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魔法の才能

「サンダー!」

メイ様は、右手を前に突き出し呪文を唱えた。

しかし、魔法は発動することなく何も起こらなかった。


おかしいな・・・、どうしてだろう?

わたしはそんな様子をみて、疑問を浮かべる。


メイ様とライラが仲直りしてから、3日の月日が流れた。

それから、魔法の練習を始めたもののなかなかうまくいかない。

サンダーは初級の攻撃魔法なのだが、それすらも発動しないのだ。


「うううう、やっぱりダメなんだ・・・」

魔法が発動しないことに、メイ様は涙を浮かべてその場に崩れ落ちた。

「メイごめんなさい・・・。もう一度頑張ろ?」

そんなメイにライラは悲しそうに寄り添う。


メイ様はライラの手前なんとか魔法の練習を続けている。

もしわたし1人だけだったら、とっくに怒って練習を辞めていただろう。

だがそれも今、限界を迎えつつあった。

このまま何も結果がでなければ、メイ様は魔法の練習を諦めてしまうだろう。


どうしてメイ様は魔法が使えないの?

きっちり魔法について教えたはずなのに・・・。

わたしは必死に考える。

わたしは呪文名だけでなく、メイ様に自分がどのように魔法を使うのかも説明していた。

魔法はイメージすれば、いろいろなものに変化すること。

血液の流れというものをイメージすることで、魔力の流れを理解できること。


何度も魔力探知で確認しているが、メイ様が呪文を唱える時たしかに魔力が右手のひらに魔力が集中しているのは感じ取れている。

その為、魔力を操作できていないということはないのだ。

だが、肝心の魔法が発動しない。


いったいどうして!?

もしかして本当に才能がない・・・?


「わたしもうダメだわ。やっぱりわたしに魔法の才能なんてないのよ・・・。」

メイ様は涙を流して泣き崩れる。

ライラは悲しそうに、メイ様に寄り添うだけだった。


(わたし魔法の才能がないのよ・・・)

待って!この言葉、ゲームのセリフで聞いたことあるわ。

いったい誰、どこの場面だっけ?


わたしはメイ様の言葉に、聞き覚えがあったので必死にゲームの記憶を思い起こす。

ゲームの知識を活用して、少しでも何かヒントを探したかったからだ。


あっそうだ、思い出した。


ヒロインのアリアの言葉だ。

アリアの魔力は主人公ゼノンを上回り、仲間キャラ最大の魔力を誇る。

そしてその魔力を生かし、強力な回復魔法と防御魔法を行使する。

だが、そんな魔法の才能に溢れたアリアにも弱点があった。


攻撃魔法を一切使うことができず、攻撃魔法を覚えないのだ。


ある時、魔法学園で攻撃魔法の試験があった。

だが、アリアは攻撃魔法を使えない。

どれだけ練習しても、攻撃魔法の初級魔法すら使えないのだ。

それを、悪役令嬢カトレアはこれをチャンスとばかりに、アリアをバカにして徹底敵に虐めるのだ。

だが、アリアは必死に努力した。


それでもアリアは攻撃魔法を使えない。

その時、このセリフを言うのだ。

「わたしには魔法の才能がないと・・・」


ゲームではその後、主人公ゼノンがアリアを励まして、アリアは立ち直る。

「攻撃魔法を使えなくても君には人々を癒す力と守りの力を持っている。

周りを痛めつける魔法の力よりも、その力の方が何倍も素晴らしいと。」


もしかしてメイ様はアリアと一緒で、攻撃魔法の才能がない?


アリアの魔法属性は、光魔法だ。

どちらかといえば、回復魔法と防御魔法がメインの属性。

だから攻撃魔法が使えなくても、魔法自体が使えないという問題にはならなかった。

だが、メイ様はどうだ?


メイ様の魔法属性は、雷属性。

強力な攻撃魔法がメインの属性だ。

だから、気づくことができなかったのだ。

攻撃魔法の才能がないことに・・・。


「メイ様、わたしに考えがあります。違う魔法を練習してみませんか?」

わたしはメイ様に話かけた。

しかし、わたしの言葉を聞いたメイ様は顔を上げて、困った声を出す。


「ち・ちがったまほう?でも、今わたしが練習しているのは、一番簡単な魔法ですよ?それすらできないのに、他の魔法なんて・・・。」


「いえ、これはわたしの推測ですが、もしかしたらメイ様は攻撃魔法の才能がないだけなのかもしれません。しかし、魔法は攻撃魔法だけではありません。防御魔法、回復魔法そして補助魔法、試してみましょう。もしかしたらメイ様が使える魔法があるかもしれません。」


それから、メイ様は違う魔法を練習した。

だが、回復魔法のヒール、防御魔法のプロテクションは発動しなかった。

残る魔法は補助魔法だ。


雷属性の補助魔法には、主人公ゼノンが終盤で覚える最強呪文がある。

その魔法は『エンチャント』

武器に魔法の力を付与させて、攻撃力を大幅に高める呪文だ。


エンチャントは武器に魔力を纏わせて、属性を付与し攻撃力、防御、スピードを大幅に高める呪文だ。

中でも主人公のゼノンが覚える雷属性のエンチャントは強力で、雷属性を付与させた武器の一撃は、あらゆるものを切断し、持っているものに雷鳴の如きスピードを与えた。

その呪文を覚えたら、もはや他の攻撃呪文がいらないくらい強力なのだ。

なお、わたしは水属性だがエンチャントを使用できる。

この前、カリンに放ったブリザードソードは氷の魔法をエンチャントしていた。


もし、メイ様がその魔法を使えるのなら・・・。

その力は主人公ゼノンに匹敵することを意味していた。


わたしはその事実に緊張しながら、腰に差してあった剣を抜きメイ様に手渡した。

メイ様はわたしの剣を見て、首をかしげる。


「ミルロ魔法の練習をしているのよね?どうして剣なの?それにわたし剣は使えないわよ?」


その言葉にわたしは首を横にふると、メイ様に説明した。

「メイ様、今から使う魔法はわたしが知る中で最強の魔法です。もしメイ様が使うことができるなら、メイ様は最強の魔法使いになれる。その魔法はエンチャント。武器に魔力を纏わせて自身の能力を底上げする大技です。さあ剣に魔力を籠めて、エンチャントと唱えてみてください」


わたしの言葉にメイ様は頷くと、剣を受け取る。

そして剣を持ち構えると、呪文を唱えた。


「ライトニングエンチャント!」


メイ様が呪文を唱えると、初めて魔法が発動した。

持っていた剣は、激しい光に包まれて光り輝くと轟く雷を纏う。

そしてそれを持つメイ様も、激しいスパークを纏い光輝いた。

体中にスパークを纏い、激しいプレッシャーを与える。


すっすごい・・・。

なんて魔力なの。

わたしはそんなメイ様の光景に息を飲んだ。


「凄いわ、ライラ、ミルロ!力が、力が溢れてくる」

初めて魔法が発動し、メイ様は嬉しそうに声を上げた。

涙を浮かべて、感慨にふける。


「メイ様、そのまま剣を振り下ろしてみてください。」

そんなメイ様に対して、わたしは指示を飛ばす。


「わかったわ!」

メイ様はわたしの言葉に頷くと、勢いよく雷鳴を纏った剣を振り下ろした。

振り下ろしたと同時に、斬撃が飛ぶ。

その斬撃は触れる地面を切断しながら、勢いよく突き進む。

さらに斬撃は暫く進んだ後、演習場に置いてあった10メートルはあろう大岩にぶつかり止まった。

そして斬撃を受けた大岩は、バターのように切り裂かれ粉々に砕け散る。


「ミルロ、やったわ!わたしやったのよ!!」

魔法を放ったメイ様は嬉しそうに声を上げると、わたしに抱き着いた。


「メイ様、素晴らしいです!よかった本当によかった。」

わたしもメイ様を抱き返す。

暫くわたし達は抱き合い、メイ様の魔法発動を喜び合った。

メイ様は軽く剣を振っただけだった。

だがその威力は、上級魔法に匹敵するいやそれ以上の力を秘めていた。


こうして、メイ様は魔法の才能を開花した。


◇◇◇◇


そして魔法の才能に目覚めて、自信を取り戻したメイ様は驚くほどに変化した。

ひきこもりを止めて、王女教育を再開させる。

誰もが突然のメイ様の変貌に、驚きを浮かべた。


今のメイ様は、もはやゲーム内の劣等感に押しつぶされた卑屈な王女ではない。

希望に満ちて、才能に溢れた立派な王女となったのだ。

一方、わたしはというとメイ様の護衛兼侍女、そして一番の親友としてずっと傍に寄り添いサポートするのであった。


そして早いもので3年の月日が流れた。

わたしとメイ様は13歳に成長し、いよいよ魔法学園に入学することになった。


こうして、マナアースのゲームのシナリオ『魔法学園編』に、卑屈な?第1王女メイ、悪役令嬢の取り巻きC?であるミルロが登場するのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 補助特化で剣にエンチャントすれば遠距離攻撃が出来る……これは姫騎士化が進みますね、間違いない(ぐるぐる目)
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