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剣術の授業

入学式から1週間経ち、穏やかな学園生活が続いていた。

ジークはあれからメイ様に絡んでこない。

彼は序列の降格処分を受けたところで、教師陣や周りから目をつけられている状況だ。

その為、今は様子見しているところなのだろう。


だが、わたしはいつかまた彼がメイ様に絡んでくることを確信している。

なぜなら、時折ジークはメイ様に対して鋭い視線を向けてくるからだ。

その視線には、激しい憎悪と殺気が込められていた。

その為、わたしはジークがメイ様に害をなさないよう注視していた。


ところで、今日は剣術の授業だ。

1年生の最初の3か月は、座学や魔法、剣術等の実技がメインで、パーティー単位でのモンスター討伐やダンジョン攻略等の実践は少ない。


「では、それぞれ2人1組になって剣で撃ち合いを始めるんだ。魔法は禁止だからな」

教官のゲルマン先生が、大きな声で私たちに指示をとばす。

その指示を受けて、学生たちは各々仲のいい者どおしで組みだした。


「ミルロ、わたしと組みましょう」

メイ様は、笑顔でわたしを誘う。


「はい、もちろんです。宜しくお願い致します。」

もちろんわたしはメイ様の誘いを受けた。


そして互いに剣を構え、向かい合う。

なお、手に持っている剣は練習用の木刀だ。


「いくわよ!」

メイ様はそう言うと、高速で動き一瞬でわたしとの距離を詰めると横凪に切りつけた。

わたしは同時に縦切りに切りつける。


剣と剣は十字形に交差して、互いの剣は止まった。

ギリギリと刀身に力が籠められ、鍔迫り合いを行う。

「メイ様、腕をあげましたね!」


「ふふっ貴女もね」


そして互いに言葉を交わすと同時に、お互いに剣を弾き後ろに飛んで距離をとる。

だがそれは様子を見るために、互いに一旦距離を取ったに過ぎない。

再び同時に距離を詰めると、高速の剣で切り合った。

息つく暇もない応襲が続く。


わたしは、メイ様の鋭い剣裁きを剣で受け止めながら久しぶりの真剣勝負に興奮を浮かべていた。

最初はわたしの方が強かった。

だが今ではメイ様の成長が著しく、実力はほぼ拮抗している。

一瞬の隙を見せれば、それだけで勝負が決まる。


ゲームの設定ではメイ様は運動音痴で、フォークやナイフよりも重いものを持てない設定だったがとんでもない。

それは、引きこもりで何もしていなかったに過ぎなかったのだ。


引きこもりを止めてきちんと訓練を行ったメイ様は、主人公ゼノンの妹という名に恥じない実力を秘めていた。


◇◇◇◇

ヒットアンドアウェイで相手の隙を付き、雷鳴の如き高速の剣を放つメイ、そしてその攻撃を鉄壁の氷の壁のように的確に受け止めて防御を取るミルロ。

もちろん2人とも魔法を使っていない。

だが2人の戦闘スタイルは、それぞれの属性の性格が色濃く現れていた。


二人の躍るような剣戟に、他の生徒達は訓練の手を止めて、その光景を見入った。

教師のゲルマンも、驚きを浮かべてその戦いに見入る。


二人の美少女の戦いは、まるで2匹の妖精が躍っているようなそんな幻想的な光景であった。


「流石、序列1位と序列2位ね。勉強や魔法だけでなく、剣も超一流なのですね」


「この二人の序列はそうそう揺るがないだろうな。凄い才能だ。」


「あぁメイ様、ミルロ様なんて麗しいの。素敵だわ」


生徒から、口々と二人を称賛する言葉が飛ぶ。

だが、そんな様子を一人だけ忌々しい目で睨みつけていた。


それはもちろんジークであった。

彼の内心では俺の方が強い、俺ならあいつを叩きのめすことができるのに。

たかだかあんな動きで称賛するとは、なんて無能な奴らなんだ。


彼はそう思い苛立ちを浮かべるのであった。


◇◇◇◇

「メイ様、そろそろ本気で行きますよ」


「ええ、ミルロ。臨むところだわ。今日は勝たせてもらいますよ」


暫く剣を撃ち合っていたわたし達だったが、一旦戦いを小休止し一息つく。

私達にはまだまだ余裕があった。

さっきの打ち合いは両者とも8割程だ。


「いきます!?」


わたしとメイ様は同時に叫ぶと、再び剣を撃ち合う為に距離を詰めようとした。

だが突然、ジークが横から割り込み、わたしの前に立ちメイ様に向けて剣を構えた。


それを見たわたしは慌てて動きを止めると、前に立つジークに文句を言う。

「ジーク様、今はメイ様と訓練中です。邪魔をしないでください」


だが彼はわたしの言葉を一蹴する。

「お前は邪魔だ。この女とは俺が戦う。」


何を言っているんだこの人は。

わたしは彼の自分勝手な発言に唖然とする。

だが、そんなやり取りを見ていたメイ様は困った顔でジークを窘める。


「ジーク様、今は2人ペアで演習中です。わたしはミルロと組んでいますので、そこをおどきください。それともペアが見つからないのでしょうか?」


「な!?違う、それは違うぞ!」

それに対してジークは顔を赤らめ慌てて否定する。


「確かに、ジーク様は誰とも組んでいなかったような?」


「くすくす、なんか側近にも見捨てられたみたいだし組む相手が居なかったから、寂しかったんじゃない?


「メイ様が美しいから、気を引こうとしたんでしょ。わかりやすい。逆に嫌われるのに」


「あっわかる。あの人たまにメイ様を見つめているよね。もしかして好きなんじゃないかな。」


そんなメイ様の言葉に賛同するように、周りから失笑と共にジークを嘲笑う言葉が上がった。


「えーい!だまえ、だまれ、いいから俺と戦え!それともこの俺に負けるのが怖いのか、序列1位?」

ジークはその言葉に対して、大声で叫びながら開き直るとメイ様を挑発する。


「そこまでだ」

だがそんなジークに対して、ゲルマン先生が間に入り制止した。

そして注意を促した。


「俺は2人ペアで演習しろと言ったはずだ。メイはミルロと演習している。諦めろ、お前は他の奴と組むんだ」


そんなゲルマン先生の言葉に対して、ジークは怒りを浮かべて反論する。

「貴様、教師の分際で、この俺に指図するのか?不敬だぞ」


だが、ここは魔法学園だ。

そんな、脅しは通用しなかった。


「ここは魔法学園だ。お前は王子かもしれないが、俺は先生でお前よりも大きな権限を持っている。もちろんこの学園を退学させる権限もな。あまり、反抗的な態度を取ると処分を検討しないといけないな。」


「くそっ」


ジークはその言葉に反論できなかった。

学園を退学になるとどうなるか、それがわからない程、彼も馬鹿ではない。


ジークは吐き捨てるように声を上げて、手に持っていた木剣を地面に叩きつけると、演習場を後にした。


辺りには気まずい空気が流れる。

わたしは去りゆく彼の後ろ姿を見ながら、嫌な予感を募らせる。

ジークはメイ様に激しいライバル意識と憎悪を持っている。

このまま放置すれば、何かとんでもないことをやらかすのではないか?

だが彼は同じ生徒であるものの、帝国の第2王子だ。

特に対処方法は思いつかない。

わたしができることは、何かあったときにメイ様をお守りすることだけだ。


だがその嫌な予感は、今後現実のものになるのであった。

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