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ジーク=キルラルド

道中は特にトラブルなく、入学式の3日前、わたしとメイ様は無事に学園に到着した。


ここが魔法学園・・・。

わたしは目の前に広がる光景に息を飲む。

そこには『マナアース』のゲームと全く同じ学園の風景が広がっていた。

赤いレンガ作りの門と校舎、そして東京ドーム1000個分に及ぶと言われている広大な敷地。

立派な魔法学園がそこにはあった。


ミルロとして、異世界に転生してから早3年。

遂にゲームシナリオが始まった。

しかしこれから始まる学園生活は、わたしの知るゲームのシナリオとは全く違う展開になるのであろう。


わたしは悪役令嬢カトレアの取り巻きCにはなるつもりはない、というかなれない。


なぜなら、どういうわけかカトレアは1つ飛び級してわたしやメイ様よりも1学年上だからだ。

しかもアリアそしてお兄様と一緒に、主人公ゼノンとパーティーを組んでいるらしい。

わたしはアーサーお兄様と仲が良く、お兄様が学園に入学してからも定期的に手紙を交換していた。

そしてその事実を知り驚きを隠せなかったのだ。


わたしの存在が話の流れを変えたのか、メイ様が変わったことによりシナリオが狂ってしまったのかは

わからない。

ただ1つ言えることは、今後の学園生活はわたしの知らないものになろうということだけだ。


しかし、わたしはそれもいいかなぁと思っている。

ここは現実世界であり、ゲームの世界ではない。

ただ似ているだけで、その通りに話が進む保証など全くないのだ。

それに未来がわかっていても、面白いことなんてない。

だから、思う通りに好き勝手に生きよう。

わたしはそう決意を固めるのであった。


すると隣で一緒に学園を眺めていたメイ様が、声をかけた。


「ミルロ、学園は噂通り立派なところですね。さて長旅で疲れましたし、お部屋に着いたら一緒にお風呂に入りましょう」


わたしがこの世界について考えていると、隣にいるメイ様がわたしに話しかけてきた。

このメイ様もまたゲームのシナリオから外れたイレギュラーな存在だ。

魔法の力に目覚め自信を取り戻したメイ様は、本当に変わられた。

引きこもりを辞めて王女教育をしっかりと受けているので、教養もあり頭もいい。

さらに魔法の才能も凄まじく、今やわたしと魔法に関してはほぼ互角レベルだ。


魔法学園の入学前に、筆記と魔法の試験があった。

魔法が使える者は魔法学園に通うことは義務であるため、合格不合格はない。

だが魔法学園は共に競い合うことを主軸としており、個人そしてパーティーの成績が厳しく点数化されてしまう。

入学試験でいい点数をとれば、その分成績に加算されるというわけだ。


さらに入学試験でトップの成績をとれば、入学試で新入生代表として挨拶することになっている。

今年の試験のトップは、わたしとメイ様の同率1位でどちらも満点だ。

だが、メイ様は第1王女でわたしは護衛兼侍女だ。

その為、わたしは辞退して、挨拶はメイ様が行う予定である。

去年はゼノンがトップだったので、ウィシュタリア王家が2年連続トップの快挙だ。

なおゲームではもちろん別の人がトップであった。


「はい、メイ様。でもお風呂の前にお部屋の片づけが先ですね。」


「そうね、それでもまずはお部屋に行くのが先ね。では行きましょう」


学園の手続きも終わり、わたしは荷物を持つと、二人揃って学園の中へと入っていくのであった。

なお荷物といっても収納バッグがあるので、最低限の荷物で持つものは殆どない。

収納バッグ様様である。


わたしとメイ様が学園に入り寮の方へと進んでいると、目の前で争っている者達が見えた。

「おい!目障りだ、さっさとこの場所から去れ。」


「どうして獣人がこんなところにいる。獣臭くて適わん」


どうやら何人かの男性たちが、誰かを取り囲んで苛めているようだ。

相手を罵倒する声が響き渡る。

背が小さいのか、男性達が誰を罵倒しているのかはわからない。

だが、獣人?という言葉が引っかかる。


「メイ様どうされますか?」

わたしは隣に立つメイ様を見る。

それに対してメイ様は、迷わずに答えた。


「そうね、様子を見に行ってみましょう。もし、私達ができることがあったら助けてあげたいわ。弱い者苛めは見過ごせないもの」


わたしはその言葉に、メイ様らしいなと思い笑顔になる。

そして、何かあった時にメイ様を守れるように前に立ち、二人で争っている者達の元へと歩み寄った。


「そんな・・・わたし少し道に迷っただけで・・・・うううう。」


「あーもう!いいからどけ、邪魔だ。」

そう言うと、一人の男性が相手を突き飛ばした。


突き飛ばされたのは、小さな女の子だった。

だが、普通の人間ではなく、頭の上には大きな耳と、お尻にはフサフサの尻尾がついている。

まるで、リスのような耳と尻尾が付いた彼女は、獣人と呼ばれる種族だ。


獣人は西のワイマール共和国に住む少数民族だ。

獣人と呼ばれるように、人間と他の動物の力を持った種族で、獣のような耳、尻尾、牙や爪等を持っている。

持っている動物の力も狼、猫、鹿、ライオン等、様々だ。

普通の人間よりも全体的に身体能力が高いものの、魔力を持っている者は稀で精霊と契約できる獣人は殆どいない。

彼女はどうやらリスの獣人で、この魔法学園にいるということは獣人としては珍しく、精霊と契約しているのだろう。


「メイ様、わたし行きますね!」

そう言うとわたしは身体強化魔法を施し、集団の元へと駆けた。

そして取り囲む集団の間を一瞬で抜けると、突き飛ばされて倒れる女の子を受け止めた。


「ふぇ、貴女は?」


「なんだ貴様は!?いきなり」


突然わたしが現れたことで、取り囲む相手と突き飛ばされた女の子は驚き声をあげた。


「貴方達、多勢に無勢で女の子一人に何をなされているのですか?」


そしてメイ様は、獣人の女の子を突き飛ばした男性の集団に声をかけた。

いつもの明るい声ではなく、低く威圧感のある声だ。

どうやら、女の子を突き飛ばしたことにかなりの怒りを浮かべているようだ。


相手は4人組の男性だ。

今度は、声をかけたメイ様を見て訝しむ。

わたしは突き飛ばされた女の子を抱えてゆっくりと立ち上がると、男達の間を抜けてメイ様を庇うように斜め前に立った。


そして相手の男性達を見る。

この人は!?


わたしは目の前に立つ、リーダー格の男性に見覚えがあった。

いや実際には初対面だが、ゲームの知識で知っている。

彼の名前は、「ジーク=キルラルド」。

ゲームでは今度、王国に戦争を仕掛けてくるキルラルド帝国の第2王子だ。

そしてメイ様を拉致し帝国編のラスボスでもある「アーク=キルラルド」の弟である。

アークは魔法学園の3年生、ジークは1年生でわたしと同学年だ。

ゲーム内のジークとカトレアは仲が良く協力関係であり、様々な悪事を行っていた。


短髪で棘のある黒髪と血のように赤い目。

身長は高く170センチを越えている。


「なんだ、貴様は?この俺を帝国第2王子であるジーク=キルラルドと知ってのこの物言いか?」

ジークはメイ様の態度が感に触ったのであろう。

忌々し気に睨み付けて、殺気を放った。


それに対して、わたしも警戒を強め殺気を放つ。


びりびりと火花が散り、辺りは一触即発の空気に包まれるのであった。

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