ミア=シナプス
「ここがメイ様の寮ですか?」
わたしは目の前に立つ、家屋を見て驚きの声を上げる。
目の前に広がるのは、寮ではなく小さな一軒家だったからだ。
魔法学園の敷地は広い。
その為、王族や侯爵家以上の上級貴族には寮ではなく戸建ての家が与えられるのだ。
使用人も制限があるものの3人まで連れていくことができる。
わたしは使用人の1人として、今日からこの家でメイ様と一緒に住む予定だ。
なお風紀の為に、男女の区画はきっちりと別れており男子を家に居れると厳しく処分される。
もちろんその逆も然りだ。
「あっメイ様、ミルロ、お待ちしておりました」
すると家のドアが開き、1人のメイド服を着た女性が出てきた。
その女性の名前はミア=シナプス。
メイ様の侍女で、わたしの侍女業務の先輩だ。
私達より3つ上の16歳で、身長は160センチで栗色の髪と瞳をした可愛らしい女性だ。
実はわたしが護衛に採用された時に、一度首になった侍女でもある。
彼女はメイ様と小さな時から仕えてきた幼馴染だ。
一生懸命、メイ様の元に仕えていたものの、当時我儘だったメイ様の気まぐれで首になったのだ。
だが、その後、心を入れ替えたメイ様は彼女を呼び戻し謝罪した。
そして再びメイ様の侍女になったのだ。
わたしに侍女業務を教えてくれる頼れる先輩であり、彼女の入れるお茶の味にはわたしはまだまだ適わない。
尊敬できる先輩なのだ。
ミア様は精霊と契約できず魔法の才能はない。
だが、こうしてメイ様の侍女として魔法学園まで同行することになった。
そして、わたし達より1日早くこの魔法学園に来て、寮の片づけをしてくれていた。
「ミアご苦労様。片づけありがとう」
メイ様はミアさんに、にっこりと笑顔を見せると、その働きを労った。
「お部屋はだいぶん片付いております。さあさあ中にどうぞ」
そう言うと、ミアさんは私達を家に招きいれるのであった。
「これは!?」
わたしとメイ様は家の中に入ると、その広さときちんと片付けられている状況に息を飲む。
部屋はすっかり整えられて、きちんと整理整頓されていた。
1日しか時間がなかった筈なのに、きちんと整理整頓したミアさんの仕事ぶりに、わたしは舌を驚きを隠せない。
「どうですか?お部屋はだいぶん整えられておりますよ。1Fはわたしとミルロが寝る為の使用人部屋と食堂、それからお風呂もあります。そして2Fはメイ様のお部屋です。まずは2Fをご案内しますね」
それからミアさんに、家の中を案内して貰った。
2Fは全てメイ様のお部屋になっており、小さな家だと思っていたがかなり広い部屋であった。
王宮にあったメイ様の部屋と同じくらいの広さだ。
部屋の端には、ふかふかで豪華なベッドがきちんと整えられている。
ピンク色を基調とした可愛らしい部屋だ。
それから1Fに降りて、使用人部屋や食堂などを案内された。
メイ様の部屋と比べると簡素なものの、設備が充実しており住みやすそうだ。
使用人部屋には4つのベッドが整えられている。
ミア様が気をきかせて、パーティーを組んだ時や友人用に少し多めに準備してくれたそうだ。
部屋を案内してくれたミアさんをメイ様は労うと、わたしたちに声をかけた。
「さて、ミルロ、ミア。皆で大きなお風呂に入りましょう。いいわよね?ミルロ」
そう言うと、メイ様はキラキラとした眼差しでわたしを見る。
もちろん、わたしも賛成だった。
王国から学園まで馬車で数日かかるので、今は体がカチカチでくたくただ。
大きなお風呂でゆっくり羽を伸ばしたかった。
わたしはすぐに魔法を発動して、大きなお風呂を作り出すのであった。
◇◇◇◇
「ふぅーやっぱりお風呂は最高だわ」
湯舟に浸かるメイ様は上機嫌に呟いた。
「やっぱりミルロのお風呂は最高ね。おかげさまで私もお肌がすべすべよ」
ミアさんも気持ちよさそうにお風呂に入り、笑顔で自分の体を優しくなでた。
シミ一つない綺麗な肌は、ぷるんと水を弾き艶やかに跳ねた。
わたしはその様子を見て、顔を赤くする。
ミアさんはわたしより3つ上で、出る所は出てプロポーションが抜群なのだ。
大人の女性という感じで、凄く綺麗だ。
特に、胸に称えるふくよかで立派な盛り上がりは羨ましい。
わたしはあと3年であの域に達することができるのであろうか?
そういえば、前世の時もあまりなかったような気がする。
思わず、わたしは自分の胸を見る。
ない・・・。
そこには、何もない平原が広がっていた。
慌ててわたしはメイ様の胸を見る。
そしてそれを見たわたしは、ほっと安心して息を吐いた。
メイ様もわたしと対して変わらない何の盛り上がりもない平原だったからだ。
わたしは歳相応だ。これなら大丈夫。
メイ様の胸を見て、わたしはそう結論づけた。
だが、どうやらわたしの視線はバレてしまったようだ・・・。
「ミルロ、貴女今、わたしの胸を見ましたよね?」
メイ様は、怒りの表情を浮かべわたしに声をかけた。
そしてその顔は、ゆでだこのように真っ赤だ。
「はい、メイ様、わたしも見ましたよ。ミルロはじっと凝視していました」
ミアさんも楽しそうに、メイ様の言葉に同調する。
わたしはその言葉にさっと顔を青くすると、慌てて言葉を取り繕った。
「メイ様、ミアさん、誤解ですよ。ちょっとミアさんの胸が大きかったので、自分とメイ様の胸と比べてみただけですよ。大丈夫、私達は歳相応です!!」
だが、慌てていたわたしは余計なことをペラペラと喋ってしまった。
慌てると、余計なことをペラペラとしゃべってしまう。
それはわたしの弱点だ。
「ミア、ミルロを捕まえて、わたしが直接お仕置きをします」
わたしの言葉を聞いたメイ様は真っ赤な顔をして自分の胸を手で隠すと、怒りを浮かべた声でミアさんに指示をした。
「承知しました。ミルロ、メイ様のご命令なの。悪く思わないでくださいね」
「ちょっとミアさん勘弁してください」
それを聞いたミアさんはわたしを後ろから抱きすくめ、羽交い絞めにする。
ミアさんは護身術を習っていたらしく、格闘術特に絞め技や関節技が得意だ。
羽交い絞めにされたわたしの体は、ミアさんにしっかりと関節を決められ動くことができない。
「よくやったわ、ミア。ミルロお仕置きよ!!これでも食らいなさい」
メイ様は嬉しそうにわたしの前に立つと、わたしの胸へと手を伸ばした。
「ちょっと、メイ様、やめてください、ってどこ触っているんですか、キャーセクハラ!ミアさん、助けて。お願いします」
こうしてわたしは、メイ様とから厳しい罰を与えられるのであった。
「はあはあ、二人がかりなんてずるいですよ」
ようやく解放されたわたしは、肩で息を吐き項垂れる。
「自業自得よ。これに懲りたらあんまり人の胸をとやかく言わないことね」
「ミルロ。あれは貴女の失言よ。言葉に気をつけることね」
メイ様とミアさんが口々に言う。
なんて理不尽なんだと思いつつ、わたしは心の中で文句を言う。
だが、また二人がかりで来られると適わないので、ここはぐっと堪えた。
こうして、わたしはメイ様とミアさんと楽しい?共同生活をすることになるのであった。




