序列
「ミルロ、わたしは気にしていないわ。殺気を放つのをやめなさい」
相手に殺気を放ったわたしに対して、メイ様は注意を促した。
その言葉を受けた、わたしは殺気を放つのをやめる。
そしてメイ様に謝罪した。
「メイ様、申し訳ございません。」
メイ様は右手を軽く上げてわたしの謝罪を受け入れるポーズをすると、ジークの方を向き声をかけた。
「わたしはウィシュタリア王国第1王女のメイ=ウィシュタリアです。ジーク王子、わたしの護衛が失礼しました。ただ・・・」
メイ様はお辞儀をせずに謝罪の言葉を伝えると、更に言葉を続ける。
「貴方のやっていることは、同じ学園生として見過ごすことはできません。学園は種族や身分を問わない場所だと伺っております。貴方の彼女への狼藉は獣人に対する差別であり、この学校の規則に反すると思いますよ。」
メイ様はそう言うと、きっとジークを睨み付けた。
メイ様とジークが睨み合う。
「はっはっはっは」
すると、睨まれたジークは大きな声で笑いだした。
辺りは静寂し、ジークの笑い声だけが辺りに響き渡る。
わたしとメイ様、そして獣人の女の子は訝しながら、そんな彼を眺めていた。
「いや、驚いた。王国が獣人という下等種族の肩を持つとは思わなかったのでな。やはりウィシュタリア王家が無能だと言う噂は本当だったのだな。」
ジークの言葉を受けて、取り巻きの男3人も笑い出した。
ジークを中心とした帝国の4人は、メイ様を罵倒する。
だが、メイ様はそれに対して余裕の表情を崩さなかった。
「その無能なウィシュタリア王家に負けたのはどこのどなたですか?序列3位のジーク様?」
序列、それは学年内の成績の順位だ。
魔法学園は競争主義を重んじており、学生の成績により序列を設け数字化している。
序列は学園内での身分を表し、上位の言葉は絶対である。
そして序列の高いものは、授業や学園生活に置いて数多くの優遇を受ける。
明確な数値を持って待遇を差別化することによって、学生内の競争心理をあおるのだ。
それにより、順位の高い者は周りから尊敬と敬意をはらわれ、順位の低い者は周りから苛められたり軽蔑されたりするというわけだ。
もちろん学園側も序列による苛めや冷遇は黙認している。
「なんだと!?」
その言葉を受けて、今まで余裕の表情を浮かべていたジークの顔はその余裕を失う。
そして悔しそうにメイ様を睨みつけた。
「わたしの学園内の序列は1位、そしてわたしの護衛であるミルロは序列2位です。序列3位のジークに対して、序列1位のわたしが命じます。」
そしてメイ様は、わたしが抱えている獣人の女の子を指し示した。
「彼女に謝罪して、とっととこの場を去りなさい。」
「なんだと貴様!たかだか王国の王女の分際で、この帝国第2王子を愚弄するのか!!」
だが、ジークは諦めが悪いのか今度は帝国を盾に反抗した。
第2王子は第1王子によっぽどのことがない限り、王位継承権なんてないじゃない。
どんな身分よ・・・。
空いた口が塞がらない。
ゲームでは気づかなかったが、ジークって馬鹿なのね。
わたしはジークの言葉に対して、心の中でツッコミを入れた。
「へえー第2王子ですか?第1王子じゃないんですよね?そんな中途半端な身分で偉そうにできる貴方はどこか可笑しいのではなくて?それに帝国の規模は、わたしの王国とほぼ同じでしょ?」
一方、メイ様はまさにわたしが思っていたことを口にする。
ジークはその言葉に対してさらに怒り狂い、顔真っ赤にしてプルプルと震えだした。
だが反論する言葉が見つからないのであろう。
強く拳を握りしめ、下を向き怒りに震えるだけであった。
だが、その言葉に対して周りの取り巻きが怒り狂った。
そしてある1人の仲間の男が、メイ様を怒鳴りつけ、さらにあろう事か突然魔法を放った。
「貴様、ジーク様に無礼であるぞ。これでも喰らえ!エアーカッター!!」
相手の呪文と共に、カマイタチがおき、無数の風の刃がメイ様へと迫る。
「アイス・リフレクション!」
それに対して、わたしは反射魔法を放った。
防御魔法は氷の壁や魔力障壁を作って、物理攻撃や魔法攻撃から身を守る魔法だ。
一方、反射魔法は防御魔法と同じように盾や魔法障壁を作り出すものの、受けた攻撃をそのまま相手に弾き返す。
だが反射魔法は防御魔法と違い攻撃に転嫁できる反面、その制約は多い。
反射する盾自体が脆いので、余程の力の差がない限り攻撃を反射することはできないのだ。
しかし、相手は所詮はタダの取り巻きだ。
その魔力量は少なく、たいした攻撃ではなかった。
それに突然メイ様に攻撃した相手に対して、わたしは苛立ちを浮かべていた。
その為、わたしは防御ではなく反射魔法を選択したのだ。
メイ様を庇うように、大きな氷の薄い盾が現れる。
現れた盾は、魔法をなんなく受け止めると、その風の刃の動きを180°変えて相手に跳ね返した。
跳ね返された無数の風の刃は、魔法を放った者だけでなくジークと他の取り巻き達にも迫る。
「え?そんな馬鹿な!?」
「馬鹿野郎!なにやっているんだ。」
「ジーク様、前を見てください!」
「は?どういうことって・・・はあ?」
ジークは下を向いていたので、跳ね返された魔法に対応できなかった。
そして、取り巻き達はそもそもその魔法を防ぐ力はない。
跳ね返された風の刃はジーク達4人に当たり、ズタズタに切り刻んだ。
鮮血が舞い、服がズタズタに引き裂かれる。
大きなダメージを受けたジーク達4人は、その場に膝をつき崩れ落ちた。
「貴様!いきなり攻撃するなど卑怯だぞ」
「何をいっているの?いきなり攻撃してきたのは貴方の部下でしょ?それに跳ね返された魔法でダメージを受けるなんてまさに滑稽ね、自業自得だわ」
ジークの恨み言をメイ様は一蹴すると、相手をバカにするように笑いを浮かべる、
「もう許さないぞ!目にもの見せてくれる」
ボロボロで血だらけのジークは、フラフラとなんとか立ち上がるとメイ様に向けて、魔法を放とうと右手を構えた。
赤い魔力が右手に集まると、メラメラ燃えるサッカーボール大の火の玉を作り出す。
その火の玉には、大量の魔力が込められていた。
激しい炎と共に、強烈な光を放つ。
これは反射できないわね。
でも全然防御できる魔法だわ。
わたしはそう判断すると、今度は防御魔法の準備をする。
だが、そんなわたしに対してメイ様は声をあげた。
「ミルロ防御はいいわ。この無礼者はわたしが直々にお仕置します。」
メイ様はそう言うと、腰に指してあった剣を抜いた。
これはこの前、手に入れた青龍の剣だ。
抜かれたサファイヤ色の刀身はキラキラと青い輝きを放つ。
「こんな剣で俺の魔法が防げれるとでも?舐められたものだ」
「今、魔法を収めれば今回の件は不問にしてあげるわよ。さっさと去りなさい。」
「ほざけ!」
「ジーク!貴様何をやっている!」
ジークがメイ様に魔法を放とうとした瞬間、後ろから突然、大きな声が響き渡った。
その声を受けたジークはビクリと体を震わすと、慌てて魔法を解除する。
大きな炎の玉は霧散して消え失せた。
わたしとメイ様は声をあげた人物を見た。
そこにはジークによく似た黒髪と赤い目をした男性が苛立った表情を浮かべ、ジークを睨みつけるのであった。




