青龍③
わたしとメイ様は青龍から武器を貰い、互いに喜びあった。
特にわたしが弓を貰ったことに対して、メイ様は自分のことのように大喜びしてくれた。
実は今回、自分だけが武器を貰えることに、メイ様は引け目を感じていたそうだ。
だから、こうして私も武器を貰えたことに自分の事のように喜んでくれた。
最初わたしは、メイ様の護衛騎士になるのが嫌だった。
ゲームの内の知識だけで判断して、メイ様は我儘で問題を起こす王女であると思っていたからだ。
だが、実際に会ってみて、メイ様の印象は違った。
たしかに我儘で引き籠りだったのだが、そこには悪意はなかった。
メイ様はただ劣等感に陥っていただけであり、彼女をそうさせてしまったのは、優秀な兄であるゼノンと比べてしまう周りの環境であったのだ。
しかし、メイ様は魔法という少しのキッカケで変わった。
魔法というたった1つの才能に目覚めたおかげで、自分に自信を持つことができたからだ。
人は自分に自信がなければ、生きていけない。
自信を取り戻し引き籠りをやめたメイ様は、もはやゲームのような卑屈な王女ではない。
何事にも挑戦する才能と慈愛に満ちた素晴らしい王女となったのだ。
そして今や、メイ様はわたしとって尊敬すべき守るべき主である。
この世界に来て、メイ様と出会えたことに感謝すると共に、彼女の護衛騎士になれたことに喜びを感じるわたしであった。
わたしがそう考えていると、メイ様が声をかけた。
「ねえ?ミルロ、せっかくいい武器を2つも貰ったんだし、お礼にあれをプレゼントしませんか?」
その言葉に、わたしはパンと手を叩く。
「そうですね、それはいい考えです。では早速出しますね」
そういうと、わたしは持っていたバッグを開けて中身を取り出した。
バッグは、肩から下げるタイプでピンク色の小さなハンドバッグだ。
だがバッグから取り出した中身は、30リットルは入っている大きな大きな酒瓶であった。
このバッグは『収納バッグ』。
異次元に繋がっており、バッグの容量以上に多くの物を収納できる魔法のバッグである。
ゲームでは主人公ゼノンが使用していた便利なアイテムだ。
これはウィシュタリア王国の秘宝として2組存在している。
1つはゼノン、そしてもう1つをメイ様が貰ったのだ。
王様が魔法学園に通う息子と娘を心配して、それぞれプレゼントした。
国宝レベルの貴重なアイテムなのだが、王様はそれをプレゼントしてしまう親バカなのである。
「おお、これは!?酒か!」
その瓶を見た青龍は歓喜の声を上げる。
「はい、ほんのお礼です。青龍さんどうぞお飲みください」
喜ぶ青龍を見たメイ様は、笑顔で酒瓶を指し示した。
「おおお!久しぶりの酒じゃ。それでは遠慮なく」
そう言うと青龍は酒瓶を起用に開けると、瓶に口をつけて飲み始めた。
このお酒は、『龍殺し』と言われるこの世界で一番強いお酒だ。
その度数は70にも及び、あまりのアルコールのきつさに龍をも殺すというネーミングがつけられた。
だが、実際には青龍を初め、ドラゴン達の大好物だったりする。
実は私達が青龍を討伐しようと決めたのは、負けた時のリスクが少なかったのもあった。
ここはゲームの世界に似ているが、レベルというものが存在しない。
その為、相手の強さの目安や自分自身の強さが、わからないのだ。
結果はなんなく勝つことができたものの、青龍という強力な魔物に対して、負けてしまうということも十分考えられた。
この世界の戦い、特に魔物との戦いに敗れれば死あるのみだ。
しかし、青龍だけは負けても逃げる方法がある。
それは、大好物の『龍殺し』を差し出せばいいのだ。
負けそうなら、お酒を差し出して逃げよう、そういう作戦であったので、こうしてお酒を持ってきたというわけだ。
「ぷはーしみるー。」
お酒を飲んだ青龍は、顔を赤くして満足そうな笑みを浮かべる。
どうやら、もうすっかり出来上がっているようだ。
「メイ様、せっかくですしわたし達もお昼御飯にしましょう。」
「そうね、せっかく山頂まで来たしご飯を食べながら、この景色を堪能しましょう」
そう言うと、わたしは再び収納バックを開ける。
そして2つのお弁当を取り出すと、敷物を引いてメイ様と並んで座り、お弁当を食べだした。
お弁当の中身は、お城のシェフが作ってくれたハンバーグ弁当だ。
収納バッグが通じている異次元は、時間の経過がない。
その為、中に入ってあったお弁当は腐ることなく冷めることもないのだ。
アツアツのお弁当を、わたし達は美味しそうに食べ進める。
「やっぱりシェフのハンバーグは最高ね!!」
「はい、本当に美味しいです。ジューシーな肉汁が溜まりませんね」
するとそんな様子を見ていた青龍が物欲しそうに見つめた。
わたしはその視線に気づくと、青龍に笑顔で話しかけた。
「青龍さんも食べられますか?実は予備でもう1つあるんです。青龍さんからしたら小さいかもしれませんが・・・。」
それを聞いた青龍は嬉しそうに声を上げる。
「おお!それは誠か!ぜひ頂こう。お主達があまりにも美味しそうに食べているのでな、興味をもったのじゃ」
その言葉を受けて、わたしはバッグからもう1つお弁当を取り出すと青龍に差し出した。
青龍の大きさは30メートル、対するお弁当は20センチくらい。
その大きさの差は、あまりにも大きい。
青龍はお弁当を指でつまむと、パクッと1口で箱ごとお弁当を食べた。
それを食べた青龍は、パッと顔が明るくなる。
そしてトロリと表情がとろけて笑顔になった。
「なんだ!これは柔らかくてジューシー。そしてコクがある。旨いうまいぞー!!!」
そして大声を上げて、大きな咆哮を巻き起こした。
その声は、山彦の様に辺りに響き渡る。
「これはハンバーグという料理ですよ。そんなに喜んでくれると嬉しいです。よかったら、わたしの分もどうぞ。」
青龍があまりにも美味しそうにお弁当を食べるので、わたしは笑顔でお弁当を差し出した。
それを見ていた隣に座るメイ様も、わたしと同じようにお弁当を差し出す。
「わたしの分もどうぞ。足りないかもしれないけどね」
「おお、お主達はなんていいやつなのじゃ。では是非お言葉に甘えて」
そう言うと、青龍はあっという間にお弁当を平らげるのであった。
◇◇◇◇
「なんじゃ、もう行ってしまうのか?」
翌朝、わたしとメイ様は丘を降りてウィシュタリア王国に戻ることにした。
目的を達成したのと、魔法学園の入学まであと1か月しかない。
その為、準備を進める必要があったのだ。
「はい、また是非遊びに来ますね。お酒とハンバーグ弁当をもってきます」
それに対して、メイ様は名残惜しそうに青龍に言葉を返した。
あれから私達と青龍は打ち解け合って、夜どおし言葉を交わしすっかり仲良くなったのだ。
青龍さんの知識は豊富で、魔法のことや武器のこと、薬草やアイテムのこと等いろいろなことを教えてくれた。
対する青龍は、私達が話す人間の町の様子を楽しそうに聞いていた。
「ありがとうございました。それではーまたー!」
私たちは見送る青龍に手を振る。
「ありがとう!メイ、ミルロ!また遊びにくるんじゃぞ」
わたし達は青龍に手を振りながら、青龍の丘を後にする。
こうして、私たちに青龍という友人ができるのであった。




