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メイ=ウィシュタリア

「王女メイの護衛・・・」

ミルロは父との話を終えて、自室に戻ってきた。

ベッドに寝ころびながら、先ほどの会話を思い起こす。


違う部隊に配属されても弓道場を使うことができるということに気を取られていて、父親の話をよく聞いてなかった。

その為、王女メイの護衛騎士になるということを全く聞かずに了承してしまったのだ。

ミルロはそのことを今凄く後悔していた。


第1王女メイ。

ゲームでの彼女の性格は、気弱で根暗で弱々しいだが心の中はねじ曲がり陰険。

そう、かなり性格が悪い。

メイは運動神経が悪く頭も良くない、更には要領も悪い。

唯一の取り柄は、美しい容姿と非常に高い魔力だけであった。


メイがそんな性格になってしまったのは、このゲームの主人公であり兄であり勇者でもあるゼノンと比べられ激しい劣等感を持っていたからだ。

ゼノンは主人公に相応しい、チートレベルの能力の持ち主だ。

この国最強の剣の使い手であると同時に最高の魔力を持ち、最高の頭脳を誇る。

そんな完璧なゼノンに小さい時から比べられてきたメイは心が病み、卑屈になっていたのだ。


ゼノンは妹のメイのことを思っていた、だが当人のメイは兄に対して逆恨みをして心の中で激しい憎悪を持っていた。

そして後程、とんでもないことをやらかす。


そしてメイのゲームでの活躍は・・・。


学園編ではミルロと同い歳なので、主人公であるゼノンとヒロインのアリアが2年生の時に入学する。

だがコミュ障の彼女は、パーティーを組むことができずにソロになってしまう。

なお悪役令嬢のカトレアは、メイの面倒を見ようとパーティーに誘ったのだがメイは断った。

メイは高飛車な性格のカトレアも嫌っていたのだ。


そしてパーティーが組めず、無理やり一人で冒険しようとしたメイは隣国である帝国の工作員に拉致されてしまうのだ。


続いて帝国編。

拉致されたメイは、帝国編のラスボスである若き皇帝『アーク=キルラルド』に恋をする。

メイはずっと心が病み引きこもっていた為、男の免疫が全くなかった。

アークは王子ということもありイケメンで、メイを利用する為に優しく接した。その為、コロっと騙されてしまうのだ。


恋をして盲目的にアークの言うことを聞くようになったメイは、ウィシュタリア王国に返されると帝国工作員と暗躍する。

戦争の際に、砦やお城の城門を開けたり、捕虜を逃がしたりと王女という立場を利用して、なかなかえげつないことをしでかすのだ。

そして最後にはアークの命令と自らの恨みに捕らわれたメイは、主人公ゼノンに毒を盛り彼を死の淵に追いやる。

だが聖女として覚醒したアリアの力によって、ゼノンは一命を取り留め救われるのだ。


そして毒を盛ったことがバレたメイは断罪され、処刑される。

「妹とわかり合いたかった・・・。せめて安らかに眠ってくれ」

殺されかけたにも係わらず、妹の死を嘆いたゼノンの言葉は多くのプレイヤーの涙を誘ったものだ。

わたしもそのプレイヤーの1人だ。


王女メイはとんでもない王女だ。

もしわたしが護衛となってしまえば、王女に道連れに

されて断罪されかねない・・・。


いや、待てよ。

わたしはふと思考を切り替える。

王女は帝国に拉致されてから、おかしくなった。

だが、わたしが護衛として、しっかりしていれば拉致されることがない。

そうなれば王女メイは、ただの引きこもりだ。

なんの問題もない。


「うふふ、楽勝じゃない。」


わたしは気を良くすると、メイについて考えることを止めた。

そしてスヤスヤと眠りにつくのであった。


だがメイの護衛は思っていた以上よりも、過酷なものになるのであった。


◇◇◇◇

わたしはこの国の第1王女メイ=ウィシュタリア。

3ヶ月前にわたしは精霊と契約して、魔法が使えるようになった。

もしかしたらお兄様に追いつけるかもしれない。

そしたらみんな私を認めてくれる。

そう考えると、わたしの心は浮き足立った。


だが、そんな気持ちも僅か3日で水泡に消えた。


「メイ様、この程度の魔法もできないのですか?貴女のお兄様は1時間もかからずにできましたよ」

わたしの魔法の先生は、そう言うとガッカリとした顔を浮かべた。

あーやっぱりわたしはダメなんだ。

みんなお兄様、お兄様ってそんなのバッカリ。

せっかく魔法を使えるようになったと思ったのに、ここでもお兄様と比べられる。

そして自分が無能だと思い知らされる。

その後、わたしはすぐに魔法を習うことを止めて、魔法の先生を追い出した。


それからずっと部屋に引きこもっている。

もう何もしたくない、何も考えたくない。

希望を持った自分が馬鹿らしい、魔法なんていらない、精霊なんていらない。

魔法はわたしを救う光には、ならなかった。

わたしは魔法を精霊を放棄した。


それから3ヶ月、わたしの専属侍女のミアがわたしに言葉を伝えた。

ミアはわたしより3つ上の13歳。

侯爵家であるシナプス家の三女だ。

小さい時からの付き合いないので、仕方なく傍に置いているものの、こいつも気に入らなかった。

だってこいつも心の中では、わたしをバカにしているのだから。

本人は気づいていないかも知れないが、目を見たらわかる。

わたしにたまに向ける憐れむような目。

生意気で本当に忌々しい。

だが、彼女を首にするとわたしを世話する者がいなくなる。

仕方なく傍に置いてやっているのだ。


「新しい護衛ですか?」


ミアの言葉にわたしは訝しむ。

「わたしはどこにも行かないんだから、護衛なんていらないわよ。それに誰とも会いたくないの。」


「しかしメイ様、どうやらその護衛はメイ様と同い年の少女らしいですよ?話し相手になるかもしれませんし、1度お会いしてみてはいかがですか?」


その言葉にわたしは意外に思う。

わたしの所に護衛で配属される騎士は、当たり前だが年上ばかりであったからだ。

まあ、気に入らないのですぐに追い出したが・・・。

年上は上から目線でわたしに意見するから嫌いなのだ。

それに汗臭い。


わたしと同い年。

それならきっとわたしには従順かもしれない。

あわよくば友達に・・・いや下僕にできるかも。

そう結論づけるとわたしは、ミアに伝える。


「わかったわ。仕方ないから会ってあげる。明日、わたしの部屋に来るように伝えてくれないかしら?」


「メイ様、護衛の方は新人だと伺っております。明日は入団式なので来るのは難しいかと。日を改めたほうがよろしいのでは・・・?」

ミアの言葉にわたしは苛立ちを浮かべ、その言葉を一蹴した。

わたしは王女だ、王女が優先に決まっている。


「聞こえなかったミア?わたしは忙しいの、明日必ず来るようにと騎士団長と新しい護衛騎士に伝えてください。来ないなら、護衛は必要ありません」


「・・・承知致しました。」

ミアは少し不満そうな顔をしたが、お辞儀をすると部屋を出ていった。

全く侍女のくせに生意気ね。

新しい護衛が使えるようなら、ミアを首にして侍女を兼務させてもいいかもしれないわね。


あー。使える人が来てくれたらいいなぁ。

従順でわたしだけを思ってくれるそんな護衛。

明日が楽しみだわ。


メイは期待に胸を膨らませると、静かに寝息を立てるのであった。

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