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合格

「ふう、疲れたわ」

湯船に浸かりながら、わたしはのほほんと寛いでいた。

マッサージをしながら伸びをして、疲れを癒す。

隣では、ユキメが楽しそうにお風呂で泳いでいた。


騎士団試験ではいろいろあった。

ゆっくりとリラックスしながら、今日起こった出来事を思い返した。

順番抜かしのトラブル、隊長との出会い、そしてゲーム内のミルロの仲間であるカリンとの激闘。


あの後、氷漬けになったカリンに対して、わたしはすぐに魔法を解除して彼女を氷の呪縛から解放した。

幸いにも生きていたのだが、カリンは魔力を使い果たしぐったりとしていた。

魔力を使い果たすと意識が混沌として、魔力が完全に回復するまで目覚めることはない。


カリンはそこまで魔力が高くないので、暫くしたら目を覚ますだろう。

だから、わたしは特に気にしていなかった。

相手との同意の上での対戦だ。

仮に死んだとしても、わたしは悪くない。

もし仮に捕まえようとするのなら、逃げ出してやる。

わたしはそう心に決めていた。


そして試験の結果はというと、もちろん合格だ。

2次試験の模擬戦は、2勝しないといけない。

その為、もう1戦する必要があった。

カリンとの対戦後、試験官であり騎士団の隊長でもあるゲイルさんに試験を免除された。

同じ相手とは言え、2回勝ってるからいいとのことだ。

なんだが腑に落ちないものの、無事に合格を果たすことができた。


そして今、わたしの心は喜びに満ちていた。

これであの弓道場で自由に練習できる。

これからの騎士団の仕事が楽しみだ。

今日実技試験でつ使った王宮の弓道場を想像して気分をよくする。


ルンルンと鼻歌を歌いながらお風呂を楽しみ、今後の騎士生活に期待を膨らませるのであった。


◇◇◇◇

「お呼びでしょうか?お父様」

お風呂に入ってから、部屋で寛いでいるとお父様に部屋に呼び出された。

実はマルチーズ家に来てから、お父様とは数回しか会っていない。

騎士団長の仕事が忙しいらしくなかなか家に帰ってこないのだ。

お母様とアーサーお兄様とはうまくやっているのだが、お父様とはなかなか打ち解けられずにいた。

その為、話をするとき未だに緊張してしまう。


だがその緊張は、お父様の笑顔を見てすぐに溶けた。

いつも厳しそうなお父様の顔は、喜びで満ち溢れていたのだ。

「ああ、ミルロ。聞いたよ騎士団試験合格おめでとう。主席合格らしいな、よく頑張ったな、父として鼻が高いよ」

そう言うと、お父様はわたしの頭に手をのせて、優しく髪をなでた。


こんな子供みたいに・・・・と一瞬頭をよぎったものの、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

「うふふ、ありがとうございます。お父様」


前世の麗華は、父があまり好きではなかった。

今思えば、特に嫌いになるエピソードがあるわけではない。

なんとなくだ、なんとなく嫌いになったのだ。


それは、学校でみんな嫌っていたから・・・。


友人と話すと、お父さんが汚い、いつもお酒くさい、一緒に服を洗濯したくないと文句を言っていた。

別にわたしは父に対してそんなことは思っていなかったのが、当時のわたしは友人の言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。

そんな話を聞いていたら、いつの間にか父のことが嫌いになってしまった。

わかっている。

嫌われる父にとって理不尽極まりない。

だが友人の言葉に影響されたわたしは、父が嫌いになってしまったのだ。


しかし転生してミルロになった今、父に対するわたしの感情は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

もし麗華に戻れるのなら、父に伝えたかった。

今までお父さんに悪い態度をとってしまってごめんなさい、わたしの為に今までありがとう、と。


だがもうそれはもうかなわない。

麗華はもう死んでしまったのだから・・・。


「どうした、ミルロ?もしかして痛かったか?」

するとお父様が、わたしを心配そうに見つめる。

どうやら、前世のことを考えていたわたしは、悲しそうな顔をしていたみたいだ。


悲しそうなお父様の顔を見て、わたしは気持ちを切り替えた。

そうだ、今のわたしはミルロだ。

過去のことはどうにもならない。

それなら、今の両親とお兄様を大切にしよう。

そして今度は周りに流されないで、お父様のことをこれからも愛していこう。

わたしは心の中で、強く決意するのであった。


「ううん。ちょっと昔のことを思い出しただけ。ごめんなさい、心配させてしまって」

それからわたしは父に抱き着いた。

父の体は大きくてたくましかった。


わたしは暫くお父様の温もりを堪能するのであった。


どれくらい抱き合っていただろう、お父様は咳払いするとわたしに話を始めた。

お父様の顔は恥ずかしさなのか真っ赤に染まっていた。


お父様って可愛いとこもあるのね。


それを見て、わたしはくすりと笑みを浮かべる。



「ミルロ。今日はおまえにお願いがあって呼んだんだよ?」


「お願い?」

わたしは首をかしげて、お父様を見る。


「騎士団のことなのだが、私の部隊である第1部隊に所属してもらう、そして第1王女のメイ様専属の護衛騎士になって貰いたいんだ」


第1部隊?護衛騎士?それにメイ様?

突然のお父様の言葉に、わたしの頭は混乱する。

だがそれよりも私にとって重大な問題があった。

そう、弓だ。


「そんなー。わたし第4部隊で弓をたくさん撃ちたかったのに・・・」

悲しかった、騎士団の弓道場を見て、わたしはテンションが上がっていたのだ。

あの大きな弓道場で、思う存分弓が撃てる、そう思っていたのに・・・。

わたしの目からポロポロと涙がこぼれる。


「ミ・ミルロ、泣くな!泣くな!護衛騎士でもあの弓道場は自由に使っていいからな、第1部隊でもたくさん弓を撃っていいからな?」

そんな様子に、お父様は慌てて言葉を付けくわえた。

わたしはお父様の言葉を聞き、パーっと顔が明るくなる。


「ほっ本当ですか?」


「ああ、あの弓道場は騎士団のものであって第4部隊だけの設備じゃない。自由に使っていいんじゃぞ」


「やった!それなら大丈夫です。お父様の為にわたし頑張ります。」


だが、わたしは弓のことに気を取られていて、後の話を全く聞いていなかった。

第1王女メイ様の護衛。

安易に引き受けたこの仕事は、またわたしを新たなトラブルへと巻き込むのであった。


だが、そんなことは今のわたしには知る由もない。


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