何匹か倒しているものの、ゲンキの数には及ばない。
だが、それには理由がある。
ライムさんの攻撃方法は魔法がメインだ。
魔法は魔力を使うので、打てる数に限りがある。
きっとゲンキは、魔法を節約しているのだろう。
「ライムさんそんなことないですよ。もうすぐボスなのでゲンキさんは、皆の魔力を温存してくれているのですよ。そうですよね?ゲンキさん?」
そんなわたしの言葉に、ゲンキさんはキョトンとした顔をする。
だがすぐに表情を戻すと、同意の言葉を返した。
「ああ、ミルロの言う通りだ。もうすぐボス戦、とっとと倒してしまおう」
わたし達が今いる場所は9F。
そして先程のゴブリン達は、下の階層に続く階段を守っていた。
その先には、10Fに続く階段が続いている。
ダンジョンに入って約1時間。
C級ダンジョンの攻略は2時間以上はかかるため、わたし達の攻略ペースはかなり早い。
そして、ダンジョンの最後のフロアには、ボスモンスターがいる。
ボスモンスターは、ダンジョン内に出現する魔物の1ランク上のモンスターが現れる。
その為、Bランクの魔物が相手だ。
階段を降りてすぐに、大きな扉が道を塞いでいた。
この扉を開けるといよいよボス戦だ。
扉の前に立ったゲンキは後ろを振り向き、わたし達に声をかけた。
「さて、この門をあければいよいよボス戦だ。2人とも用意はいいか?」
「はい、問題ありません。」
「がんばります。」
わたしとライムはゲンキの目を見て、ゆっくりと頷いた。
それを見た、ゲンキも頷くと目の前の扉の取手に手をかけて扉を開いた。
大きな扉はなんの抵抗もなく、ギギギと音をたててゆっくりと開くのであった。
扉の先は、だだっ広い部屋だった。
ただわたし達が部屋に入ると、さっと多くの視線がわたし達の方を向く。
「どうやら、ここのボスはゴブリン達のようだな」
前に立つゲンキは、緊張した面持ちで呟いた。
「いえ、これはゴブリンキングですね。それに手下も沢山いるみたいです。」
その言葉に対して、ライムがゴブリンキングと訂正する。
ゴブリンキング。
それはゴブリンの王で強さはBランクに属する。
小さなゴブリンに対して、ゴブリンキングは体が大きく身長は170センチを越える。
力が強い上に魔法も使える厄介な相手だ。
そして、眷族として多くのゴブリンを使役する。
目の前には、ゴブリンキング1匹と数10匹のゴブリンがわたし達を睨みつけていた。
「先程と同じようにいきますね」
わたしは2人に声をかけた。
「わかった!」
2人はこくりと頷き臨戦態勢を取る。
ゲンキは剣を構え、ライムは杖を構えた。
「グギャアああ」
同時にゴブリンキングは大きな声をあげる。
その声を受けて、ゴブリン達が動き出した。
手には棍棒を持ち、私たちに一斉に襲いかかる。
「アイスバインド!」
それに対して、わたしは地面に手をつき、先程と同じように魔法を発動する。
アイスバインド。
地面を伝い相手を凍らせて動きを止める拘束魔法だ。
わたしの使える魔法の中では比較的弱い魔法ではあるものの、雑魚敵の処理に役に立つ魔法だ。
魔力が高い敵、飛んでる敵、炎属性の魔物には効果はないものの、魔力の低い雑魚ならば一方的に拘束できる。
この魔法の前では、雑魚をかき集めた数の暴力は意味をなさない。
そして、魔法はゴブリン達の足を一瞬で凍らせる。
ゴブリン達の足は凍りつき動けなくなった。
「ぐきゃー」
ゴブリン達は必死にもがくものの動けない。
「本当に鮮やかな魔法だな!これなら楽勝だ。」
ゲンキは感心した声をあげると、次々とゴブリン達の首を跳ねる。
相手は為す術もなく、その数を減らしていく。
「あっゲンキさん、ずるいです。わたしも活躍したいです。ファイヤーボール!」
ゲンキの活躍を見たライムは声を上げると、慌てて魔法を唱える。
そして、サッカーボール大の炎の玉を作り出すと、次々とゴブリン達に向けて放った。
炎の玉は、ゴブリンをはね飛ばし、その肉体を焼き払う。
ライムの魔法を受けたゴブリン達は、呻き声をあげて絶命する。
そして2人はあっという間に、数10匹は居たゴブリン達を殲滅した。
「後はお前だけだな」
ゲンキは剣を構えて、後ろに立つゴブリンキングを注意深く牽制する。
アイスバインドは、魔力の多い敵には効果がない。
どうやらゴブリンキングには、わたしの魔法は通じなかったようだ。
相手は仲間達がやられた怒りで、大きな唸り声をあげると私たちに向けて魔法を放った。
激しい光と共に荒れ狂う電流が、わたし達へと迫る。
どうやら相手は雷の魔法を使うようだ。
だがその魔法の力はかなり弱かった。
「アイスリフレクション」
その魔法を見たわたしは同時に、反射魔法を選択する。
電流とわたし達の間を遮り、薄い氷の盾が現れる。
そして、触れた魔法を跳ね返した。
跳ね返された電流は、ゴブリンキングに命中する。
電流は相手を痺れさせ、その動きを止める効果がある。
電流を受けたゴブリンキングは、呻き声をあげてその場に膝をついた。
「もらった!」
ゲンキはその隙を見逃さなかった。
ゴブリンキングとの距離を一瞬で詰める。
そして膝をつくゴブリンキングの首を剣で跳ね飛ばすのであった。




