水魔法
結局、わたしは転生した興奮で眠ることができなかった。
その為、夜中にユキメを呼び出して、魔法の使い方を教えてもらった。
今後の予定を立てた後に、魔法のことを考えていると、使いたくて使いたくて仕方がなくなったのだ。
最初、ユキメは休まないわたしに対して、ブツブツと文句を言っていたが、わたしの魔法の飲み込みが早かったので、次第に機嫌が良くなりノリノリで魔法の使い方を教えてくれた。
なお、私の使える属性は、ゲームと同じ水属性だ。
魔法の属性の種類は、炎、水、雷、風、土、光、闇の7種。
水属性は水だけでなく温度を自在に変えて、氷やお湯を出すこともできるので、日常生活をする上で、非常に便利な属性だ。
「はあー極楽だわ」
魔法で作り出したお風呂に入り、わたしはのほほんと寛ぐ。
隣ではユキメが楽しそうに浴槽を泳いでいた。
ユキメに教えて貰った魔法で、氷で浴槽を作りお湯を溜めてお風呂を作った。
ミルロは孤児で今までお風呂に入っていなかった。
その為、汚くて汚くて耐えられなかったのだ。
久しぶりのお風呂にわたしは羽を伸ばす。
なお魔法で作った氷は、術者が魔法を解くか格上の炎魔法を受けない限り溶けることはない。その為、お湯に浸しても平気なのだ。
それにしても魔法って本当に便利ね。
わたしは自分の手のひらに浮かぶお湯の塊を見ながら、感動する。
浮かぶお湯はもちろん魔法で生み出し操作している。
体にめぐる魔力を操作して、作る物をイメージする。
それがユキメに教えてもらった魔法の使い方だった。
魔力を感じるのが難しかったのだが、体に流れる血液をイメージすることで感じることができた。
手のひらに魔力を集めて作る物をイメージするのだ。
同じように、水、氷、お湯。
温度もイメージすることで、自由自在に変化させることができる。
ゲーム内では魔法はこんなに自由度の高い物ではなかった。
普通のRPGのように魔法名があって、コマンドを選択すれば相手を攻撃したり回復したりするだけだ。
改めて、ここは現実世界でありゲームとは違うのだと実感する。
攻撃魔法や防御魔法、呪文名等気にせず、自分自身のイメージで自由に魔法を構築することができるみたいなのだ。
もちろんレベルもないし、MPもない。
だが魔力量には限りがあるようで、魔力が0になると意識が混沌として倒れてしまうらしい。
だから魔力量には注意するようにと、ユキメに強く釘を刺された。
そして、わたしは一晩中練習したおかげで、イメージ通りに魔法をコントロールすることができるようになった。
わたしが考えていると、隣で泳ぐユキメが感心した顔でわたしに話しかけた。
「ほんとミルロは凄いわ。魔法でこんなことできる人なんて、わたし初めて見たわよ」
「え?そうなの?もしかしてユキメは私以外の人と契約したことがあったりするの?」
ユキメの言葉に、私は気になり質問した。
初めて見たということは比較対象がいると思ったのだ。
「えーそうよ。わたしは300年前に生まれたんだけど、契約したのはミルロで3人目かしら。でも貴女が今までの契約者の中で一番魔法が上手よ、貴女を選んで正解だったわ」
それからユキメは精霊や魔法のことをいろいろ教えてくれた。
精霊が人間と契約する理由は、魔力がもらえるからだそうだ。
精霊単体でも魔法を使うことはできるらしいのだが、魔力量が低くあまり強い魔法は使えないらしい。
また魔力が完全になくなると、精霊は命を失ってしまうそうなのだ。
だから精霊は魔力を求めて、人間と契約する。
精霊と契約できる人と契約できない人がいるのは、魔力のあるなしに違いがあるらしい。
反面、人間は魔力があるものの魔法を変換する能力がないとのことだ。
その為、精霊なしでは魔力を垂れ流すだけで魔法として具現化することができない。
だからこの世界の人間は、精霊と契約して初めて魔法が使えるようになる。
なお、魔物や魔人と呼ばれる種族は、精霊がいなくても魔法が使える。
それは魔力と魔力を変換する能力の両方が備わっているからだそうだ。
「そうなのよ。だからわたし達精霊は魔力が高い人を求めているの。精霊の寿命は長いから、何人かの人間と契約するというわけよ」
だから精霊と契約しないと魔法が使えないのか。
わたしはユキメの言葉に納得して感心する。
そうこう話をしている間に、お風呂は終わった。
魔法で作ったお湯で服も洗ったので、以前とは見違えるように綺麗になった。
わたしは鏡に映る自分の姿を見る。
その写る姿に、わたしは思わず見とれてしまった。
そこには絶世の美少女が写っていた。
氷のように澄んだ水色の髪の毛に、ルビー色に輝く赤い瞳。
桃色の唇、雪のように白い肌。
ミルロは紛れもない美少女であった。
そういえばゲームに出てくる女性はみんな綺麗だったな。
それに男性もイケメンだったし。
主人公のゼノン、ヒロインのアリア、悪役令嬢のカトレアの顔を思い浮かべる。
誰もが前世での芸能人顔負けの、美男美女揃いだ。
コンコンコン
すると部屋のドアがノックされる。
そして一人の女性が部屋に入ってきた。
それは修道服を着た女性であった。
栗色の髪の毛に、同じく栗色の瞳。
年齢は若く18歳くらいかと思われる。
クリクリとした可愛らしい女性だった。
わたしはその女性を見て、ここがどこなのか思い至る。
そうか、わたしは儀式中に倒れてしまった。
だから、ここは教会なのだろう。
教会の人達が倒れたわたしを助けてくれたのだ。
ここが見知らぬ部屋だったのはわかっていたが、どこなのかを調べようともしなかった自分が恥ずかしい。
転生のことと魔法のことで頭がいっぱいで、今の今まで忘れていたのだ。
わたしは慌てて入ってきたシスターにお礼を言う。
「ごめんなさい。わたしを助けてくれたんですよね?ありがとうございました」
シスターはわたしの言葉に笑顔になった。
だがすぐにわたしの姿を見て、驚いた顔を浮かべる。
「えええ、連れてきた時よりもすっかり綺麗になって!何かあったんですか?」
いきなりそれを聞く?
と思いつつ、わたしはシスターに実際に魔法を見せて説明した。
「魔法で洗ったんですよ。こういう風に」
わたしはそう言うと、右の手のひらを開いて魔力を操作した。
するとコップ1杯程の水の塊が現れる。
それをクルクルと回して、シスターに見せた。
それを見たシスターは目をキラキラと輝かせる。
「凄い!もうこんなにも魔法が使えるようになっているんですね。」
そしてシスターは感心した顔を浮かべた。
わたしはその様子に苦笑いで返す。
「あっそう言えば、神父さんがお呼びですよ。貴女に合わせたい人がいるんですって。よかったわね。貴女に新しいご両親ができますよ」
新しいご両親?
わたしの頭の中に疑問が浮かぶ。
呆然と立ち尽くした。
そんなわたしの様子に、シスターも言葉足らずと思ったのだろう。
慌てて言葉を付け足す。
「ごめんなさいね。言い方が悪かったわ。貴女を引き取りたいって方が来られているのよ。貴女貴族になれるかもしれないわよ」
貴族?
もしかして・・・。
シスターの言葉にわたしは嫌な予感を感じた。




