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第009話 絆スタンプラリー

ブクマ・評価のほどよろしくお願いします。

12/7(月)に12話までアップする予定です。

 決意を固めた次の日――。

 ダンジョン攻略の準備期間として5日が与えられ、今日がその初日となる。

 準備とダンジョン攻略の期間は、他の街やダンジョンの往来は自由らしい。

 聖女候補を危険に晒さないという常識の範囲内でだ。

 勿論、準備期間中にエルナハド遺跡に入るのは禁止である。


 僕達はオヴェリアル大聖堂の訓練所にいた。

 敵を知る前にまずは己を知れ。

 ということで【理の収集家(スタンプラリー)】と《親愛なる祝福(ギフト)》を発動させる。

 目の前に開かれる花丸付きの世界地図。

 そして、あの謎の声が脳内に語り掛けてくる。

  

『おはようございます。リルア様、……あと、誰?』


 自分のスキルに忘れられた。

 そんな、茶目っ気を出さなくても良いんだが……。

 本当に忘れられてたら困るけどさ。


『冗談です、カイル様』

「おはよう、ラリー」


 リルアが普通に挨拶を返す。

 聞き慣れない名前に一瞬、戸惑ったがスタンプラリーの名前らしい。


「ラリーってリルアが考えたの?」

「スタンプラリーだからラリーね。昨日の夜に考えたの。名前がないと不便だし」

「僕は良いと思うけど、君はどう思う?」

『問題ありません。今日からラリーと呼称します』


 今日、確認したいのはラリーを解放した結果、何が起きるのかということ。

 戦闘中で詳細も聞けなかったため、改めて確認したいというのが本題だ。

 

「ラリー、君がどのような力を持っているか教えて欲しいんだ」

『カイル様とリルア様が訪れた街やダンジョンを集計し、到達難易度によって能力系ボーナス、精神系ボーナス、またはその地に由来する武技や奥義の習得が可能となります。その効果はカイル様にのみ適用されます』


 成程、リルアが訪れた場所も対象に加算されるんだな。

 厳密に到達難易度は4つのランクに分類されるらしい。


 Cランク:能力系ボーナス

 Bランク:精神系ボーナス

 Aランク:武技の習得

 Sランク:奥義の習得


 僕としてはBランクが問題で精神が強化される影響か人格がコロッと変わる。

 15歳から20歳の時に妄想していた最強の自分がベースとなっているらしい。

 その付属効果は止めて欲しいのだが強さを手に入れる代償とすれば破格だろう。


「グレインとの戦闘の時に気付いたんだけど、制限時間もあったりするのかい?」

「今は1日に5分程度が限界です。私の成長、またはカイル様の成長に従い、持続時間を伸ばすことは可能です」


 5分は短い。

 そこはマイナスポイントだな。

 サシの勝負だと問題ないが、ダンジョン攻略では使う場面を考える必要がある。

 ボス攻略、もしくは緊急時の切り札として常に残しておきたいし……。

 

「昨日の戦闘でも、大体分かってたことよね。新しい発見はAランクが武技習得ってとこくらいかしら。ラリー、他に新しい要素とかってあるの?」

『地方コンプリートボーナスがあります』


 地方コンプリートボーナス?

 大体、察しがつくので改めて世界地図を眺めてみる。

 すると、僕の故郷があるラムダ地方が花丸を含め淡く青色に輝いていた。

 地元周辺は歩き回っていたし、スレイブナハト入団時はラムダ地方を中心にギルド活動をしていたっけ。

 

「ラムダ地方を全て踏破したから、そのボーナスってことだね?」

『理解が早く助かります』

「そのボーナスはよっ!」

「はよ、って……。聖女候補なんだから言葉遣いは気にした方がいいと思うよ」

「ぬぅ~……。大丈夫、カイル君以外の前ではちゃんとするし!」


 僕の前だけという言葉に何かくすぐったさを感じる。

 お父さんと娘ってこんな会話するのかな、なんて思ってみたり。

 リルアと僕の年の差は15歳。

 父子としてこの年齢差はあり得る範囲だ。

 15歳で成人してすぐに子供を作る人は珍しい部類に入るのだけど。

 

『地方コンプリート特典として新規スタンプラリーが追加されます』


 はい?

 この展開は想定外だった。

 新規とはどのようなスタンプラリー何だろう。

 今のスタンプラリーは各地域を訪れることで花丸が記録されるけど、それとは別に新しい何かが追加されるということだろうか。


『従来のスタンプラリーの名称を変更します

 【スタンプラリー】----->【トラベルスタンプラリー】』


 リルアの前に浮かぶ地図ボードの名称にトラベルの文字が追加される。

 新しいスタンプラリーが増えるので名前が被らないようにとの配慮かな?

 続いて地図ボードの横に新しいボードが出現する。


『新規に【絆スタンプラリー】が追加されました』


 きずな、絆かな?

 リルアと仲良くなることで力が解放されるとか?

 不意に昨日の口付けが脳裏をよぎる。

 うん、これは駄目だ。

 僕達は親子ほど年齢が離れているのに……、


「カイル君、何1人でテンション上がっているの?」

「断じてテンション上がってないです、はい」


 そんなにテンション上がってるように見えたかな。

 それだと昨日の野次馬の言う通り、ロリコンになってしまうんだけど……。

 半目で睨むリルアにぎこちない笑みを返す。


「何か怪しいけど…。ま、いいや。それで、絆スタンプラリーは何を集めればいいの? 後は、集めることで、どんな効果を発揮するのかな?」

『絆スタンプラリーは仲間を集めることで解放されます。また、特定の職種を極めた者、または極めんとする者を複数仲間にすることで能力が解放される場合もあります』


 要は仲間を集めろってことか。

 職種って言うのは剣士、魔法使い、僧侶とかの区分を示しているのだと思う。

 例えば、近接系の職種に属する仲間を集めるとボーナスが貰えるとかかな?


 絆スタンプラリーのボードを覗き込む。

 項目毎に1から50までの番号が振られているようだ。

 1人仲間になる毎にスタンプが押される、最大10人まで……。

 レア度CからSまでの職種に該当する仲間を集める。

 規定された職種の仲間を複数人集める。

 シークレットとして「?????」で隠された項目もあるな。

 

『現時点の解放された項目に花丸を付与します』


 いつもの落書きじみた花丸がポポポンッと付与されていく。

 達成度についてラリーが脳内補完をしてくれるようだ。

 昨日の徐々に語る方法は止めにしたらしい。

 リルアに急かされてたしね。


『【絆スタンプラリー】

  解放率:8.0%

 

 No.01 難易度Cランク:仲間1人を達成

 No.02 難易度Sランク:仲間2人を達成 

 No.11 難易度Cランク:Cランク職種の仲間をパーティーに加える

 No.12 難易度Aランク:Aランク職種の仲間をパーティーに加える


 全50項目中4項目を達成 』


 仲間1人ってのが自分のことだとしよう。

 仲間2人めが難易度Sランクっておかしくないか?

 確かに15年間友人が作れなかった僕にとっては難易度Sかもしれないけど。

 どうやら、絆スタンプラリーは僕のリアルが反映されているらしい。


 他の項目を冷静に見てみようか。

 Cランク職種の項目は僕の剣士を意味しているんだな。

 Aランクは聖女候補のことだろう。

 聖女候補はこの世に数人しかいないから、Aランク認定は妥当かも。

 もし、リルアが本当の聖女になったらSランクが解放されそうだ。


『絆スタンプラリーの能力を解放します』


 一番大事な時がやって来た。

 トラベルスタンプラリーは僕の強化が主だった。

 絆スタンプラリーは何を主題とするのか。


『【理想なる脳内彼女(イマージナルガール)】の召喚を許可します』


 イマージナルガール?

 何のことだろう。

 目の前に膨大な魔法陣が展開される。

 複雑な幾何学模様が幾重にも重なり、七色を帯びた光の螺旋が空へと舞う。

 これって最早、人では不可能な人智を超えた何かだよね?

 突如、ヒュオッという風切り音と共に白い霧が辺りを包む。


「うわっ、何も見えない」

「何なのもう、うざいな、ウィンド!!!」


 今更だが、リルアは魔法が使えるらしい。

 聖女候補なんだから当たり前か……。


 リルアが初級の風魔法を唱えることで周囲の霧がパッと晴れる。 

 すると、魔法陣が展開された場所に見慣れたメイド服の女性が立っていた。

 僕は君を知っている。


「現実でお会いするのは初めてですね。カイル様」


 年齢イコール彼女いない歴30年の僕が作り出した幻影。

 今でこそ年を重ね、君を思う事は無くなったが若かりし頃はずっと考えていた。

 僕の脳内で生まれた理想なる彼女。


「チビジャリ…、いえリルア様。初めまして、カイル様の専属メイドを務めさせて頂きます、ルーナと申します。以後、お見知りおきを」


 戦闘中イキり野郎に続く僕の黒歴史第2弾はこうして爆誕した。

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