ダンジョン実習①
「先生!?どうして、こんなパーティー区分にしたんですか?何かあったらどうするつもりですか?」
パーティー分けは、見事にメイ様と別れてしまった。
だが、まだそれはいい。
それよりも、大きな問題があったのだ。
わたしは思わず、イングランド先生に詰め寄った。
「これは職員会議で決めたことよ。文句を言ってもパーティーの変更を受け付けませんからね。まあ言いたいことは、わかります・・・」
そんなわたしの言葉に対して、イングランド先生は困った顔で言い淀んだ。
大きな問題、それはメイ様のパーティーには、なんとジークが一緒だったのだ。
ジークはメイ様を毛嫌いしていて、妙に突っかかってくる。
まともなパーティープレイができるとは思えない。
むしろ変なトラブルを起こして、メイ様を危険に晒す恐れが高かった。
そして、違うパーティーのわたしはメイ様をお守りすることができないのだ。
その為、わたしはイングランド先生に苦言を呈した。
そんな不安そうな顔をするわたしに対して、イングランド先生は、わたしにだけ聞こえる声で言葉を伝える。
「あの子は度々トラブルを起こしているけど、帝国の王族よ。分別は弁えるとは思うわ。それに先生達も気をつけておくから、貴女は自分のパーティーに集中しなさい」
その言葉にわたしは小声で返す。
「お願いします。どうかメイ様をお守りください。ジーク様は本当に危険なんです。お願いします。」
わたしの言葉にイングランド先生は頷いた。
だが、それでもわたしの不安は拭いきれなかった。
すると、そんなわたしにメイ様が近づき声をかけた。
「ミルロ、わたしは大丈夫よ。貴女は自分のパーティーに集中してください」
本当は嫌だろうに、わたしに心配をかけまいと努めて笑顔だ。
「メイ様・・・」
するとそんな私達の話に、カリンが間に入り声をかけた。
「師匠、メイ様はわたしに任せて下さい。」
わたしはカリンの方を見る。
今回、カリンはメイ様と同じパーティーだ。
カリンの序列は5位。
上位の序列でかなりの実力者である。
カリンはわたしと違い護衛騎士ではないので、そこまでメイ様と面識はない。
だが、ゲームと違い彼女は、真面目で信用できる人物だ。
そして、真面目に訓練に励んでいた彼女は、ゲーム内よりも実力はかなり高かった。
わたしが一緒にいけない以上、カリンにお願いするしかない。
それにメイ様がジークごときに遅れをとるとも思えない。
今からわたし達が挑むのは、C級とはいえ危険が高いダンジョンだ。
攻略に失敗すれば命に危機にさらされる。
そして命の危機にさらされるのは、自分一人だけでなく、パーティーである仲間の命もだ。
しっかりしなければ・・・周りに迷惑をかけてしまう。
わたしはそう思い至り、頭の中を切り替えた。
同行できないわたしの分まで、カリンにメイ様のことをお願いする。
「カリン、メイ様をお願い致します。」
そう言うと、わたいはカリンに対して頭を下げた。
「はい師匠、お任せください!!」
カリンはそう言うと、わたしの前に右手を差し出す。
わたしは顔を上げて差し出された手を握り返し、ガッシリと握手を交わすのであった。
◇◇◇◇
わたしは、メイ様、カリンと別れ、今回のパーティーメンバー達と集まった。
そして各々自己紹介を始める。
今回のわたしのパーティーは3人で、わたしを含めて女性2名、男性1名の構成だ。
今年の新入生の数は50名。
その為、人数の関係で全員が4人パーティーを組むことができない。
魔法を使える者は、全員魔法学園に所属する義務があるので入学時の人数調整はされていないのだ。
よって今回の演習は、4人パーティー11組、3人パーティー2組の編成になっている。
なお、わたしとメイ様は3人パーティーだ。
序列順から挨拶するということなので、まずはわたしから挨拶を行う。
簡単に自分の名前と出身地、そして魔法の属性と使える武器を2人に伝えた。
自己紹介を終えたわたしは、ぺこりと頭を下げる。
それを見て、続いて男子生徒が自己紹介を行う。
「俺の名前は、ゲンキ。ワイマール共和国出身だ。
序列は15位、魔法属性は土だ。剣が得意なので、前衛を希望する。二人とも宜しく頼む」
ゲンキは、どうやらワイマール共和国の騎士らしい。
体が大きく逞しい体をしている。身長は180センチくらいであろうか。
真っ黒な肌と同じく真っ黒な髪をしている。前世でいう黒人に似ている容姿だ。
続いて、わたしの正面の女子生徒が自己紹介する。
「私の名前はライム。同じくワイマール共和国出身よ。
序列は18位、魔法属性は炎。後衛を希望するわ、宜しくお願いします」
ライムも同じくワイマール共和国出身のようだ。
華奢な体で、身長はわたしと同じ145センチくらい。
魔法主体なのか、両手杖を持っている。
黄緑色の髪と瞳をした可愛らしい女の子だ。
ワイマール共和国は、前世の日本と同じ民主主義の国で王族や貴族は居ない。
その為、マルチーズ等の家名は存在しないのだ。
また、選挙制度をとっており、国民に選ばれた議会が政治を取り仕切っている。
他民族国家で、エルフ、ドワーフ、獣人等が多く住んでおり自由で寛容な国家だ。
前世でいうアメリカのような国で、自由主義を重んじている。
そうこうわたしが考えていると、ゲンキが話し始めた。
「なあ、今回誰がリーダーをする?やっぱり序列2位のミルロか?」
そんな彼の言葉にわたしは横に首を振る。
「わたしは弓が得意なので、後衛を希望しています。なので前で戦況を見渡せるゲンキさんにリーダーをお願いしたいのですが・・・。」
うん。我ながら素晴らしい言い訳よ。
わたしは緊張しやすい性格で、ピンチに陥ると考えるより頭で行動するタイプだ。
その為、人に指示することが苦手だった。
メイ様に偉そうなことを言っているが、実はわたしもコミュ障なのだ。
わたしの意見に対して、ライムも賛成の意を示す。
「そうですね、わたしもゲンキさんがリーダーで構いませんよ。お願いできますか?」
「おお!まかせておけ!!」
私達の言葉に、ゲンキは嬉しそうな顔をして胸をドーンと叩いた。
体は大きくて威圧感があるものの、意外とさわやかな好青年のようだ。
わたしの彼に対する印象は上がった。
そんな彼の様子にニコッとほほ笑んだ。
「ではパーティー編成は俺が前衛、ミルロとライムが後衛でいいな?それなら早速出発しよう」
ゲンキの言葉に、わたしとライムは頷いた。
こうしてわたし達はリーダーをゲンキに決めて、学園内のC級ダンジョンへチャレンジするのであった。




